魔法道具店エーテリウス
今回は短めのお話です。
チャーリーの『お友達』について。
バンシー討伐の次の日。
優也はデナイアの要請で【魔封じの宝玉】を手に入れるため、魔法道具店...【エーテリウス】なる場所へ向かっていた。なんでも、先の戦いでのブレイズの様子を見て、何か思うところがあったらしい。
(この道を左、路地裏を進み...)
周囲からだんだんと光が失われる。暗がりにあるその店はどこか近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。看板には確かに【エーテリウス】の文字。
「入るしかない、か...」
木製のドアを開き、付けられていたベルが鳴る。路地裏程ではないが店内は暗く、ランプがいくつかぶら下がっている程度であった。周囲を見渡すに、なるほど確かにこれは魔法道具だ、と怪しげなアーティファクト達を見て頷く。
目当ての宝玉を見つけ、会計を(デナイアからもらった小遣いで)済ませようと思ったが、肝心の店員の姿が見当たらない。規模的に一人でやっているのだろうが、店員が来ないことには会計が出来ない。
「すみませーん、誰かいますか?...あのー?」
話しかけても返事がない。今日は諦めるか...と、その時、ベルの音がした。現れたのはチャーリー...あの時の魔法騎士団長である。
「チャーリーさん、こんにちは」
「おや、君は...ここに用があるのかな?」
「はい、これを買いたいんですが店員さんの姿がなくて」
「わかった、ちょっと呼んでくるよ」
そういうとチャーリーは『立入禁止』と書かれた扉に堂々と入っていく。いいのか...と優也が軽く引いていると、しばらくしてチャーリーともう一人、金髪でモノクルをした不機嫌そうな男性がやってきた。
「ニール、ほら、お客さん待ってるよ?」
「わかりました...すぐに反応できなくてすみません、先程少々野暮用のあったもので。ワタシはニール•クロッカス。このエーテリウスのオーナーです。して、品物は?」
丁寧に頭を下げ、男はニールと名乗った。
「あっ、これなんですけど...」
「魔封じの宝玉ですか。それなら500ピラですね」
ピラ...教えてもらってからもやはり聞きなれないお金の単位に多少戸惑いながらもデナイアから預かったピラを出す。
「ありがとうございます!これからもエーテリウスをよろしくお願いします!......ところでチャーリー、アナタ何故ここにいるんです?団長としての仕事はどうしたのですか?」
「えーっと、バックレてきた!」
堂々と言ったぞこの男。
いつものことなのか、ニールは頭を抱える。
「アナタねぇ...ワタシと話すよりもそっちの仕事をする方が間違いなく有意義でしょうに、ほら早く帰りなさい」
「やだよー、来たばっかじゃん」
頼もしく見えた魔法騎士団長殿は、今は顔をふにゃらせてカウンターに突っ伏す不審者と化していた。
邪魔しちゃ不味いな...。
空気の読める優也君は早急に、颯爽とその場を立ち去った...購入した宝玉を握りしめて。