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異世界市場王都支店

翌日、朝食を済ませた後早々に僕達は出立していた。メンバーは、カミーラ師匠、僕、ニンゲさん、ロックさん。


「じゃあ、予定通り商業ギルドへ向かう。カッスィーはオーナーをしている店の利益を商業ギルドに預けっぱなしだろう? 収入が金貨何枚になったのか確認しておきなさい」


そう言えば、そうだった。

僕がオーナーをしているお店は今のところ三つ。異世界市場ルカート支店と、喫茶店ツバキの一号店と二号店。月に金貨3枚と、純売り上げの一割が僕の取り分。もしかして、金貨100枚位貯まっているだろうか。


オーナーとして商業ギルドへ行くので、きっちり紺の礼服を着てやってきた僕は、たどり着いた広い商業ギルドの玄関を通り、高そうな黒い革張りのソファに身をもたれさせながら、まずは商業ギルドカードを出して、残高を確認して貰った。


「カッスィー様、残高は金貨428枚でございます。お引き出しはされますでしょうか?」


金貨428枚?! そんなに収入があるのか。

僕はびっくりしながらも、手を振って引き出しはしないことを伝える。


「いえ、そのままでお願いします」


修道女服のカミーラ師匠は自分のカードを出すと、


「じゃあ、異世界市場、王都支店のオーナーをカッスィーにしてくれ」


「かしこまりました」


カードを預かり、奥の部屋へ去っていく女性を眺めながら、僕は後ろに立つロックさんに話しかけた。


「ロックさんは商業ギルドカード持ってるの?」


「俺は持ってないな。ニンゲはカミーラ司祭の助手でもあるから、持ってるけどよ。どうした?」


「思ったより沢山収入があったみたいで、金貨がいっぱいあるんだけど、どうしたらいいかと思って」


これは僕の本心だ。オーナーになったのも、異世界市場を作ったのもカミーラ師匠の誘導があったからだ。

全部僕が収入を貰っていいわけ、ない。

そうロックさんに言うと、鼻で笑われた。


「何言ってるんだか。それは全部お前の金だ。好きに使って良いとはいえ……金額が大きすぎるか。いずれは商売で使うだろう。今は貯めとけ」


「うん、わかったよ」


商売で使うにしては少し心許ない額だ。貯金する事を迷わず選択出来てありがたい。


「お待たせ致しました。異世界市場、王都支店のオーナーをカッスィー様に変更致しました」


「ありがとう。じゃあ、カッスィー行くよ」


「はい、カミーラ師匠」


僕は師匠の後ろについて、商業ギルドを出た。


馬車の中で私服に着替える。

服装は着慣れたシャツにベスト。これでよし。


その後到着した異世界市場王都支店は、ルカート支店なんて比べようもなく大きくて、びっくりしてしまった。


入り口にはショーウィンドウが並べられ、エントランスを抜けると、いくつもの応接室が並べられている。煌びやかな室内を堪能していると、銀髪の長髪で、切れ長な眼差しが印象的な美丈夫が奥から現れた。


「やあ、カミーラ。待っていたよ。こっちの子がカッスィー君かい?」


「そうさ。カッスィー、紹介しよう。この男が異世界市場王都支店の店長、ドラグ・エンバー。元ティアージア公爵家の執事の一人さ」


「ドラグ・エンバーでございます。どうぞ宜しくお願いいたします」


「カッスィーです。宜しくお願いします」


一通り挨拶が終わった後、カミーラ師匠は納品について語り出した。


「じゃあ、早速納品にかかろうか。ドラグ、人は集めてあるんだろうね?」


「勿論だとも。鑑定師は二人と、荷物の積み上げには各フロア一人以上用意してある。オーナーは商品を出すだけで良い。とにかく数が必要だから、ゆっくり倉庫を埋めていって欲しい」


