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帰宅

翌朝、朝食後。宿を引き払い、宿の前に集まっていた。仕入れもしたいが、まずはデザートのお店だ。

ルビアとテッサに行くか聞いてみると、喜んで行く、という返事を貰った。エドさんは後ろから着いてきてくれるとのことだ。

僕とガイは地図を頼りに、北通りのお店へ向かった。


「ここだな」


「でけぇ……」


該当のお店はとっても大きく、そして高そうだった。意を決して中に入る。

中はとても広く、冒険者の姿もチラホラ見えた。少し安心する。


「いらっしゃいませ。何名様ですか」


「6名でお願いします」


僕達は広いテーブルに案内され、メニューを渡された。

注文が決まり、店員さんを呼んで注文をする。

待つこと暫し、料理が運ばれてきた。


僕とテッサが頼んだのは、フルーツサンドである。

柔らかな白パンに、甘い生クリームとフルーツがサンドされていて、とても美味しそうだ。


ぱくりと食べると、柔らかなパンの食感と生クリーム、そして甘いフルーツの美味しさが口いっぱいに広がる。瑞々しいフルーツと生クリームがなめらかでとても美味しかった。


「うーんっ、美味しい!」


ルビアが頼んだのは、フレンチトーストだ。

バターの香りが鼻腔をくすぐる。仕上げにキラービーの蜂蜜をかけると、より甘く美味で、その甘美な美味しさにルビアは身体を震わせていた。


ガイとイクト、そしてエドさんはフルーツたっぷりのクレープを頼んだ。


「すげぇうまい」


新鮮なフルーツが生クリームと合っていて、とても美味しいとのことだった。


食後のお茶を飲みつつ、これからの相談をする。


「僕は、仕入れに行きたい」


「じゃあ、仕入れが終わったら屋台巡りをしようぜ」


「賛成~っ」


皆の了承を得て、僕は仕入れに行くことになった。


店を出て、市場へ行く。


まずは、火蛙だ。スパイス売り場に行き、火蛙の身とスパイスを購入する。銀貨5枚分購入し、次に行く。


次は、クラーケンだ。一匹丸ごと売っているところを見つけて、3匹買う。凍魔石はなるべく長持ちするものを入れて貰い、金貨7枚だった。


次は、市場で目に付いた水馬の身。これはステーキにしてもいいし、煮込んでも美味しいらしい。金貨2枚を支払った。


次は、雷鳥だ。これは丸ごと二羽買い、金貨3枚支払う。


次は、ミノタウロスだ。ステーキにして美味しい所を、金貨3枚分購入した。


その他細々と気になったものを購入し、皆の待つ市場の入り口へと戻る。


「よし、仕入れは終わったよ。次は屋台巡りをしようか」


「ちょっと早いけど昼飯にしようぜ。じゃあ、まずは肉串な!」


僕等は話し合い、屋台巡りをする事になった。


肉串の焼ける良い匂いがする。

ダンジョン産の猪の肉だそうだ。銅貨5枚を支払った。

口に入れると、肉の旨味が口いっぱいに広がる。

少し塩の効いたお肉は、疲れた身体にピッタリだ。


次の屋台は食事クレープだ。

たくさんの野菜と、ダンジョン産の猪の肉がサンドされており、酸味のあるソースがかかっている。

お肉はちょっと固かったが、味は文句なく美味しかった。


次は蜂蜜とバターのおやつクレープだ。

キラービーの蜂蜜はとても美味しく、ぺろりと食べてしまった。


最後に、皆個別でお土産などを見る。

僕は欲しいものは買ったので、市場の入り口で待機だ。

ガイは食堂に仕入れる食材が他にないか見に行ったが、手頃な値段のものがなく、断念していた。


時間になり、皆で集まる。

そろそろ護衛と迎えが来る頃だということで、僕達は、城門を抜けてトーミ町を後にした。


護衛は、"緋色の鐘"の皆さんだ。

それと、迎えに来てくれたランダさんと無事に合流出来て、安心する。


僕達は馬車に乗り込み、帰路に着いた。


二日後、無事にティティー村に着いた。

エドさんは依頼票にサインし、"緋色の鐘"の皆さんは帰っていった。


到着したのがお昼時だった為、村長宅で皆ご飯を食べていくことになった。


父さんと母さんに帰宅の挨拶をし、ミラノさんにご飯をお願いする。

ミラノさんは快く引き受けてくれた。


食堂へ行き、席に着く。

今日は総勢6名とあって、だいぶ賑やかだ。


そこへ、ミラノさんが料理を運んできた。


今日のメニューは、ビーフシチューだ。

お肉はほろほろとしており、柔らかく肉の旨味たっぷりだ。野菜はデミグラスソースに溶け込んでおり、より一層美味しくなっていた。

バケットは小麦の風味が強く、美味しい。ソースを付けながら完食した。


デザートは、ぜんざいだ。

甘く煮た小豆の上に、焼きたてのお餅が乗っている。

伸びるお餅を楽しみながら、甘い小豆を食べた。


「じゃあ、解散するぞ。お疲れ様」


食後のお茶を飲み、一息ついた後。僕たちはエドさんの号令で解散した。


僕は、キラービークイーンの飴と熊の手と、キラービーの蜂蜜を分配し、皆に配った。持ちきれないクラーケンは、各家まで運んだ。あまりにもクラーケン一匹が大きかったので、テッサとイクトの母エルゥさんは、とても驚いていた。こんなにどうするの、というエルゥさんに、食べきれなかったら買い取ると、ガイが約束していた。

