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イヴリンダンジョンと鱗人

イヴリン町に着いてまずしたことは、薬師ギルドへの納品である。

カミーラ師匠は行きと同じく、荷運びの依頼を受けていた。

薬師ギルドでサインを貰い、冒険者ギルドで報酬を貰う。

どうやら良い儲けになったようだ。ニコリと笑うカミーラ師匠が、「さて、昼飯にいこう」と促した。


ミノタウロスの煮込み料理が売りだという料理屋で昼食を済ませた後、僕に待っていたのは、弓の訓練だった。


宿屋の一室に集まった僕らは、ガタリと机に置かれた真新しい弓を見つめていた。


「コッコ銀で作られた弓だ。スキル【弓術】を持っていなくても、擬似チャージショットが打てるようになる。カッスィーの背格好に合わせて作った弓なんだけど、どうかな?」


視線で促されて、僕は弓を持ってみた。

思ったより軽い。

そして恐らく弓のサイズはピッタリだった。


「サイズはピッタリだと思う。後は打ってみないとわからない」


「うん、じゃあ冒険者ギルドで試し打ちしてきてくれるかい? 矢は普通の矢と鉄矢を両方試してくれ」


「わかりました。ちょっと行って来ます」


僕は冒険者装備として、足甲と手甲、胸当てを装備してロックさんと冒険者ギルドへ向かった。


新しい弓は思ったより手になじむのが早く、1時間程で普通の矢の調整は終わった。

鉄矢で矢を打ってみると、的をガリガリと削りながらもいい感じだ。

チャージショットは意識して弓矢を放つとチャージショットになる感じ。普通に打つよりタメが長くなるけど、その分威力が高くなる。


「鉄矢でチャージショットを放つと、えらいことになりそうだな」


「うん。魔法で守られてるけど、うっかり壊したら大変だからやめとく」


「ああ。残りの調整はダンジョン内でいいだろう。お疲れさん」


ロックさんと拳を交わして、健闘を讃え合う。


調整を終えた僕達は宿屋へ戻り、カミーラ師匠達と一緒に夕食を取った。

デザートのチョコレートケーキを配っている時に、カミーラ師匠から明日の予定を聞いた。


「明日はイヴリンダンジョンに潜る。地下3Fで岩蛙の胃袋の採取だ。普通の矢だとダメージが通らないが、属性矢を用意してあるから、出来れば頭を射抜いて欲しい」


「わかった。やってみる」


「頼んだぞ」


ニッコリと微笑んだカミーラ師匠から各種属性矢を貰い、マジックバックにしまう。


僕の弓の腕で属性矢なんて、勿体ないけど、これはよい機会だ。

僕の全力で属性矢を当てていこう。


この日は早めに就寝し、翌日に備えた。


翌日、朝食後。

カミーラ師匠は朝陽できらきらと光る金髪をなびかせながら、ダンジョンへの道を歩いていた。


ダンジョンは初心者ダンジョンしか知らないけれど、イヴリンダンジョンは50階層もあり、入り口も大きい気がする。


ダンジョンの入り口へ着くと入場料を払い、中に入る。

地下1Fはオークが出る。


ふと、オークが現れて交戦に入る。ニンゲさんとロックさんが剣で応戦し、回復術の使い手であるカミーラ師匠は後衛へ。僕は新しい弓でオークの首元を狙った。


命中。そしてニンゲさんの一撃でオークの命を奪った。


さて、道を歩いているとオークの群れが襲いかかってきた。

ニンゲさんとロックさんは剣で応戦、僕は弓で追撃だ。

討ち取った後は、魔石を心臓のあたりから抜き、肉が美味しいのでマジックバックに収納する。


ニンゲさんもロックさんも流石教会騎士! と言いたくなるような流れるような身体捌きと剣術で、決して後れを取っていない。


何度も襲われたけれど、問題なく倒すことが出来た。


そして、地下2Fへと降りた僕達は、すぐにミノタウロスに囲まれる事になった。ニンゲさんとロックさんが剣で応戦している間に、弓で追撃する。

首に一射、二射。三射当ててようやく息絶えるミノタウロス。随分タフなモンスターだ。


次に、チャージショットを試してみた。

これは二射で仕留められた。


そして、火の属性矢を試すことにした。

これは効果が劇的で、チャージショットを併用すると、一射でミノタウロスを沈黙させることが出来る。


これは面白いと思ってしまうほど爽快な感覚だった。


それからは、チャージショットを打って一撃必殺の感覚を楽しんだ。


ミノタウロスはほぼ集団で襲って来る。

そこを止めるのがニンゲさんであり、ロックさんであり、息の根を止めるのは僕の役目。


「いやぁ、カッスィーの弓は絶好調だね」


「俺達も戦いやすい。その調子で敵を屠ってくれ」


カミーラ師匠とニンゲさんに褒められ、僕はわかりやすく頬を緩めた。


