表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/105

納品とツバキ劇場

異世界市場ルカート支店を出て、ルカート町のタウンハウスへ馬車を進める。

先触れは出しておいたので、スムーズに入ることが出来た。


まずは旅装を解き、割り当てられた客室で休憩をする。

その後、夕食に呼ばれたので食堂へ向かった。


食堂では、皆が勢揃いしていた。

上座に、カッペラード様、ミクシーヌ様。

こちら側に、カミーラ師匠と僕、ニンゲさん、ロックさん。


「では、晩餐を始める」


カッペラード様の合図に合わせて、料理が運ばれてくる。

メニューは、唐揚げ定食だ。


外側がカリッと、内側がジューシーな唐揚げは、いつ食べても美味しい。


ご飯と味噌汁を完食し、次はデザートが運ばれてくる。


デザートは、ぜんざいだった。


焼いたお餅が甘く煮た小豆の上に乗っている。


これもとても美味しかった。


食後のお茶を飲みながら、会話をする。


「いやあ、転生者支援パーティは大成功だったと聞いていますよ。それと、父から聞きましたがカッスィーは苗木を売ることが出来るようになったんだろう。王都の調査団が苗木を配ると聞いているから大丈夫だと思うが、護衛から離れないようにな」


「はい、大丈夫です」


「転生者支援パーティは私とニンゲで参加したが、本当にたくさんの転生者が喜んでいたよ。当初は参加出来なかった家を回ろうと思っていたんだが、苗木を売れるようになったなら、そちらの方が重要になってくるからね。異世界市場もあと二年がピークだろう」


「じゃあ、在庫補充だけやるつもりか?」


「当初の旅のプランは白紙だね。ただ、問い合わせのあった家には出向きたいと思っているよ」


「今からだと、どこで何が育つかわからない以上、問い合わせも虚しく何も返答出来なかろう」


「いかにも。ただ王宮の調査団と協力するにあたって、王都にいたほうがいいとは思っているよ」


「ああ。それはそうだろうな」


カミーラ師匠とカッペラード様は話し込んでしまっていた。

そこで、ミクシーヌ様に話し掛けて見る。


「ミクシーヌ様は、お元気でしたか?」


「元気よ。シェリーも元気してるわ。そう言えば、旅先からシェリーに手紙を書いたんだっけ? 返事の宛先に困ってたから、ティティー村へ送っておいたわよ」


「うわぁ。ありがとうございます。喫茶店ツバキでも生ケーキを出せないかと思って問い合わせしたんですよ」


「丁度魔具職人も近くにいるし、冷蔵の魔導具は喫茶店ツバキ用に発注して、もう納品済みだって聞いたわよ。生ケーキを喫茶店ツバキで出すなんて、素敵だわ」


ミクシーヌ様にも賛同して貰って、僕は嬉しかった。


「ツバキ劇場はどうです?」


「ああ、テッサに聞くと良いわ。一緒に見たから。凄く喜んでたわよ」


「それは良かった。今日2号店に行ってきたんですけど、席は売り切れでした」


「繁盛してるわよね。1号店で良かったら、明日の席を用意するわ。わかった、4名ね。手配するわ」


ミクシーヌ様はメイドに指示を出すと、何かを書き付けて渡していた。


そこで、向こうも会話がひと段落ついたらしい。解散の声が聞こえた。


僕は部屋に戻り、お風呂に入った。

お風呂から出て、牛乳を飲む。その後、歯磨きをして速やかに就寝した。


翌日、朝食後。

朝から僕は異世界市場で納品をしていた。

生ケーキを追加で納品し、魚介類を納品する。

そして次はフルーツだ。フルーツの納品数は多く、お昼までかかってようやく半分。


お昼を食べに、向かいの定食屋へ入る。

ここはカッペラード様がやっているお店で、丼飯屋さんなのだ。僕は牛丼を頼み、ロックさんは豚丼を頼んだ。

牛丼はすぐに出てきて、かっこんで食べれるし、安くてとても良いと思う。

お客さんもそこそこ入っているし、人気店なんだな、と思った。


異世界市場に戻り、納品の続きだ。

フルーツが終わり、やっと米に入る。

チェックするマイクさんも気合いを入れ直して、米に向かい合った。


3時半頃、カミーラ師匠とニンゲさんが迎えに来てくれた。

二人と一緒に、喫茶店ツバキ1号店へ向かう。


到着し、パヤ店長にチケットを見せると、ある客席に案内された。


「ツバキ劇場は4時から上演になります。それまで軽食をお楽しみ下さい」


そう言って去っていくパヤ店長とメニューを睨めっこして、きらきらの衣装の店員さんにオーダーを通した。

初めに届いたのは、カミーラ師匠のホットケーキ。次に僕とニンゲさんのチョコレートパフェ、最後にロックさんのぜんざいだ。


食後に、今日は皆で珈琲を頼んでいる。


久しぶりのチョコレートパフェは凄く美味しくて、一気食いしてしまった。

珈琲を飲みつつ、お茶請けに出たクッキーを摘まんでいると、ツバキ劇場が始まった。


高い声で歌う歌手は赤髪を長くのばしていて、きらきらと光る衣装と一緒に光の中を泳ぐように歌い、踊っていた。

客席と舞台は椅子で仕切られていて、十数名いるダンサー達がくるくると回り、踊っている。


恋の歌のあとは陽気な歌、そして、悲恋の歌。

赤髪の歌手は最後に『アルミナの勇壮曲』を歌い、場を盛り上げた。


後はきらきらした衣装のダンサー達がくるくると回って踊り終えた後、実際の店員と交代して、ツバキ劇場は終了した。

客席からは万雷の拍手が送られ、やがて通常営業に切り替わる。


珈琲を飲み干し、席を立つ。

ツバキ劇場はとっても良かった。

入り口のパヤ店長に挨拶をして、タウンハウスに戻る。


タウンハウスで夕食を摂り、お風呂に入って就寝した。


翌朝、朝食後。

また今日も異世界市場へ納品に出向いていた。

半年分の納品をする必要があるので、いつもよりだいぶ時間をかけていた。


異世界市場の納品が終わったのは四日後の昼だった。


その後、ハイド男爵家の分の納品に入る。


ハイド男爵家の納品が終わったのは更に五日が経ってからだった。


納品が終わったその日の夕食にて。


今夜はキラーホーンの煮込みを堪能していた。

カッスィーが持ち込んだキラーホーンの肉を、料理長のキジさんが料理したものだ。


「これはうまいな。カッスィー、肉の在庫に余裕があるなら一部買い取らせてくれ」


「良いですよ。肉はいっぱいあるので大丈夫です」


「本当に美味しいわ。お兄様、多めに買い取りして下さいませ」


そのミクシーヌ様の言葉通り、キラーホーン10体分のお肉を金貨20枚で売った。


キジさんなら、美味しく調理してくれるだろう。


翌日、朝食後。雨の中、出立となった。


ティティー村へ向けて馬車を進め、中天の頃には、懐かしきティティー村へ到着する事が出来ていた。


村長宅の前に止まり、馬車を降りる。


ドアを開けると、父さんと母さんが待っていた。


「父さん、母さん。ただいま」


「お帰りなさい、カッスィー」


母さんのお帰りの言葉に、僕は感極まって少し泣いてしまった。

結構長い距離を、旅してきたように思う。

僕は母さんに抱き付いて、再会を喜んだ。

父さんはそんな僕達を、優しい目で見つめていた。

お読みいただき、ありがとうございました。


もし面白い! 応援してるよ! と思ったら、


↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