ニネさん夫婦は、大きなクラーケンを持ち帰った所、大喜びだった。

今日から店に出すと言い、大急ぎで仕込みをしていた。ひと皿銀貨3枚で出すとのことである。


クラーケンは美味しいけれど、ティティー村で果たして銀貨3枚のメニューは受け入れられるだろうか。少し心配だった為見ていたが、女将さんが常連客から予約を受け付けていた。ニネさんが、珍しく、美味しいものは必ず売れると言っていた。心配は要らないようである。


ミラノさんに、仕入れの結果を見せた。そこそこ大量になった食材の山に、ニコニコと微笑みながら料理を請け負ってくれたミラノさんは、最高に頼もしく見えた。


自室に戻り、しばらく経つと、おやつの時間だ。

食堂へ行き、席に着く。


運ばれてきたのは、モミジ焼きだった。

カリッとした皮をかじると、中にたっぷりのあんこが入っている。あんこは甘くて、疲れが取れる。とても美味しかった。


部屋に戻り、暫し休憩をする。

ダンジョンは物凄く楽しかった。

しかし、馬車の移動はお尻が痛くなる。それだけはどうしようもなかった。


夕刻になり、夕飯の時間である。

食堂へ行くと、父さんと母さんが席に着いたところだった。

それを見て、僕も席についた。


「さて、晩餐にしよう」


父さんの合図で、前菜が運ばれてきた。


「前菜は、クラーケンで出汁を取った野菜スープです。ゆっくり暖まってください」


ミラノさんの言うとおり、クラーケンはいい出汁が出たようで、スープは物凄く奥深い味がした。うーん、美味しい。暖まるよ。


「メインは本日、2種のステーキです。水打ち熊の手のローストと、水馬のステーキです。ステーキソースも玉ねぎソースと醤油ソースを用意してあります。お好きなほうでお楽しみ下さい」


僕はまず、ソースをかけずに水打ち熊のローストを食べてみる事にした。ナイフを入れると思ったより柔らかく、するりと切れた。一切れ、パクリと食べてみる。肉の旨味が口いっぱいに広がり、噛み締める度に肉の風味が強く香った。クセが強いかと思ったけれど、これぐらいは美味しい範囲だ。ルビアが言っていた通り、赤身肉の塊といった感じ。僕は醤油ソースであっと言う間に平らげた。

次は、水馬のステーキである。これも、まずは何もつけずに食べてみる。ナイフを入れて、驚く。物凄く柔らかい。口に入れると、甘い脂と肉の風味が一緒に来て、あっさりしているのに、かなりジューシーだった。

これは醤油ソースをかけて食べた。付け合わせの甘い人参とコーン、たっぷりのフライドポテトを食べながら、バケットも食べた。


「流石ダンジョン素材ね。両方とても美味しかったわ。特に熊の手は旨味が濃厚で好みよ」


「甲乙つけがたい旨さだった。熊の手は濃厚で、水馬はあっさりしていた。各ソースが美味しさを後押ししてくれていたな」


「僕はやっぱり熊の手かな。自分達で倒したから思い入れがあるんだ。肉の旨味がギュッとしてて、とっても美味しかったよ」


「気に入って頂けて良かった。水馬は次、煮込みにしましょう。さて、デザートはプリンアラモードです。アイスは苺を練り込みました」


デザートが配膳され、プリンアラモードを食べる。

プリンは柔らかく、甘かった。苺アイスを食べ、バナナとキウイを食べた。フルーツが美味しい。オレンジを食べる。ホイップクリームが甘くて美味しかった。


「カッスィー、ダンジョンは楽しかったかい?」


「とっても楽しかった! また行きたい!」


「そうかい。カミーラ司祭から手紙が届いたんだ。もうすぐ到着するとの事だ。それと、お前をダンジョンに連れて行きたいと書かれていた。仕入れの勉強の為、とのことだったがどうだい?」


「勿論行くよ! すっごく楽しみ」


「そうか。では心の準備だけはしておきなさい」


僕はしっかり頷いて、自室に戻った。

旅立ちの時が近付いている。

僕はそれまでに何をすべきだろうか。

後悔だけはしないように、これからの予定を立てた。

お読みいただき、ありがとうございました。


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