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ハイド町へ到着

異世界市場ルカート店を後にし、馬車に乗って喫茶店ツバキ1号店へ来ていた。

馬車を降りて並んだけれど、店に入るまで30分といったところか。丁度お昼時の為、余計混雑していると思われた。


店の中に入り、4人掛けの席に通される。

メニューを渡され、改めて見たけれど、店員の衣装は美しく、光沢を放っていた。周りを見渡すと、店員の衣装に見とれている女性客が結構いるようである。衣装に力を入れて正解だったね。


注文内容が決まり、注文した。

まず届いたのは、カミーラ師匠のナポリタンだった。

次にロックさんのハヤシライス、ニンゲさんと僕のハンバーグチーズドリア。


ハンバーグはボリュームたっぷりで、チーズドリアはミルクとチーズの風味が濃厚で、とても美味しかった。


さて、食後のデザートである。

僕はクリームあんみつを頼み、カミーラ師匠はプリンアラモード、ニンゲさんとロックさんはみたらし団子を頼んでいた。


クリームあんみつを食べ終え、食後のお茶を飲む。珈琲の良い香りを楽しんでいると、ニンゲさんが感慨深そうに緑茶を啜っていた。


「雰囲気の良い純喫茶だ。そりゃあ人気も出るだろう。メニューはほぼ異世界のものなのに、こんなに普通に受け入れられている所が驚嘆に値する。値段もそんなに高くないし、転生者を連れてきたいところだな」


「ニンゲの言うとおりだねぇ。私達はつい転生者ありきで考えてしまうけれど、ここには多分いないんだ。普通の店として楽しめる。そこが成功の秘訣かもね」


話し合いが終わり、店を出る。お会計の時に、店長のパヤさんが挨拶をしてくれた。

持ち帰りでアイスをサービスしてくれたので、馬車の中で食べたよ。


喫茶店ツバキに不満があるとすれば、生ケーキの少なさだ。やっぱり、冷蔵の魔導具がないと厳しいのだろう。お金を貯めて買うしかないと、そう考えていると、後ろ盾のアフガンズ家に融通を頼む方が良いと、カミーラ師匠からアドバイスを貰った。


馬車の行き先は、ハイド町。ここから2日程かかる。途中は天気が良い為野宿をした。火蜥蜴のコートのおかげで体感温度はずっと常春だ。寒くもなく、暑くもない。野宿をして2日目の朝、朝ご飯のトンカツ弁当を配膳した。揚げたてのトンカツはじゅわりと脂が染み出し、噛むと肉の旨味が溢れ出してくる。ご飯もポテトサラダも、とても美味しかった。


デザートにキャラメルを出し、口の中でキャラメルを溶かしながらハイド町に到着するのを待った。

いよいよ街に近付く時に、ウルフが3頭襲ってきたが、ロックさんが危なげなく倒してくれた。

死体の処理をし、いよいよハイド町である。


ハイド町の検問は、冒険者ギルドのドッグタグを見せると、速やかに通してくれた。


町に入ると、人、人、人である。

トーミ町は冒険者が多かったが、ハイド町は普通の格好の人が多いようである。


「まずはハイド男爵に挨拶に行こう」


ロックさんがそう言い、先触れは出してあると笑った。

ハイド男爵の館は、北通りの一番奥にあった。

到着後、馬車を降りて中に入ると、客室をあてがわれた。

身支度をしていると、ノックの音がした。

昼食の準備が出来たとのことだったので、案内について行って、食堂へ入った。

カミーラ師匠がいたので、その隣に座る。次いで、ニンゲさんとロックさんが着席した。


上座には、ハイド男爵夫妻が座っていた。


「では、改めて。私は、ケリオス・ハイド。ハイド男爵領の領主をしている。宜しく頼む」


「私はランケ・ハイド。ケリオスの妻です。今日は夫が後見人を務めるカッスィー君に会えて嬉しいわ」


「ご挨拶、ありがとうございます。私はカミーラ・シシュタイン。司祭をしています。今日はこのような席を用意して頂き、感謝申し上げる」


ちらり、とカミーラ師匠の視線が来て、師匠は小さく頷いた。僕も頷き、胸を張って挨拶をする。


「カッスィーです。宜しくお願いします」


無事僕の挨拶も終わり、昼食が始まった。


今日のメニューは、唐揚げ定食だった。

外側がカリッと、内側がじゅわっとする唐揚げは、肉の旨味たっぷりで、パクパク食べてしまった。

食後、デザートが運ばれてくる。

デザートはぜんざいだった。

焼きたてのお餅が甘く煮た小豆の上に乗っている。

お餅は柔らかく、小豆は甘くて美味しかった。


食後のお茶を飲みながら、談笑をする。


「では、ハイド町へ和食のお店を出店されたのですね」


「ええそうです。唐揚げ定食とぜんざいは、売上1位なんですよ」


「なるほど、大変美味しかったです。ルカート町では喫茶店ツバキが盛況ですし、これからが楽しみなのではありませんか?」


そう聞くと、ハイド男爵は目を光らせて即答した。


「勿論ですとも。喫茶店ツバキは歌劇も行う珈琲店になるのだとか。カッペラードから聞いています。ハイド町に歌劇場はありますが、飲食店と併設している歌劇場はありません。今から楽しみにしているんですよ」


