負けイベント。
ミサの後を"離れて"歩いていると村に着いた。
「はい着いた。ここがコガマン村よ。」
相変わらず不機嫌そうだ。
おかしい。ヒロインキャラなのに。
「あ…案内ありがとうございました。」
プイッとしミサは去ろうとした。
「おいおいミサ。どうした?不機嫌そうな顔して。可愛い顔が台無しになってんぞ。」
「あっギーゴ!聞いてよ。さっきそこで冒険者見つけたんだけど…」
「冒険者ってそこの若い兄ちゃんか?え?うん。それで…ほうほう。」
ギーゴと呼ばれた男を俺は見た。バカでけえ。
それに自分の身長と同じくらいの大剣を
背負ってる。
「おいそこの兄ちゃん。話は聞いた。」
兄ちゃんって…俺はおっさんだぞ。
「はい。困ってた時にミサさんに案内してもらえて助かりました。」
「てめぇミサに声かけられてセクハラしたらしいな。死刑だ。」
いや…うん…俺一応ゲームの主人公なんだけど助かりそうにないなこれ。
「やめなよギーゴ!流石にギーゴと戦ったら冒険者さん死んじゃうよ!」
ナイスアシスト!ヒロイン!戦闘は回避できそう。
「大丈夫だろ。モンスターがウロウロしてる草原に"護符"もなしにいたんだろ?それなりに強い奴だろ多分。」
「…それもそうね。でも手加減してあげなよ?」
あっ回避できてない流れだ。
文字が浮かび上がる。
"ギーゴが現れた!"
やるしかないのか。どうにでもなれ!
"タカの攻撃!ギーゴに0のダメージ!"
"ギーゴは驚き動けない!"
あれ?ダメージは通ってないけど俺って相手を怯ます系の特技持ち?
"タカの連撃!ギーゴに0のダメージ!"
"ギーゴは驚き動けない!"
よっしゃ!なんだか分からないけどこの特技でなんとかなるかも!流石主人公!
"タカの攻撃!ギーゴに0のダメージ!"
"ギーゴの攻撃!タカに9999のダメージ!"
嘘だろ…カンストしてんじゃん…俺は意識を失った。
"タカは倒れてしまった!"
「ちょっとギーゴ!やり過ぎだよ!」
「違うって。最初なんかペチペチ触ってくるなって思ってて…試しにちょっと小突いたらさ…」
「…でどうするの?この冒険者さん。」
「んー知らね。ほっといたら宿屋とかで目覚めるだろ多分。」
………………はっ!
俺はベッドの上で意識を取り戻した。
なんだったんださっきの。
流石に負けイベントってやつだよな。
ギーゴって奴強すぎたもん。
「おやおやお目覚めですか?」
「ここは…?」
「ここはコガマン村の宿屋ですよ。冒険の途中倒れた人々が担ぎ込まれる場所です。」
なるほど。そう言われるとゲームの世界なんだなと改めて思う。
「すみません。お世話になっちゃって。」
「いえいえ。慣れたものですからお気になさらずに。」
これから俺はどうすればいいんだろうか。
「村長にはもう会われましたか?まだなら村の一番奥の家を訪ねるといい。」
「ありがとうございます。訪ねてみます。」
こうして無情にもイベントは進むのであった。




