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宝玉、侍るは精霊

エーテリウスでのおつかいを済ませ、デナイアとユナの元へ戻る。

手にした宝玉は見た目よりずっと重い。

(野球のボールくらいのサイズなのに、鉄球でも持ってるみたいだ)

ここに魔力が出入りするのだろうか、それとも既に膨大な魔力が入っているのだろうか。

デナイアからこの宝玉の用途は特に聞いていなかったため、空白を妄想という名のピースで埋めて優也は思考遊びをしていた。

「多分ブレイズについての何かだと思うんだがなぁ......あ」

視界にあるものが目に入る。

ーーー王立図書館。

ここなら、今日買った【魔封じの宝玉】について書かれた書物も、もしかしたらブレイズのような炎の精霊を研究したような文書も見つかるだろう。

(気になる......が、デナイアを待たせるのも良くないしな)

また今度来ることにしよう。

どこか惹かれているような、そんな心は少しだけハコに閉じ込めて。


「ん、確かに【魔封じの宝玉】ね。ありがとね、アタシあそこ苦手だから...」

購入した品を見てデナイアが呟く。その表情からは感心と深い知見が透けて見える。

デナイアという少女がなぜここまでの知識を持っているのかはわからない。優也は勝手に外見イメージで年下のあどけない少女を認識しているが、もしかしたらこのゼノスフィアなる異世界ではこの程度の知識は必要最低限なのかもしれない。明日にでも王立図書館へと出向いて、ここにまつわる知識を少しでも蓄える必要がある。

......それにしても、やはりデナイアは美人だ。可愛らしい花というよりは、寒冷な雪の結晶と形容する方が適切であると優也は感じた。白銀の髪に、切れ長でガーネットを内包したかのような瞳、西洋の人がこのような顔立ちだった気がする。服装は軽装とも言えるようなもので、所々肌が見えている。

(年頃の少女がそんな格好してていいのか...っ!?)

「なにジロジロ見てるの?早く始めるわよ」

「始めるって、何をだ?俺はその宝玉の用途も聞いてないんだが」

「バンシーと戦ったときのブレイズ......アレを見て少し試したいことができたの」

名前を呼ばれたブレイズはユナの側にぴったりとくっついている。先日の"アレ"を思い出して少々身震いをしそうになる。

「ブレイズ、ちょっとこっちに来て」

「デ、デナイアさん、ブレイズに何をするつもりですか?」

ユナが不安を隠さずに尋ねた。明らかに動揺している。ずっと側にいた家族のような存在に何をされるかわからないなんて恐怖そのものだろう。

「この【魔封じの宝玉】には二つの使い方があるの。一つは魔力を溜め込むこと。でもそれだけならマジククォーツで事足りる」

確かに。マジククォーツが魔力をどれだけ溜め込めるかは知らないが、ただ溜めるだけならマジククォーツの方が使いやすい。

「もう一つは......名前の通り、『魔物を封じること』」

「「!!!」」

(なるほど"魔"封じ。魔力だけでなく魔物もその対象となりうるということか。......ん?ということは、今デナイアがやろうとしていることは......)


「っ、やめてくださいっっっっ!!!!!!」


今まで聞いたことない大声が響く。

発信源はもちろんブレイズの"親友"である。

「アタシ、まだ何も言ってないんだけど」

「ブレイズを......その中に封印するつもりでしょう!?確かにバンシーを【腹心内爛(アイ・デストラクト)】したことは、ぼくにも予想できませんでした......でも、ブレイズは悪い子じゃないんです!」

(......また聞きなれない単語が出てきたな......)

渦中のブレイズはというと、ユナの近くで酷くオロオロしている。なんだか涙目のような......。

「【腹心内爛(アイ・デストラクト)】。生物の生命機関に異常を生み、内側から崩壊させる警戒指定魔法。知らないわけじゃないでしょう?あなた、この危険生物の手綱を握れる?」

「危険生物......!?ブレイズは敵と味方の区別くらいつきます!」

「バンシーを殺してくれたことは感謝してる。でも、それがあなたに予想がつかない結末なら話は別。現状、【腹心内爛(アイ・デストラクト)】を完全に防ぐ方法は第二級指定魔法【結界=胎内守護(バリア=インサイド)】以外にない。いつ暴走するかわからないなら、できる限りの対処法を持つ他ない。安心して、ちゃんと入るかどうか試したらあなたに返すわ」

デナイアは左手の宝玉に向かい何か文言を唱える。

「『大いなるヴィヴァーチェよ 汝の名のもとに 邪悪なる魔を ここに鎮めん』」

その瞬間、宝玉が強い光を放った。

眩しい、目が眩む、何も見えない!

身を焦がすのではないかと心配するほどの光の中で優也が影として見たものは、ブレイズが宝玉に吸収されていく様子だった。

「あ...あああっ......!」

光がおさまると、そこにブレイズの姿はなく、宝玉は金から黒へその姿を変えていた。

ユナは膝から崩れ落ち、宝玉を見つめる。

「ブ、ブレイズを、ブレイズ()()を、か、かえしてください、おねがいします、だって、だって、あのひとは、ひっ!」

(ーーー怖がっている?デナイアや宝玉ではなく、ブレイズを?)

明らかにおかしい取り乱し方。さん付けしているのも異常だ。

「ユナ、大丈夫だ落ち着け、デナイア、実験が終わったなら解放しても大丈夫だろう」

「あと一日はこのままよ。いつ外に出るか、わかったものじゃない。ユナがその調子じゃ、冒険はできないから、明日は好きに各々すごしましょう」

そう言いデナイアは部屋を後にした。

「あっ......ああっ......やめて、だめです、そのひとはだめ、うう」

(コレどうすればいいんだ!?!?)

明日の予定が空いたのはいいが......ユナを放っておくわけにも......。

ーーー王立図書館に行けば、何かわかるのではないか?

昼にふと思い付いたことが役立つとは。明日行ってみよう。無論、ユナが少し落ち着いたあとでの話ではあるが。

教えて!チャーリー先生!

指定魔法って?


「やあ、魔法騎士団第二部隊隊長のチャーリー・カーミラだよ。今日は指定魔法について学んでいこうか。


指定魔法には大きく二つの区分がある。

一、階級指定

二、警戒指定

一つづつ見ていこうか。


階級指定魔法は、ゼノスフィアの魔法の中でも特に強力な魔法を階級状に指定したもの。

魔力とマジククォーツさえあれば魔法が使える以上、強力な魔法がポンポン使えてしまったらどうなると思う?治安崩壊は免れないだろう?だから制限をかけた。

魔法の主な習得先は王立図書館の書物もしくは魔法騎士養成学院だけど、一定の実力がないとこうした階級指定魔法は習得できない。こうした魔法は魔力回路が複雑なのもあって、大人でも使える人は少ないんだ。

あ、僕は第一級まで使えるけどね?


警戒指定魔法は、いわば禁忌の一歩手前。

発動は禁止されていないが、非推奨な魔法。

こうした魔法は基本的に生物を無差別に傷つける恐れがあるために警戒指定となっている。

僕も一つだけ覚えてるけど......できればもう二度と使いたくはないなぁ。


さて、今日の研修はおしまいだよ。

僕は知り合いの魔法道具店に行くから、君たちは王立図書館で魔法の勉強に励むなり、城下町で買い物するなり楽しんでおいで!」

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