「そうですか。私達も歌劇が始まったら見に行こうと考えています」


その後は和やかに話が進み、今夜は泊まらせて貰う事になった。


今日のおやつのリクエストを聞かれて、ホットケーキと答えた僕だったけれど、キラービーの蜂蜜をかけてもらえると聞いて喜んだ。


実際、おやつの時間にはホットケーキにたっぷりとかけて、テリアスペシャルのようにしてから食べてみた。そりゃあもう、すっごく美味しかったよ。


部屋で寛ぐこと暫し。晩御飯の時間まで暇である。しかし館の中を歩き回る訳にも行かないので、手持ちの本を読んで大人しくしておいた。


トントン


「晩餐の用意が整いました」


「今行きます」


僕はしっかり返事をして、食堂へ向かった。


食堂では、皆が勢揃いしていた。

上座に、ハイド男爵夫妻。

こちら側に、カミーラ師匠、僕、ニンゲさん、ロックさん。


「では、晩餐を始める」


ハイド男爵の合図に合わせて、前菜が運ばれてきた。

メニューは、春野菜と水蛙のロースト。

春野菜のちょっと苦い味わいに、水蛙の甘く爽やかな味わいが後を引く。

水蛙の身はどっしりと甘くレモンの爽やかな風味がとても良く合っていた。


メインは、オークキングのステーキだ。

初めて食べたけれど、すっごく美味しい。じゅわっと溢れ出る脂身と肉の旨味、それを醤油ベースのステーキソースが上手くまとめていた。付け合わせの甘い人参とブロッコリーも完食し、バケットもソースを拭いながら完食した。


デザートは、フルーツタルトだった。

ブルーベリーが多めで、甘酸っぱい。

カスタードクリームとパイがとても美味しかった。


食後のお茶を飲みながら、暫し談笑する。


「では、カスケード領を通って行きますか」


「はい。このまま東へ向かいます」


「では先触れを出しておこう。転生者支援は、王家も推奨している。嫌がられる事はないだろう」


「道中の領主様には、一連の説明をしていくつもりです。もしかしたら、食事に苦しむ転生者がいるかもしれない。いたら、私の采配で安値で卸します。カッスィーは丁稚として連れて行くので、お弁当だけ出して貰おうと思っています」


「カッスィー君が仕入元だとバレると危険だからな。その方が良いだろう」


ハイド男爵は、僕を見ながら重々しくそう言った。

勿論、僕に異論はない。

お弁当を出すこと以外で出来ることがないからだ。


そして、話は穏やかに終わり、解散となった。


その後、お風呂に入り、ゆっくりと浸かった。

野宿は思うほど辛くないけれど、お風呂はゆっくり入りたいと思う。

お風呂から出たら、歯磨きをしてすぐに就寝した。


翌朝、朝食後。

僕はハイド男爵と握手をした。僕の後見人として、ハイド男爵はお金を出してくれた。一体何枚あるかわからない金貨の山である。

安いところに泊まらず、安全第一で行ってきなさい、とのことである。

また三ヶ月後には、無事に帰ってくると約束した。


出立の時間になり、馬車に乗り込む。


「行ってきます!」


見送りに来てくれたハイド男爵夫妻に挨拶した。二人は小さく手を振ってくれた。


馬車はカスケード領へまっすぐ進むと思いきや、冒険者ギルドへ寄り、薬師ギルドで止まった。カミーラ師匠についていくと、ポーションの運搬について注意事項を説明される。

そして目の前にあったたくさんのポーションをカミーラ師匠は仕舞い始めた。

一連の流れ作業のようで、ついていけない。

僕が改めて聞くと、ポーションを仕舞いながら、「金策だよ」と教えてくれた。

現在、"アーリアの山頂"は4人パーティである。

僕という子供を預かっている事もあり、安宿には泊まれない。少しでも余裕を持って進む為、いつものポーション運送クエストを受けたのだという。行き先は、カスケード町。

一本残らず大事に運ぶと、そこそこのお金になるそうだ。

薬師ギルドを後にし、今度こそカスケード領目指してまっすぐ進む。

ハイド町を出て、次の町へ。

馬車に乗って新緑の大地を踏みしめて進んでいく。

途中、一度休憩を取った。僕は紅茶で、ニンゲさんが珈琲、カミーラ師匠とロックさんはオレンジジュースだ。


休憩が終わり、馬車に乗り込む。

道中は天気も良く、ペースも速い。カスケード領に入り、ギュナン町まで辿り着いた。

お読みいただき、ありがとうございました。


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