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もっと狩りたい

冒険者が森から下りてきたのは、空が茜色に染まり、夜のとばりが降りようとしている時だった。

僕と父さんは先触れを受け、村長宅で戦闘の終わった冒険者達を迎え入れた。


「お疲れ様です、トーマスさん。随分ゴブリンは数がいたと見える」


父さんが、Cランクパーティ"明星の風"のリーダー、トーマスさんに話しかける。


「ああ。こちらで確認しているのは352体。討伐証明の切り取りと、死体の焼却処分も済んでいる。上位個体が2体と、幼いながら王の存在も確認した。問題なく討伐済みだが、早期発見出来たことが幸運だったと思う」


「ありがとうございました。食事は食堂でお出しします。振る舞いのスープとカツサンドをどうぞ。それともう遅いので、今夜は宿屋にお泊まり下さい」


「振る舞いをありがたく頂こう。宿屋の手配も感謝する。では、失礼する」


冒険者達はトーマスさんの号令で、食堂へ向かっていった。


こうして、突如として現れたゴブリンという脅威は、冒険者によって討ち取られたのだった。


猟師組も合計100体程倒していたため、総数は約500体となる。

食べられない獲物のくせに、数だけは多い。

それがゴブリンの厄介な所だった。


後日、猟師組の仕留めたゴブリンの討伐証明と魔石を換金し、そこそこの稼ぎとなったようだ。僕とルビアは、倒したゴブリン一体の分として、銅貨2枚ずつ貰った。


「あーあ。私達もダンジョン行きたいね、カッスィー」


「そうだね。今度は地下5Fを目指して見ようか」


そんな事を、僕達は平穏になったうららかな午後、広場に集まって話していた。

もっと狩りたいね、とはルビアの談であったが、初心者ダンジョンにもう一回行きたいのは僕もだった。

家の手伝いで何も出来なかったガイとテッサは言わずもがなである。

今度の目標は地下5F。キラービーを倒し、キラービーの蜂蜜を手に入れるのだ。

しかし、エドさんからストップがかかった。


「地下4Fは上位個体もたまに出るし、2F、3Fと違って多数のゴブリンが出る。今の戦力じゃ5Fにたどり着けない。盾持ちのガイ以外に、長剣の扱い手がいない。戦力不足だ」


