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食パンと唐揚げ

「岩鹿のステーキがとても気に入りました。ご馳走していただきありがとうございます」


「気に入って頂けて良かった。所で、カッスィー君は納品もあるし、今夜はどうぞ泊まっていって下さい」


「ご好意、有り難く。泊まらせて頂きましょう」


カミーラ師匠は、にこやかにタウンハウスへ宿泊する事を決めた。


「カッスィー。喫茶店ツバキが繁盛しているわ。店員の衣装を凝ったものにしたせいか、凝った格好の人が集まるみたい。それと、珈琲がとにかく売れているの。店が混雑し過ぎているから、ルカート町にもう一店舗作って良いかしら」


「それなりに離れていればいいと思います」


「わかったわ。こちらでやっておくわね。次はルカート通りから離れて、北通りの真ん中よ。貴族が買いに来れるようにしておかないと、文句を言われちゃうからね」


「わかりました。宜しくお願いします」


僕はシェリー様に頷いて、ぺこりと頭を下げた。


「カッスィー。喫茶店ツバキをハイド町に出して良いかしら」


そう聞いてきたのは、ミクシーヌ様だ。


「僕は構いませんが、仕入れの問題は大丈夫でしょうか?」


「異世界市場ルカート店から買うわ。大丈夫、売れるわ。パーティーでも珈琲は引っ張りだこよ。珈琲の良い香りは、貴族も魅了するというわけ」


「わかりました。ミンバ店長に言っておきます」


それでいったん話は終わったのだが、シェリー様が歌劇の話を持ち出してきた。


なんでも、歌劇のような格好をした店員だから、歌えるだろうと、有名な作家から台本が届いたらしい。考えてもみなかった為、大変驚いたそうだ。

実際に踊るときには店員ではなく、劇団員を雇って公演をしたいと考えているらしい。

店は広いので、混雑が少し収まれば十分対応可能だという。それはテッサが喜ぶだろうと思い、僕は快く了解した。


「喫茶店ツバキの2号店が出来上がって、混雑が収まったら、一度店舗の改修をするわ。舞台と、裏に練習用の稽古場を作るから。元々が倉庫で、土地が広くて助かってるわ」


「練習で良いので、テッサに見せてあげて下さい。チケット代が必要なら、僕が支払います」


「じゃあ、キャロ師匠とテッサ二人に招待状を出すわ。チケット代は不要よ。オーナーからのお願いだもの、張り切って叶えるわ」


「ありがとうございます。お願いします」


喫茶店ツバキは、午後の準備時間の間、簡単な演劇を披露する珈琲店になるそうだ。

勿論、吟遊詩人もいるし、酒屋の隅っこで歌う歌手だっている。前代未聞という程ではないにしろ、そこそこ話題性があることは間違いなかった。


なにしろ、僕も見てみたい。

台本を送ってくれた作家には、アフガンズ家できっちり対応をするそうだ。


「珈琲を飲みながら歌劇が見れるなんて、素敵ですね」


「そうでしょう。元々歌はどこかで取り入れたかったのよ。丁度良かったわ」


それだけ珈琲が注目されているという事なのだろう。僕は後ほど視察に行きたいと伝えて、納品を開始する事にした。


「今日はテッサがいないのですが、鑑定係はどうしましょうか」


「うちの従僕にあたらせる。そして、これがハイド家とアフガンズ家の伝票だ。宜しく頼むよ」


「はい。では行ってきます」


僕は食堂を出て、広い倉庫にたどり着く。

鑑定係の従僕が来てくれて、まずは米から出していった。

積んで積んで、また積んで。

米が終わったら次は醤油だ。これも10本単位で出していく。

それが終わったらお酒で、これも10本ずつ出していった。

カレールゥなどの各食品やチョコレートやカカオ、珈琲を出していく。

納品量が大量の為、倉庫がどんどん埋まっていった。


3の鐘が鳴り、おやつ時である。

食堂へ行くと、皆が揃っていた。


上座に、カッペラード様とミクシーヌ様、シェリー様。

こちら側にカミーラ師匠、僕、ニンゲさん、ロックさんだ。


僕は席に着いて、ちょこんと座った。


キジさんによって運ばれてきたのは、チョコレートケーキだった。

ふんわりしたスポンジもチョコ味で、クリームもチョコホイップクリーム。

どこまでもチョコ味を追求したようなケーキに、ミクシーヌ様も満足そうだった。

シェリー様はいつものごとくアイス5段盛りのチョコレートパフェだ。美味しそうに食べており、幸せそうで何よりだ。


食後のお茶を頂いて、僕は納品に戻った。


納品が終わったのは、夕刻になる頃で、僕は暫し客室で寛いでいた。

いつもと同じ納品なのに、テッサがいないだけで2倍位疲れた気がする。

これからもひとり、頑張っていくのだ。

僕は寂しさを誤魔化しつつ、ちょっとだけため息をついた。



翌日、朝食後。

僕達は出立の準備を整えていた。


「次は三ヶ月後だね。気をつけて行ってくると良い」


「ありがとうございました。カッペラード様。行って来ます」


僕はカッペラード様に挨拶をして、馬車に乗り込んだ。

ミクシーヌ様とシェリー様も見送りに来てくれている。


「見送りありがとうございます! 行って来ます!」


馬車の中からそう叫ぶと、彼女達は手を小さく振ってくれた。


行き先は、まず異世界市場ルカート店だ。

ルカート通りを通り、異世界市場の裏手、馬車止めに馬車を止めた。

表に回ると、焼きたてパンの良い匂いがしてくる。表に並んでいる20人位のお客さんは、パンを求めているようだ。

横を通り過ぎ、中へと入る。

すると、ミンバ店長が出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。オーナー、カミーラ司祭。一階はパン売り場が盛況なもので、落ち着くまでもうしばらくかかります。二階の応接室で話をしましょう」


