初心者ダンジョン地下4F、5F
とうとう4Fにたどり着いた。
階段を下りたあたりにゴブリンが3体いる。
まずは僕とルビアの攻撃だ。
「ファイヤーアロー!」
ルビアの高らかな詠唱を聞きながら、僕は弓を引き絞り、放つ。首に命中。次の獲物に標準を合わせる。ガイが牽制の為剣を振り、イクトとテッサが討ち取っていた。魔石を取り出しながら、エドさんに聞く。
「エドさん、ダンジョンの中のゴブリンは討伐証明を取らないの?」
「ああ、そうか。俺は邪魔になるから捨てちまう方なんだが、常設依頼で微々たる金にはなる。カッスィーのマジックバッグがあるからな。じゃあ右耳を切り取ってくれ」
「はい!」
倒したゴブリンから短剣で右耳を切り取っていく。
「ここ4Fからセーフティエリアがある。そこを目指すから、ついて来い。ガイ、お前が守りの中心だ。数が多いから、突っ込み過ぎないようにな」
「おう!」
ガイは上手くターゲットを取り、僕等に攻撃をさせる。
ルビアは絶好調だ。
3体連続で命中させ、炎の花を咲かせている。
テッサも負けてはいない。
ゴブリンを袈裟斬りにし、返す剣でもう一体討ち取る。
イクトは更に早く、一体を突き刺して絶命させ、そのままもう一体を撫で斬りにする。一閃で2体。
ガイの釣ってくるゴブリンは3体、4体と数が多いが、僕等の殲滅力が高く、あっと言う間に倒すことが出来ていた。
倒した後、討伐証明の切り取りをし、魔石を取り出す。
それを繰り返していた時、ぞくりと鳥肌が立ち、とっさに弓を放った。
弓は首に命中。そしてイクトが首を落とし、事なきを得た。
身長は僕らより少し高い。弓を持っていることから、ゴブリンアーチャーというホブゴブリンだろう。魔石も普通のゴブリンより大きい。
「今のはヒヤッとしたな」
「ぞくりときたよ。ちょっと怖かった」
「恐怖心を忘れないのは良いことだ。他にゴブリンメイジもいる。見つけたらすぐ倒すように。さて、先に進むぞ」
エドさんの号令で先に進む。
敵の数が多いほど、イクトの剣戟は冴え渡って行くようだった。
ゴブリン3体と対峙している時に、ゴブリン4体に見つかる。そして3体を僕等が倒し終えるまでにゴブリン4体はイクトによって絶命しているのだ。
付与のある剣を持っているとはいえ、最早レベルが違うと言えるだろう。
そうこうして、セーフティエリアにたどり着いた。ゴブリンの群れをやっつけるコツも分かってきたし、順調に討伐証明と魔石も貯まっている。
「さて、昼食にしよう。カッスィー、頼む」
「じゃあ、唐揚げ弁当とお水を配るよ。敷き布を敷いたから、皆、座って」
僕も唐揚げ弁当を食べる。かぶりつくと、鳥の油と肉の旨味で口の中が一杯になる。アツアツで、美味しい。
「しかし、カッスィーのスキルはとても有用だな。旅に出るならきっと役に立つことだろう。疲れたときの水分補給に、飯時の出来立ての温かい食事。これは高ランクになっても手に入れるのは難しい。例外は、時間停止機能付き魔法鞄だな。これも持っているのは一握りだ」
「僕がいなかったら、何を食べるんですか?」
「屋台で買った、パンと肉串だな。それもマジックバッグがないと荷物になるから長時間潜れない。食事というより、飢えを満たす為に食べる行動食が多いかな。うまくはないよ」
僕はデザートのキャラメルを出しながら、うまくない行動食よりは、とカロリーなメイトを出した。
「これも行動食に入ると思うけど、そこそこ美味しかったよ。どう?」
「うまいな。カッスィーがいないときはこれを持ってこよう」
「半年後なら、俺がマジックバッグを買えてるだろうし、たっぷりカッスィーから水と食料を仕入れとくよ」
テッサが胸をドン、と叩いて、請け負った。
「さて、次は地下5Fだが、準備はいいか?」
「おう!」
「いい返事だ。途中のゴブリンに気をつけてくれ。この階のボス部屋は上位種は出るがゴブリンだけだ。挑戦してみるか?」
「はい! 俺、頑張ります」
「いいぜ! やってやるよ!」
イクトとガイの力強い返事に、皆も頷いた。
