本気の応援合戦・誓の握手
本番を明日に控えた、最後の練習。
この日は特別に、赤組と白組の応援団が合同練習として向かい合った。
グラウンドの真ん中、少しの間合いを空けて、赤と白の団が整列する。
「いよいよだな……」
蒼空は拳をぎゅっと握る。
喉はまだ完治してないけど、声はもう張れる。
あの日、ゴウちゃんを見てから、何かが変わった。
「赤組、全力で行くぞ!!」
「おーーーっ!!」
真っ直ぐ前を見れば、白組の団長――ゴウちゃんがいた。
彼もまた、すでに構えていた。
目が合う。お互いに笑うでもなく、にらむでもなく、まっすぐに。
「白組、準備はいいかぁぁ!!」
「おーーーっ!!」
指笛が鳴る。
同時に始まる、応援合戦。
赤組が地を打つような太鼓のリズムで声を響かせ、
白組はテンポよく、キレのある動きと声で対抗する。
「赤組、いっちばんーーー!!」
「いっちばーーーん!!」
「白組、ぶっちぎれぇぇぇ!!」
「ぶっちぎれーーー!!」
声と声がぶつかり合う。動きと動きが競い合う。
全力の応援が、グラウンドの空気を震わせる。
――誰も手を抜いていない。
蒼空も、ゴウちゃんも、団員たちも。
これは“練習”じゃなかった。本気の戦いだった。
しばらくして、両団のラストコールが終わると、自然と拍手が沸き起こった。
見学していた先生や生徒たちが思わず声を上げる。
「すげぇ……」
「どっちも、マジでヤバかったな」
蒼空は息を切らしながら、ゴウちゃんのもとへ歩いていく。
「……全力出しすぎて、足ガクガクだわ」
「俺も。明日動ける気しねぇ」
ふたりは笑い合う。そして、蒼空が手を差し出した。
「明日、勝っても負けても――恨みっこなしだ」
ゴウちゃんは一瞬黙ってから、その手を強く握り返す。
「当たり前だろ。全力出したら、文句なんてねぇよ」
その握手は、友情でもあり、誓いでもあった。
明日は本番。勝負の日。
けれど、それ以上に――
それぞれが本気で“応援”という舞台に立てることが、もう誇りだった。