不死者を統べる者。
やっと見えた。
コガマン村まで戻る事が出来た。
体を引きずりながら入り口をくぐる。
「タ…タカじゃねえか!一体何があった?」
マエダフーがかけより支えてくれる。
「すまない…一刻も早く兄さんに会わなきゃならないんだ!」
「呼んでくるからお前はそこで待ってろ!」
マエダフーは駆け出して行った。
アヤが心配そうに声をかけてくる。
「あの…何があったんですか?」
「……………イル…。」
「…えっ?」
程なくしてマエダフーが兄さんを連れてくる。
「タカ!タカ!どげんしたとか!」
「兄さん…会えて良かった…。この者の記憶を辿りここまで来た。まだこの世界に染まっていない貴様は器としての価値がある!ノガミ!器となり呼び起こせ!ザル=ヴェイン!」
ノガミの体が激しく痙攣する。
何者かがノガミの体を"内側"から引き裂こうとしている。
「がぁぁぁぁぁ!」
ノガミは口から鮮血を吐き出しながら雄叫びにも悲鳴にもとれるような声を上げていた。
その近くでもう1つの惨劇が起きていた。
「ぐっ…アヤ…どうした。」
「分からない…分からないけど体が勝手に!」
アヤがマエダフーの首を女性とは思えぬ力で締め上げていた。
「ハーッハッハッハ!アビスヴェイルは人を奈落の魔物に変える呪い!貴様がいぬ間そこの小娘に呪詛を吐いていた!」
「ぐっ…貴様…!」
「嫌だ!嫌だよ誰か止めてよ!」
アヤの目から涙が溢れる。
「怒り。憎しみ。絶望。その全てが我が糧となる。もっと絶望に落ちていくがいい!」
「どうも…できねえのか…。」
「まだ完全には魔物に変わってない今。その小娘の腕を切り落とせば助かるかも知れぬぞ?」
マエダフーは腰に据えている剣を掴む。
…がすぐに離した。
「やっぱさ…どんな状況であれ…アヤを傷つけれねえよ…俺…」
マエダフーの目からも涙が溢れる。
「いいねえいいねえ。人間風情がカッコつけおって。」
「早く!早く私の腕切り落としてよ!」
「いくらお前の頼みでも…できねえや…ごめん…アヤ…村で過ごした時間…幸せだった…ありがとう…大好きだぜ…」
アヤの腕に力がこもり指がマエダフーの首へとめり込んでいく。
アヤの腕を伝い鮮やかな鮮血が滴り落ちる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「案ずるでない小娘よ。程なくして貴様は魔物になり全てを忘れゆくだろう。」
ただならぬ禍々しさが辺りを包む。
「ほう。こちらも終わったか。」
「我こそはドゲンスルト。永き眠りから覚めこの地に再臨した。」
「久しいなドゲンスルト。」
「ヴェルザークか。器を用意してくれた事感謝する。またお前と相見える日が来るとは。」
「不死者を統べる者よ。また世界を混沌と絶望で支配しようではないか。」
「よかろう。奈落の王よ。」
2人目の魔人が今復活した。