「じゃあ、ボス部屋へ行く。ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジが後方にいるはずだから、真っ先に倒すように。後、数が多いから気をつけてくれ」
僕等はエドさんの後ろをついて進み、途中ゴブリンと戦いながら、ボス部屋に到着した。
誰も人はいない。頷きを一つ、ガイが扉を開け、テッサとイクトが飛び出していく。
ルビアと僕は部屋に入ってすかさず上位種に狙いを定めた。
ゴブリンアーチャーは矢をつがえており、ガイに狙いを定めている。そこに弓を引き絞り、2射、首に命中させた。
他のゴブリンアーチャーは炎で丸焦げになっており、次はゴブリンメイジだ。
ルビアの炎を受けても、まだ息のあったゴブリンメイジのウォーターアローがガイに当たりそうになり、盾で弾かれる。
その隙に弓を引き絞り狙いを定め、打つ。
首に2発当て、他のゴブリンメイジも絶命させていく。
中央に20体ほどいたゴブリンはというと、イクトにザックザックと狩られていた。彼が動くと白刃がきらめき、ゴブリンの首が落ちる。
テッサはイクトの補助に回り、イクトの打ち漏らしを一体一体丁寧に首を落としていった。
そして奥にいたのはゴブリンキングである。
攻撃が思い切り盾に当たった為、ガイが苦悶の表情を浮かべる。
僕の矢が首に刺さり、ルビアの炎がゴブリンキングを包む。
そこにイクトが一閃。首を落とした。
「ガイ、大丈夫か?」
「すげぇバカ力だった、ヒヤッとしたよ」
「この王が首にしていたサファイヤの首飾りが戦利品だ。テッサ、魔石は取り終えたか?」
「ああ」
「討伐証明も切り取ったよ」
「じゃあ、先に進もう。5Fまでもう少しだ」
僕達はエドさんについて、ゴブリンと戦闘をしながら歩いていった。
程なくして、5Fへの階段に到達する。
そこを降りていくと、5Fは見渡す限り森の中だった。
視界が悪く、動きづらい。
しかし、この森では遠慮なく炎を使って良いとのことで、ルビアは眼を輝かせていた。
しばらく進むと、黄色と黒の色彩で、僕等の半分程の背丈の蜂が攻撃してきた。それをガイが受け止め、イクトが一閃する。頭と胴体が離れたキラービーは地に落ちた。コロリと小瓶が落ちる。うん、キラービーの蜂蜜だ。
森の奥は羽音で一杯だ。沢山仕入れる事が出来るだろう。
「ファイヤーアロー!」
何度か魔法を打ち、調子がつかめたのか、焼け焦げたキラービーを踏み越え、ルビアは叫んだ。
「ファイヤーボール!」
紅蓮の炎が視界を焼き、10体ほどのキラービーが燃え焦げて地に落ちた。
「ルビア、凄いじゃないか」
「固まってると当てやすいの。今日は絶好調みたい。まだまだいくよーっ」
ルビアはまた集まってきたキラービーに向かって、魔法を放った。
ぼたり、ぼたりとキラービーが地に落ちる。
そこに煙を抜けてくる個体を、イクトが一閃した。テッサは魔石と蜂蜜拾いである。
「ファイヤーボール!」
一段と集まっている所に、ファイヤーボールが命中した。30体程が焼け焦げて落ち、残りをテッサとイクトが片付ける。弓で仕留めたのは数体だ。
セーフティエリアに着き、水を飲む。
それと、おやつ代わりにキャラメルを配った。
「ルビア、絶好調だな。キラービーの蜂蜜は結構集まったんじゃないか?」
「山ほど集まってるぜ。この調子なら、売るほど集まるかもな」
テッサから受け取った蜂蜜と魔石をマジックバッグに仕舞いながら、僕は違うことを考えていた。
「エドさん、水打ち熊は、この階に出るの?」
「ああ。数は少ないが、キラービーの蜂蜜を主食としている為、肉が美味とされている。普段は人気のある右手だけ持って帰るんだが、マジックバッグがあるなら一体持ち帰っても良いかもな。ボス部屋にもいるが、まず探してみよう」
「はい!」
皆で返事をし、セーフティエリアを出る。
暫くは、キラービーの殲滅戦だ。
ガイの釣ってきたキラービーを、ルビアの炎で焼き尽くす。炎から逃れた個体はイクトとテッサが仕留めた。
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