「じゃあ、俺が長剣使いになる」


「テッサか。付け焼き刃ではやはり不安が残る。お前の兄のイクトはどうだ? 毎日剣を振っているだろう。イクトとテッサが前衛で攻撃、カッスィーとルビアが後衛で攻撃だ」


それなら、というわけで、僕達はイクトに一緒にダンジョンに行ってくれないか頼みに来た。


「いいよ。引率はエドさんなんだろう? 無茶をしないなら大歓迎だ。しかし、カッスィーはもうすぐ旅に出る頃合いだろう。慌ただしくないか?」


「正直、実感がないんだ。あと一週間で旅に出るとは思えない。でも、準備は済んでるからいつでも発てるんだ」


「そうなんだな。じゃああとは村長の許可を頼む。親父の許可は、俺が取っておくよ」


イクトの快諾を得て、僕は父さんの執務室へ来ていた。ガイ、テッサ、ルビアは、僕の私室で待機だ。


「イクトも一緒に行くのか。引率はエドだな。決して無茶はしないように。良いね?」


「ありがとう、父さん。気をつけて行って来ます!」


喜び勇んで私室へ戻る。


「みんなっ! 許可が貰えたよ。明後日出発だ!」


「やったぁ! 楽しみね」


「俺達、5Fまで行けるかな。キラービー、倒してぇよな」


「俺も長剣、練習しとく」


思ったより早く許可が貰えて、僕達は大喜びだった。

丁度おやつ時だったので、4人で食堂へ行く。


今日のメニューは、ホットケーキだった。

中央には四角いバターが鎮座し、甘いメープルシロップがかけられていた。

生地はふわりと柔らかく、じゅわりとメープルシロップが甘い。


「すげぇうまいけど、キラービーの蜂蜜をかけたいよな」


「それうまそう。いい考えじゃん」


テッサの言い分に、皆が同意する。


「でも、その前にゴブリンだよね。4Fを抜けないと。複数のゴブリンを倒すのは、大人でも手こずるって聞いたよ」


「どうしても無理だったら3Fに戻ろう」


「おう。無理せず行こうぜ」


「じゃあさ、俺が盾で受け止めてる間に後衛で矢が刺さるだろ? それと前衛がさ……」


僕等は食後のお茶を飲みながら、どんなふうに戦うか、フォーメーションを話し合った。


翌日は護衛の依頼を出し、あっと言う間に冒険当日。


護衛は、ルカート町にいた"緋色の鐘"の皆さんが受けてくれた。

僕等は装備を一新し、皮鎧の胸当てと足甲をしっかり身に付けた。

後は、新しい長剣を身に付けたテッサとイクトだ。

テッサは"白銀"、イクトは"曇天"という剣だそうだ。

特にイクトの"曇天"は、自分で打ったもので、水の付与がついており、錆びにくいらしい。

僕も愛用の弓と矢筒で参加だ。


エドさんと僕とルビア、ガイとイクトとテッサに分かれて馬車に乗り込む。


「じゃあ、出発だ!」


リーダーのアグニさんの号令で、馬車が動き出した。

僕達の馬車の御者は盾持ちのメローさんだ。

室内ではリーダーのアグニさんとエドさんが談笑している。


「へえ、ゴブリンの巣が出来てたのか。500近くとなると一気に攻められると困ったことになる。早期発見出来て、良かったな」


「ああ。俺達も胸をなで下ろしているよ」


「それで、カッスィー達は地下4Fのゴブリンか。一体ではなく、複数で行動している個体が多いから、弱いゴブリンとは言っても気を抜かずに頑張れよ」


「上位個体も出るって聞きました」


「ああ。弓と魔法のホブゴブリン、ゴブリンアーチャーと、ゴブリンメイジだな。どっちもそこまで強くないが、見つけたらすぐに倒せ」


「私は、火魔法と弓、どっちがいいかな?」


「命中率の高いほうだな」


ルビアはまず火魔法を試すことに決めたようだ。


途中、一度休憩を挟み、行けるところまで進む。

天気も良いし、明日にはトーミ町につくだろう。


太陽が中天を過ぎ、お昼休憩となった。

僕はみんなにチーズチキンカツ弁当を販売し、休憩所でゆっくりと食べた。

揚げたてのチキンカツは、ガブリと食べると肉の旨味がいっぱいで、中からチーズが出てくる。最高に美味しかった。

すぐ移動する為、デザートはキャラメル。

皆でキャラメルを舐めながら、馬車に乗り込んだ。


日が落ちると、少し肌寒い。

上着をしっかり着込み、マフラーをする。


夕飯は、カレーライスを出した。

ちょっと辛いけれど、肉と野菜がタップリで美味しい。

あっと言う間に食べ終えて、デザートに、チョコレートケーキを出した。

木製の食器をマジックバッグに入れてきたので配膳もスムーズだ。

"緋色の鐘"の皆さんにも喜んで貰えて嬉しかった。


食後は速やかに就寝だ。

皆でテントを建てて、毛布にくるまって寝る。


明日は早い。おやすみなさい。



翌日、朝もやの中、目が覚める。

少し寒いが、水魔法使いのタリさんに水を出して貰い、顔を洗った。


朝食は、ハンバーグ弁当だ。焼き立てアツアツのハンバーグは肉汁がタップリで、肉の旨味がガツンと来る。ソースとご飯の相性も良く、あっと言う間に完食してしまった。


デザートは、苺のショートケーキを出した。

柔らかなスポンジと生クリームが調和していて、とても美味しかった。


「じゃあ、出発だ!」


アグニさんの号令で、馬車に乗り込み、僕達は出発した。



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