下準備
翌日、朝食後早々、僕はガイに詰め寄られていた。
「キャロ師匠の歓迎会があったんだって?!」
僕の私室に通されたガイは、元気いっぱいそう尋ねた。
僕は一昨日の様子を思い返しつつ、頷きを返す。
「うん、貴族のお家のほうでね、一昨日お茶会があったんだ」
「じゃあ、うちの村では、まだやってないよな?」
「うん、もしかして……」
「うちの食堂を使って、歓迎会をやろうって、父ちゃんが言ってた。やっていいだろう?」
「食堂を使っていいの? じゃあ、父さんに聞いてくる。予算を貰って、歓迎会を開こう」
僕はガイを置いて、父さんの執務室へ向かった。
トントン
許しを得て、扉を開ける。
「父さん、カッスィーです。聞きたいことがあるんだけど……」
珈琲の良い香りがする。父さんは、カップを置いて、こちらへ向き直った。
「どうしたんだい、カッスィー」
「ガイの発案で、キャロ師匠の歓迎会を村でもやろうって話なんだ。場所は食堂。ニネさんも了解しているみたいなんだけど、やっていい?」
「ああ、ニネといつにするかと悩んでいたんだ。歓迎会に必要なものはわかるかい?」
「予算とメニューとご馳走! あとは招待客と、来賓のキャロ師匠、かな」
「それと招待状だな。キャロ師匠に渡す分を、頼めるかい?」
「うん! 皆で作るよ」
「じゃあ、メニューと招待状を頼むよ。皆でお祝いしよう。予算は村長宅が出す」
「やったぁ! じゃあ、戻るね」
僕はうきうきと私室へ戻り、ガイに概要を伝えた。
「メニューは何が良いかな。おっと、ルビアとテッサを呼んで来ようぜ。あいつ等をのけ者にすると、後が怖いからな」
「違いない。じゃあテッサを呼んでくるね」
「じゃあ、俺はルビアだな。行ってくる」
そんなわけで、僕らは4人揃ってメニューに頭を悩ませる事になった。
今日も紫のロングヘアをツインテールにキッチリ結んだルビアは、弟の赤ちゃんの可愛らしさにメロメロだ。
「お母さんのお乳を飲むとね、すぐ眠っちゃうの。近付くと、ミルクの匂いがするのよ。お父さんもメレに夢中で良くあやしてるのよ」
「赤ちゃん、メレって名前なんだね。もう少し大きくなったら、会いたいな」
「みっつ向こうの向かいの家でも、妊婦がいるって聞いたぜ。今年生まれたら、メレと同い年だな。俺達みたく、仲良くなれるといいな」
ガイの言葉に、僕達は微笑んでいた。
この4人は小さい頃から一緒で、小さな喧嘩はあっても、ずっと仲良しだ。
「うん。ありがとう。じゃあ、メニュー決めしようか。テッサは貴族の歓迎会に行ってきたんでしょう。メニュー、被っちゃうと思う?」
「それがさ。魚のムニエルが出たんだ。デザートは、アイスクリームだったし、うちの食堂とは被らないと思う。どれを選んでも大丈夫だ」
「よーし、じゃあまずは唐揚げだね!」
「歓迎会だもの。豪華に行きましょう。ステーキなんてどう?」
「俺はカレーもいいと思う」
「俺はチキンソテーかな。豪華に、足一本ずつ焼いてさ、かじりついて食うの、良くね?」
「うまそう……腹減ってくるな」
「今日はお昼、うちで食べていきなよ。最後のクラーケンで野菜炒めだって」
キラーン。
みんなの目が強く光った気がした。
4人参席、了解です。
「クラーケンか。そういや父ちゃんが買ったクラーケンの切り身があったろ。イカフライにしたんだけど、あれは最高だったぜ。売るほど欲しいって嘆いてた」
「次に帰ってくるときは、クラーケンを丸ごと一匹仕入れてくるよ。楽しみにしてて」
「おう。歓迎会のメニューはさ、全部作って、好きなのを選んで食べればいいんじゃねぇの。他にも何個か作ろうぜ」
「じゃあ、ミックスフライと、チキン南蛮」
「野菜たっぷりのサンドイッチ」
他にもオムライスやお米料理を用意する事になった。
さて、デザートのメニュー決めである。
「そういやさ、モミジ焼きの話したじゃん。作ってみたらうまかったからさ、今持ち帰り販売やってんの。けっこう売れてるんだぜ。だから屋台作って、俺が焼いて売るんだ。レシピ料をカッスィーに払うって、父ちゃん言ってたぜ」
「うん。ありがとう。有り難く頂きます。じゃあ、デザートのメニュー決めをしようか」
「ぜんざいと、アイスクリームたっぷりのあんみつと、きな粉餅!」
「それ、ルビアが食べたいんだろ」
「お餅のデザートで統一するのもアリだね。じゃああんころ餅と、磯部焼き!」
「餅入りの抹茶パフェ。うまそうだ」
「でも、カッスィーがいる間にフルーツ食べておきたいよな。特にマンゴー」
テッサの言葉に、皆がうなずく。
「フルーツのコーナーを作って、好きに食べれるようにしよう。メロンと桃、苺、パイナップル。あとマンゴー高いけど、1個食べちゃおう」
「美味しそう。楽しみだね」
「メニューはだいたい決まったな。じゃあ、招待状を作ろうぜ。ルビアそれ、花の絵だろ?」
絵筆を手にしていたルビアは、ニッコリと微笑んだ。
「そう!この紙に招待状を書いて! ランワの赤い花、うまく描けたでしょう。このあいてる所に文字を書けば、完璧だよ」
「キャロ師匠へ
ティティー村に来てくれて
テッサの師匠になってくれてありがとう
つきましては、明後日歓迎会を開きます
食堂までお越しください
テッサ、ルビア、ガイ、カッスィー」
「テッサ、うまく書けたじゃん。じゃあ、その招待状をキャロ師匠に渡しといて貰えるか?」
「おう。わかったぜ」
「じゃあ、お昼時だから食堂へ移動しよう」
みんなお腹が減っていたのか、速やかに移動した。
食堂に入り、席に着く。
左から、カッスィー、ガイ、ルビア、テッサ。
「じゃあ、昼食を始めよう」
僕の合図で、ミラノさんが料理を配膳してくれる。
今日のメニューは、クラーケンの切り身入り野菜炒め、ご飯とクラーケンの味噌汁である。
みんな、最後のクラーケンと聞いて心して味わった。
クラーケンの切り身は小さいが十二分に出汁が出ており、野菜炒めが格別の味わいだった。
胡椒強めの味付けがご飯に良く合っていて、出汁のうまいクラーケンの味噌汁もあっと言う間に食べ終えてしまった。
食後のお茶を飲みながら、デザートを待つ。
今日のデザートは、餅入りの抹茶パフェだ。
餅は食べやすいように小さく丸めて入れてある。
底にはヨーグルト、コーンフレーク、お餅とあんこ、抹茶アイス。そして生クリームだ。
「お餅があんこと絡んで美味しいね」
「ちょっと苦い抹茶アイスと甘いあんこが合っててうまい」
「餅が柔らかくてうめぇ」
「お餅とあんこ、抹茶アイスが合ってるね」
皆、大満足のデザートだった。
「じゃあ、明後日は食堂で12時からだね。歓迎会、楽しみにしているよ」
「ああ、楽しみだな。テッサ、師匠に宜しくな」
「テッサ、またね」
「ああ。また明後日集まろう。じゃあな」
そうして僕らは解散し、テッサは招待状を持って帰って行った。
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