「うんっ、頑張るよ!」


その後もミノタウロスの特攻が続き、僕の火矢がチャージショットと共に宙を舞う。

ミノタウロスは1匹、2匹と倒れていく。


ミノタウロスもオーク同様、肉が美味しいとされているモンスターである。倒したら魔石を抜き、マジックバックへ仕舞う。


そしてようやく3Fへの階段を見つけた。


3Fではキラーホーンという鹿の魔物が出る。


階段を降りてすぐ、キラーホーンに襲われ、ニンゲさんが鹿の角による特攻を止める。すかさず僕も火矢を放ち、二射で絶命させた。


魔石を抜き、肉をマジックバックへ仕舞う。


そのまま奥に進み、3回戦闘を繰り返した。

キラーホーンも美味しいお肉になるそうなので、しっかり倒して仕舞っていく。


水場に出ると、僕と同じくらいの大きさの蛙がウジャウジャいた。

背中が岩のように変色し、ぼこぼこになっている。

ニンゲさんが前に出て、ターゲットを取ってくれた。戦ってる個体の頭目掛けて、火矢を放つ。二射で倒れた。次は火矢でチャージショットを放つ。見事命中。一射で絶命させる事が出来るチャージショットは凄いけれど、疲労も溜まる。


ニンゲさんが次々にターゲットを取ってくれるので、的に困ることはない。ロックさんは後方の警戒をしてくれている。いつキラーホーンが襲って来るかわからないからね。


僕が50体目の岩蛙を射抜いた後、セーフティーエリアへ向かうことになった。


岩蛙の胃袋は傷つけずに納品したい為、そのままマジックバックに仕舞う。肉も美味しいらしいので、期待が膨らむ。冒険者ギルドで解体して貰うのだそうだ。


やがてセーフティーエリアに到着し、僕も弓を下ろした。


今日の昼ご飯は生姜焼き弁当。デザートはシュークリームだ。


「肉が柔らかくてうまい。味付けがしょっぱくて米が進む」


「出来立てアツアツの弁当というのがいいよな。本当にうまい。デザートのシュークリームはクリームが滅茶苦茶うまい」


「これに酒が付いてりゃ文句はないんだがな」


「えっと、お酒は夜の方がいいんじゃないかと……」


僕が恐る恐るそう言うと、ロックさんはニカッと笑って「冗談だよ。うまい飯だった」と褒めてくれた。


食後、暫く休憩をして疲れを取り、再び岩蛙へ向かうことになった。

途中、3匹のキラーホーンを獲得し、岩蛙の池へと布陣する。


それから僕はチャージショットを打ちまくり、火矢の予備を貰って更に打ち続けた。


岩蛙の討伐数が300を超えたあたりで、撤収の準備をする。

それと、僕が探していた岩蟹も池にいたので、100匹ほど討伐させて貰った。


ガサガサ、と音がしてキラーホーンが突っ込んでくる。それをロックさんが受け止め、僕の火矢で沈黙させた。

その後ろで冒険者が待機していて、こちらに近付いて来る。


僕はごくりと息を飲んだ。

待機していた冒険者は6人。そして顔にある蛇の鱗のようなアザ。全員が鱗人だった。


「すまないが、余力はあるだろうか。ヒールをして欲しい。礼はする」


よく見ると皆満身創痍で、話しかけてきた男は頭と腕から血を流していた。


カミーラ師匠が答える。


「余力はなくもないが、我らは女神を信仰する信徒だ。おまえ達にそれが受け入れられるか」


「問題ない。わかっていて修道服を着たおまえ達に声を掛けた。俺達は非国民とされる鱗人だが、ダンジョンの中ならば国境はない。……ヒールを、頼む」


「……わかった。ヒールをかけよう」


それから、カミーラ師匠はひとりにつき一回ずつ、ハイヒールを唱えた。みるみるうちに傷が消えていく。

男は、金貨3枚をカミーラ師匠に渡し、「感謝する」と告げて仲間と共に消えた。


「……弱っているのを見ると助けたくなってしまうのは、聖職者の性かな。カッスィー、大丈夫?」


「大丈夫です。鱗人を初めて見たのでびっくりしちゃって」


「そうか。知ってるんだね、鱗人の事を。私が治療した事について、何か思うことはあるかい?」


「正直、意外でした。カミーラ師匠みたいな神官さんと仲悪そうだから」


「私はね、鱗人全部が神を否定しているとは考えてないんだよ。仲良くできるものならしておきたい。彼らはこの修道服をわかっていて声を掛けたと言っていただろう。彼らも同じかもしれないね。さて、戻ろうか」


ニンゲさんとロックさんが警戒しつつ、帰路に着く。帰りはキラーホーンを5匹討伐した。あと、ミノタウロスとオークを片付けたらもう、外だ。


外に出るともう薄暗くなっていて、生暖かい風が吹いていた。

お読みいただき、ありがとうございました。


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