双天鬼兵団リーダー帰還。
朝日が眩しい…。
あの後兄さんと装備揃えて…それからご飯食べたっしょ?…それから…えーっと…ヤケ酒してたらふく酒飲んで…宿屋に泊まったんだった。
「ふぁーあ。」大きく伸びをして俺は半身を起こす。
兄さんはまだ寝ている。
いきなりゲームの世界に吸い込まれてゴブリンに絡まれて疲れてるよな…。そっとしとこ。
そういや今日は村がやけに騒がしい。
外に出てみるか。
外に出ると村人達が話している。
「今日キカーダ様が帰ってくるらしいわよ。」
「えっ。入り口までお出迎えしなきゃ!」
「キカーダ様…一目でいいから見なきゃ…。」
村人の女性達が入り口に集まり始めた。
双天鬼兵団のリーダーって凄い人気者なんだな。
俺も見に行こ。
いそいそと村の入り口に向かう。
すっごい人だかりだなぁ。
人だかりの中にギーゴの姿を発見する。
ミサが寄り添って立ってる…。
これもうヒロインじゃねえな絶対。
いやいや待てよ…俺が勇者になるだろ…それから魔王とか倒すだろ…ギーゴが修行の旅に出るとか言い出すだろ…そしたらワンチャン…?
そんな想像を広げていると入り口の方から
悲鳴にも似た歓声が聞こえる。
おいおい。キカーダってのはリーダーだし
凄いのは分かるけど…そんなにもか?
白馬に乗りゆっくりと村に入ってくる
綺麗な顔立ちの男。
村人達の歓声に応じるかのように
柔らかい笑顔を向ける。
た…確かに人気になるのは分かる。
嫉妬で狂いそうになるくらいかっこいい。
だがしかし…主人公は俺なのだ!
イベントをとっとと進めなきゃ!
俺はキカーダに駆け寄り言う。
「初めまして。俺は冒険者タカ。俺を双天鬼兵団に入れてください!」
「すまないんだが今村に戻ったばかりなんだ。少し休ませてくれないかい?」
「そうよそうよ!キカーダ様はお疲れなのよ!」
「空気を読みなさいよ!」
ゲームを進めようと焦って非常に不味い
タイミングで話しかけたみたい。
"村人女性達が現れた!"
嘘だろ…そこまで怒らせるような事してないだろ…
"村人女性Aの攻撃!タカに12のダメージ!"
"村人女性Bの攻撃!タカに9のダメージ!"
いやいやいやいや。安かったとは言え一応
フル装備だぞ?攻撃力高すぎない?死ぬて。
「みんな落ち着いて。彼も悪気があった訳じゃない。また後で話そうタカ君。」
ニコっと微笑むキカーダ。大人しくなる村人女性達。
半泣きの俺。それ見てニヤついているギーゴ。
もう色々最悪だ。
このゲーム全クリできる日は来るのだろうか?
俺はあんまり自信が持てなくなってきた。