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白組団長・ゴウちゃんの姿

その日、赤組の練習は少し早めに終わった。

 蒼空は声がまだ本調子じゃないのもあって、全体を早めに切り上げたのだ。


「……喉、マジで回復しねぇ……」


 水筒の水を飲みながら、グラウンドの隅を歩いていたときだった。

 ふと、向こう側のエリアから、大きな掛け声が聞こえてきた。


「白組! 声が足りねぇ! 全力でやるぞ!」


 その声に、蒼空の足が止まる。

 ――聞き覚えのある声だった。


 声の主は、白組応援団長・ゴウちゃんこと、山仲こうすけ。

 小学校の頃から一緒にふざけ合ってきた、親友。

 けど今は、ライバル。


 蒼空は、物陰からそっと様子をのぞいた。


「よっしゃいくぞー! 白組! ぶっちぎれーっ!」


「白組! 白組! 白組!」


 ……揃ってる。動きも、声も、全員が完璧にひとつになってた。

 でもそれ以上に、ゴウちゃんの姿が――すごかった。


 キビキビとした動き。

 表情は真剣そのもの。

 大きな声で引っぱりながら、誰よりも楽しそうだった。


(……嘘だろ……)


 蒼空の胸がドクン、と音を立てた。

 さっきまでの疲れが、一気に吹き飛ぶくらいの衝撃。


 ――ゴウちゃん、あんなに本気でやってんのかよ。


 正直、ちょっと安心してた部分があった。

 親友だし、どこかで「こいつには勝てる」って思ってた。

 だけど今、目の前のゴウちゃんは――自分の何倍も、輝いて見えた。


(くそっ……負けらんねぇ。負けたくねぇ!)


 胸の奥に、燃えるような感情が広がっていく。


 喉なんてどうでもいい。疲れも、痛みも、情けなさも。

 全部、勝つために必要なもんなんだ。


 蒼空は、背筋を伸ばして、深く息を吸った。


「次の練習……全開でいくぞ、俺も」


 そう呟いたその目には、迷いが一つもなかった。

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