ダンジョン探索。
俺と兄さんは職業のランクを上げるべく
簡単なクエストを淡々とこなしていた。
"子供の落し物を探せ"
"おばあちゃんへ薬を届けろ"
"畑を荒らす害獣を討伐せよ"
………いつになれば勇者っぽい事できるんだろうか。
そう悩んでいるとアンジュに声をかけられる。
「ベナン村長がお呼びです。」
そう言われ村長宅へ向かう。
「よく来た冒険者達よ。」
おっ…何かのイベントフラグ踏んでたみたい。
「最近村の北にある洞窟を根城にしている盗賊団に村の女性を連れ去られて困っておる。双天鬼兵団はセキーオ軍勢との戦いで頼めそうにない。恥を忍んで頼む。盗賊団を倒してきてくれぬか?」
きたきた。ゲームっぽい。もう少しで強い武器が買えるお金も貯まるし買えたら盗賊団討伐に行くか。
「今すぐ北の洞窟に向かってはくれぬか?」
村長ごめんもう少しだけ待ってて。
"北の洞窟に向かいますか?"
はい
▶︎いいえ
「頼む!今すぐ北の洞窟に向かってはくれぬか?」
"北の洞窟に向かいますか?"
はい
▶︎いいえ
「頼む!今すぐ北の洞窟に向かってはくれぬか?」
あぁこれ強制のやつなんだ…。
"北の洞窟に向かいますか?"
▶︎はい
いいえ
「ありがとう冒険者達よ。盗賊団は一筋縄じゃいかぬ。しっかり準備を整えて行くがよい。」
準備を整えたいから"いいえ"を選択してたのに。
まぁとにかくいまからでも準備してから向かうか。
村長の家を出る。
「な…なんだなんだ。」
家を出ると周囲がブラックアウトする。
気づいたら洞窟の前に立っていた。
ー北の洞窟ー
盗賊団マエダフーが根城にしている場所。
周囲にはモンスターも徘徊しており注意が必要。
あーなんか時々あるイベントの前にセーブしとけば良かったなぁ!ってなる不親切設計のあれか。
「タカ…タカ…回復アイテムも持ってないばい。」
「ごめん兄さん。こんな強制的なイベントだとは思ってなくてさ。」
「タカ…負けイベントじゃない時にやられたらどうなると?」
考えた事もなかった。ギーゴに倒された時は負けイベントだったから無事だった。でも普通にやられたらマジで死ぬやつじゃ…?
「兄さん…本当に気をつけ進もう…。やられたらどうなるかも分からない。」
「タカ…分かったばい…。」
緊張感MAXで奥へと進む。
"吸血コウモリが現れた!"
"洞窟ヒルが現れた!"
"猛毒キングコブラが現れた!"
もう本当に2人ともギリギリになった。
兄さんなんか猛毒キングコブラに咬まれ顔色がやばい。本当にやばい。
「も…もう無理ばい…。」兄さんが倒れた。
「兄さん!兄さん!もう少し頑張って!本当に死んじゃうかもしれない!」
兄さんの体を揺さぶる。
すると職業"ギャンブラー"の特殊アイテムが兄さんのポケットから落ちる。
カランカラン…。静かな音を立てサイコロは静止した。1のゾロ目である。
すると文字が浮かび上がる。
"ノガミはサイコロを振った!"
"1のゾロ目!パーティ全体のHP+状態異常回復!"
おぉ!ギャンブラーの特殊アイテムすげえ!
「兄さん!なんかすげえよサイコロ!」
「タカ…なんか知らんけど助かったばい!」
生きて帰れるかも知れない。
そんな希望を胸に抱き洞窟を進んで行った。