十話 ARMS対ARMS
敵である傭兵が目の前で、争っていたら、宙賊は先制攻撃を掛けるに決まっている。
シルヴァーナに乗るネオンは、ため息を吐く。
「はぁ、時間をかけ過ぎた、ここからはスピード勝負」
『ネオン!、俺は後ろに下がる!』
「うん、そうして」
出撃したネオンとシルヴァーナは、二つの傭兵団の様子を確認する。
片方の中型戦闘艦は、シールドの展開には成功したものの、動いていなかった、団長も含め船員が動揺しているのかもしれない。
もう一方の中型艦は、シールドの展開が間に合わず、白煙を上げている。
しかし艦底部の格納庫ハッチが開き、一機のARMSが出てくる。
『銀翼機、私の名はゼナ、共闘を要請する』
出撃したARMSからの通信に、ネオンはすぐに反応する。
『共闘?、今の今までどっちが倒すか喧嘩してたのに?』
『それは団長たちが勝手にやっていたことだ、敵前で突っ立っていたら、先制攻撃を食らうに決まっている』
ゼナの口調は、通信越しではあるが怒っているように感じられた。
『いいよ、ただしついてこられるならね』
シルヴァーナは青い残光を残して、加速する。
コックピットの中から、その様子を見たパイロットのゼナは驚く。
「速い!?、あのバーニア光は…」
『おい!、ゼナ!、なんで俺の許可なしに出撃してやがる!?』
ゼナが所属する傭兵団の団長であるマルドックの怒鳴り声が、通信越しに届く。
「お前の許可を待っていたら、同業者に賞金首を取られる!、このままだと骨折り損だぞ!?」
『ふざけんな!、お前は俺の命令に従ってれば』
ゼナは強制的にうるさいだけの通信を切り、目標に狙いを定める。
「今回が最後の仕事か」
ゼナの乗るARMSは、小惑星の上に着地し長距離狙撃用レールガンを構えた。
◆◆◆◆
ARMS対ARMSの戦いは近接戦に寄ることが多い、その理由としては高機動で縦横無尽に動くARMSに、ARMSが標準装備しているビーム兵器がまともに当たらないことが上げられる。
航宙艦は、急に横方向や縦方向に移動することはできないが、小型スラスターが複数装備されているARMSにはそういった動きも可能だ。
逆に航宙艦に乗りARMSを倒すには、ミサイルが必要になってくる、ミサイルがないとARMSには勝つことは難しい。
「敵ARMSの装備は対航宙艦用」
《はい、近接装備はビームサーベルのみです》
「ん」
接近するシルヴァーナに気付いた二機のARMSは、それぞれ散開する。
一機はシルヴァーナに接近し、もう一機はシルヴァーナを抜けて後方へ飛ぶ。
ネオンは、抜けた一機は共闘を申し出たゼナに任せ、目の前のARMSに集中する。
大口径ビームバズーカを連射する敵ARMSに対し、ネオンはシルヴァーナの左手甲部に内蔵されたビームシールド発生装置により、作られた青いビームシールドで砲撃を防ぐ。
距離を詰めたシルヴァーナは、腰部装甲に格納されたビームソードの柄を引き抜く。
ビームシールドを盾にして、敵ARMSの懐に飛び込んだシルヴァーナは、ビームサーベルで斬りかかる。
敵ARMSもビームサーベルを引き抜き、青とピンクのビームサーベルがぶつかり合う。
どちらも同じビームサーベルだが、出力で上回るシルヴァーナのビームサーベルが、敵ARMSの肩部装甲を切り裂く。
離脱したシルヴァーナのコックピット内に、ロックオン警報が鳴り響く。
《巡航ミサイル三!》
敵艦から放たれた三発の巡航ミサイルは、真っ直ぐシルヴァーナを狙って、飛翔する。
すぐにチャフをばらまいたネオンは、シルヴァーナを操縦し、ミサイルの爆発から逃れる。
「邪魔」
シルヴァーナの機動鋼翼の一部が分離し、分離した二枚の羽根が、変形しながら持ち替えた高エネルギービームライフルに連結し、銃身を伸ばす。
射程と威力が強化された高エネルギービームライフルの一撃が、敵艦のミサイル発射口を撃ち抜き、大きな爆発を起こす。
再び分離した二枚の羽根が元に戻り、反転してきた敵ARMSの大口径バズーカの砲撃が、シルヴァーナを襲う。
スラスターを吹かせて、加速したシルヴァーナは、砲撃の一部をビームシールドで防ぎながら、ビームライフルを撃つ。
多数の小惑星を盾にし、互いのビーム兵器を撃ち合いながら接近する。
ビームシールドを盾にして突っ込むシルヴァーナに対して、敵ARMSは実体盾でビームを受け止めながら、ビームバズーカを撃ち続ける。
ビームシールドを破れないことに気づいた敵ARMSは、距離を取るが、それよりもシルヴァーナの接近の方が速く、ビームライフルの近接ブレードに、右脇腹を切り裂かれる。
『クソがぁ』
後ろに回り込んだシルヴァーナの追撃でコックピットを撃ち抜かれた敵ARMSは、捨て台詞を残し爆散する。
「ん、シルヴィ」
《敵艦と中型戦闘艦が交戦中、もう一機のARMSは、撃破された模様です》
シルヴァーナの光学カメラが、二つの映像をディスプレイに表示する。
「あのゼナって傭兵、結構やる」
《長距離の狙撃により、敵ARMSを接近させずに倒していました》
「へー」
感心しながら、中型戦闘艦と宙賊艦の戦闘に介入する。
艦同士の戦いというのはシールドの削りあいと言い換えてもいい。
艦に搭載されるシールドジェネレーターは総じて高出力なので、そう簡単にシールドが削り切られることは多くない。
その為正面から砲撃戦を行なう場合は長期戦になることが多い。
「遅いのは好きじゃない」
ビーム砲の雨を躱しながら、宙賊艦の懐に飛び込んだシルヴァーナは、メインスラスターを撃ち抜き、大きな爆発が起こる。
『君!、僕たちの邪魔をするな!、これは僕たちの獲物だぞ!?』
『知らない、戦場では、倒したやつのもの』
傭兵艦からの言葉に、そう返したネオンが、宙賊艦にトドメを刺そうとしたところに、アレンから通信が入る。
『ネオン、そこまでにしよう』
『え?、宙賊艦を撃ち落とせるのに?』
『あまり同業者からの反感を買うのは良くない、戦果は十分だろ?』
『もっと得られる』
『同業者から反感を買う方が俺は嫌だ』
『あの程度の戦闘艦なら、シルヴァーナと私なら…』
『分かってる、だけど敵を作らなくていいならその方がいいと俺は思う』
『それはアレンの経験則?』
『ああ、簡単に敵を作るべきじゃない』
『売られた喧嘩を買わないわけじゃないよね?』
『もちろん、不必要に喧嘩を売らないって意味だ』
『分かった、アレンに従う』
シルヴァーナは、戦闘域から離脱し、ほぼ瀕死に近かった宙賊艦が、傭兵艦からの攻撃を受けて爆散する光景を背にして、ジーベックに帰投する。
ブリッジに入ったネオンは、ちょうどメインモニターの傭兵たちの顔が消えるのが見えた。
「アレン」
「おかえり、同業者たちとは懸賞金を三等分にするって話で片付いたぞ」
「話が早い」
「誰も損しない話だからな」
「それなら帰る」
「ああ、コロニーに戻って懸賞金を受け通ろう」
アレンはジーベックの進路をアイベルサスコロニーに向けた。