「伝票はありますか?」


「まずはこれだ」


ぴらり、と渡された伝票には米と書いてあり、今まで納品したことのない量が記載されていた。

うん。これだけでも今日終わるかわからない。


「倉庫に案内しよう。ついてきてくれ」


ドラグ店長についていくと、だだっ広い倉庫にたどり着いた。室内は明かりが灯されており、結構明るい。

そこに、二人の男女が声をかけてきた。


「ドラグ店長、鑑定師のお仕事ですか?」


「ああ。この少年はオーナー兼仕入元だ。カッスィーという。お前達も自己紹介しなさい」


「私は鑑定師のノラ。宜しくね」


ノラと名乗った方は女性で、ポニーテールで金髪を藍色のリボンで纏めている。


「俺は鑑定師のオゥラだ。宜しく頼む」


オゥラさんの方は、茶色の短髪で、目鼻立ちのはっきりした風貌だった。


はじめはオゥラさんが鑑定師の担当をすると聞いて、もう一度頭を下げた。


「カッスィーです。宜しくお願いします」


納品はすぐに始まり、ロックさんは護衛として残ったが、カミーラ師匠とニンゲさんは先に帰る事になった。例のパーティーの打ち合わせがあるらしい。


「じゃあね、カッスィー。私達は先に戻るよ。頼んだお使いは、覚えているかい?」


「覚えています。今日、昼の鐘が鳴ったら行って来ます」


「宜しい。じゃあ、納品頑張ってね」


そう言って、カミーラ師匠とニンゲさんは颯爽と帰って行った。


僕は、納品に集中する。

お米を出して、オゥラさんにチェックして貰い、積んでいく。

積むのは、倉庫フロアの担当者から二人、選出されていた。

その為、僕はずっと出すだけで良い。

楽ちんではあるが、数量を考えると子供がチマチマ積むのを待っていられないのもわかる。

とにかく午前中はずっとお米を出し続けた。


昼の鐘が鳴った。

お昼休憩の為、僕はロックさんと一緒に王都の大通りに来ていた。

ああ、あった。ここだ。フクロウの台所っていう大衆食堂だ。


「ごめんくださーい。カミーラ師匠の代理でお醤油を届けに来ましたー」


パタパタと近寄ってきたのはまだ若そうな女将さん。


「あらあら。本当に届けてくれたのね。有り難いわ。じゃあ、奥へどうぞ」


「いえ、ご飯を食べに来ただけですから」


「そう? じゃあここへ座ってちょうだい。メニューは今日の日替わりだけで、牛カツ定食よ」


「じゃあ、醤油5本はここに置きますね」


「ありがとう。ゆっくりしていって頂戴」


カミーラ師匠からのお使いは、馴染みの定食屋に醤油を5本届けるというもの。代金は貰ってあるので、届けるだけ。女将さんは元気だけれど、家族に足の悪い人がいて、買い物に事欠くのだとか。


届いた牛カツは、ジューシーで、肉の旨味たっぷりだった。外側がカリッと揚がっていて、とても美味しい。

野菜スープとバケットも完食した。


銀貨1枚をロックさんとそれぞれ払い、店を後にした。


異世界市場に戻ってからは、ずっと納品に明け暮れた。

頑張った甲斐があって、夕刻までには米の納品を終える事が出来た。


ドラグ店長も喜んでくれて、「明日以降も宜しく頼む」とにこやかに微笑んでお願いされた。


ドラグ店長の手配した馬車の中、ちょっとうたた寝してしまったけれど、無事家に帰り着いた。


タウンハウスで夕食を済ませ、今日は泳がないから、一人で普通にお風呂に入った。

おやすみなさい、また明日。


翌日、朝食後、タウンハウスの馬車を出して貰い、ロックさんと二人、異世界市場王都支店へ納品に行く。

ドラグ店長に挨拶をして、伝票を貰う。

今日は、醤油だ。


僕はその後数日かけて醤油と味噌の納品を済ませた。その後酒類や出汁の元、カレールゥ、ホットケーキミックスの納品が始まった。酒類は数と種類が多く、ホットケーキミックスまで終える頃には2週間が経過していた。


お読みいただき、ありがとうございました。


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