二階に案内されている間に、ちらりと見てみたが、ロールパンもクロワッサンも飛ぶように売れていた。

ミンバ店長に聞くと、朝と夕方だけでは足りず、パン職人を雇って2時間おきに焼きたてのパンを売っているそうだ。

パンを求めて入ってくるお客さんには、フルーツで作ったジャムをお勧めしたりしているんだって。


応接室のソファに僕とカミーラ師匠が座り、ニンゲさんとロックさんは後ろに控えた。


「改めて、パンの売れ行きはいいです。それに伴ってイチゴジャムなどの加工品も売れています。希望が多いのはお肉とお野菜を置いて欲しいと言うことですね。生ケーキも安値にしている為、よく売れていきます」


「じゃあ今日は、野菜とお肉を多めと、各種在庫補充をやっていくね。あと魔導アイスクリームメーカーの納品があるんだけど、どこに置いたらいい?」


「では地下の氷室にお願いします。鑑定にマイクをつけますので、少々お待ちください」


ミンバ店長はそう言うと、部屋を出て行った。


それからすぐマイクさんが来て、納品開始。

伝票を見ながら納品していく。

生ケーキやフルーツ、野菜などは、僕が出したものを、マイクさんが持つ時間停止機能付き魔法鞄に入れて仕舞っていった。

異世界市場用のマジックバッグは二つあるので、なるべく多めに仕入れておきたいとマイクさんは語った。


異世界市場ルカート店で一番売れているのは米だという。商人や業者が沢山購入していくそうで、今までで一番多い数を納品する事になった。


僕が納品で商品を出す傍ら、マイクさんは検品をし、マジックバッグに仕舞っていく。その繰り返しだった。

最後に貯肉庫へ牛、羊、豚、鳥の肉を多めに出した。それと卵も忘れずにね。


3時間程で出し終わり、納品が完了した。

応接室へ戻ると、カミーラ師匠は珈琲を飲みながらロールパンとクロワッサンを頂いていた。


「お疲れ様、カッスィー。焼きたてパンを頂いたんだが、カッスィーも食べるよね?」


「はい。珈琲はミルクと砂糖入りでお願いします」


「カッスィー君、お疲れ様! 珈琲のミルクと砂糖入りと、焼きたてロールパンとクロワッサンよ」


珈琲の良い香りとともに現れたのは、ツェーネさんだった。


「パンの販売が一段落したからね。お味のほうはどう?」


そう言われて、僕はロールパンを千切って食べてみた。柔らかく、ミルクの風味が豊かで、とても美味しい。もう一つのクロワッサンも千切って食べて見る。サクサクとした層の食感とバターの風味が堪らなく美味しい。


「両方、とっても美味しいです」


「良かったわ。オーナーに気に入って貰えて。初めはマイクが焼いてたんだけど、このふわふわのロールパンを欲しいお客さんが増えすぎちゃって、パン職人を雇うことになったの。クロワッサンも固定のファンが多いし、大成功だわ」


「ちょっといいかい。両方とも異世界市場らしい不思議なパンだと思う。とても美味しいしね。これはもっと種類を増やさないのかな?」


「異世界市場ではパンは客引きの為の商品なんです。これ以上は増やせませんね」


「なるほどね。いやぁ、他にも異世界の美味しいパンがあるなら食べたいじゃないか。カッスィーは心当たりがないかい?」


そう言われ、僕は首を捻って考えた。


「じゃあ、食パンはどうでしょう? 四角いパンで、柔らかいパンです。そのまま食べてもいいし、サンドイッチにも適しています。作り方はミラノさんに聞かないとわからないけど……」


「良いじゃないか。一種類なら増やせそうじゃないか?」


「良いですね。サンドイッチにして売ってもいい。野菜と肉も入荷したし、やってみるべきかもしれません。作り方は料理人ミラノに打診します。オーナー、他には何かありますか?」


「サンドイッチは、カツサンドが美味しかったよ。簡単なお惣菜パンを置くなら、揚げ芋や唐揚げも持ち帰りで買えるようになったらいいと思うんだけど、どう?」


僕が水を向けると、ツェーネさんはなるほど、と小さく頷いた。


「これまで以上に繁盛するやもしれません。やってみましょう。特に唐揚げは需要が高そうです。こちらもレシピは料理人ミラノから買い取りましょう」


「うん、よろしく」


納品が済んだので、異世界市場を後にする。


「ギルドカードにオーナーの取り分を入金してあるので、見ておいて下さいね。食パンと唐揚げの件はしっかり進めておきます」


ミンバ店長はそう言い、店の中へ戻っていった。

お読みいただき、ありがとうございました。


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