メガネ少年とすれ違う思い
翌日から、応援団の練習が本格的に始まった。
赤組は、蒼空が団長として声をかけ、仲間たちをまとめていった。
「よし、みんな! 気合い入れていこうぜ!」
蒼空の号令と共に、団員たちが一斉に集まり、応援の基本的な練習がスタートする。
最初は、掛け声や手拍子のタイミングを合わせる練習だった。
「赤組! ふざけんなよ! 声出せ! 気合いだ!」
蒼空が声を張り上げると、団員たちもすぐに応えて声を上げる。
「赤組! 赤組! 赤組!」
その声がグラウンドに響き渡る中、蒼空の目の前に、ひとりの男子がスッと立った。
眼鏡をかけて、背筋をまっすぐ伸ばしている。
「次は、動きの練習だ。お前の号令、しっかりしてくれよ?」
それは、桐山晴翔だった。
クラスでは無口な方だが、芯が強くて、周りをよく見ている。
実は応援団内でもかなりの実力者として知られていた。
「……おう。任せとけ!」
蒼空はちょっと驚きながらも、うなずく。
晴翔は、そのまま静かに団員たちの立ち位置を確認しながら、陣形を整えていった。
「ここ、半歩前。そっちの列、ズレてる。揃えていこう」
落ち着いた声で、でも確実にみんなを引っ張っていく晴翔に、蒼空は自然と信頼を寄せた。
「頼りになるな……桐山、すげぇわ」
「お前が叫んで引っ張ってくれるから、俺も動きやすいんだよ。団長って、孤独じゃないからな」
その言葉に、蒼空の胸が少し熱くなった。
練習はそのままどんどん進んでいく。
声、動き、リズム、タイミング――。バラバラだったものが少しずつひとつになっていくのが分かった。
蒼空は空を見上げながら、深く息を吸い込んだ。
――このメンバーで、絶対勝とう。白組に、ゴウちゃんに、負けないために。