表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/105

マイクとツェーネ

翌朝、目覚めて顔を洗う。

暖かなお湯で顔を洗っていると、テッサが起き出してきた。

テッサも同じようにお湯で顔を洗い、うがいをする。

身支度が済んで、テッサのほっぺが赤い事に気付く。今日も外はとても寒いし、風邪を引いたのだろうか。


「テッサ、ほっぺたが真っ赤だよ。熱があるかも」


「熱ぐらいあってもおかしくねぇよ。俺に魔具職人の師匠がつくんだぜ。ずーっと夢見て来たんだ、夢なら覚めないで欲しい」


昨夜も随分興奮していたし、なかなか寝付けない様子だった。

それだけ、魔具職人の師匠を紹介して貰える事が嬉しかったんだろう。


テッサの額に手をやると、うん、熱い。

僕はテッサをベッドに寝かせて人を呼んだ。


「おや、熱がありますね」


「わりぃ、興奮し過ぎた」


「食事は取れそうですか?」


「ああ、食べる」


「ではこの部屋へ運ばせます。後は熱冷ましを飲んで、寝ているように。カッスィー君は食堂へ。テッサには侍女を付けるので安心なさい」


「わかりました」


僕は返事をして食堂へ向かった。


中に入り、着席して父さんと母さんにテッサの不調を伝える。

侍女がついてくれる事を伝えると、ほっとしていた。


カッペラード様が着席し、横にシェリー様、カミーラ師匠が揃った。


「では、朝食にしよう」


カッペラード様の合図で、朝食が運ばれて来る。


メニューは、ベーコンエッグとサラダにバケット、野菜スープだ。


卵は、僕の希望により半熟。

もともと卵って固焼きにするのが普通だったのに、日本食と呼ばれる和食を食べるようになってから、半熟の美味しさに僕は心奪われている。

ティティー村では宿屋のゲンさんがスキル【光魔法】持ちで、卵には全て浄化をかけて貰っている。

カッペラード様に水を向けると、やはり半熟が好みで、卵には専属で雇った光魔法使いが浄化をかけているそうだ。


「ティティー村は美味しい食事が有名になりつつある。ベン村長、入植希望者もいるんじゃないか?」


「はい。実は嬉しいことに数件話は頂いています。ただ家は建てなくちゃならないんで、春を待ってから開拓し、大工を呼ぶ予定です」


「では家を建てる予算はハイド男爵家が負担しよう。大工は建築ギルドへ依頼し、春になったらティティー村へ向かうように手配する」


「ありがとうございます」


「うちで出している和食の店も、領都であるハイド町に出店する事になった。和食は人気でね、このルカート町にも入植希望者がいる。うちで受け入れ切れればいいが、ティティー村へ話が向かう事があるかもしれない。家は多めに建てて置こう」


「はい、わかりました」


「私からは以上だが、他にあるか?」


カッペラード様がそう聞くと、カミーラ師匠が手を挙げた。


「では、私から。ベンさん、フアラさん。昨日の契約書は読んで貰えただろうか」


師匠の言葉に、返事をしたのは母さんだった。


「ええ、読みました。オーナーのカッスィーに毎月金貨15枚支給され、それを従業員の給料とする。従業員はミンバ、マイク、ツェーネ、ハンス。給金は月金貨3枚、とありましたが、カミーラさんの給金はどうしたらいいんでしょうか」


「私は教会の方でこの件の給金を得ているからね、いらないんだ。その為の特別顧問さ。私の名前は、シシュタイン家の後ろ盾だと思ってくれ」


「わかりました。カッスィーもそれでいい?」


「うん。サインするね」


僕は従僕に羽ペンを借り、書類にサインした。

それをカミーラ師匠に渡した。


「うん、これで良し。じゃあ、この明細の分の食材を倉庫に出して貰えるかい?」


「わかりました。テッサが病欠なのですが、鑑定係はどうしたら良いですか」


「では丁度良い。マイクとツェーネを呼ぼう。今日の鑑定はマイクの担当だ」


カッペラード様が指示を出して、二人を呼ぶ。

ややあって、ノックの音と共に二人の男女が顔を出した。

男性は、ややくせっ毛の茶色の髪に茶色の目。身体はガッチリとしている。

目が合うとニッコリと微笑んでくれて、好感触だ。

次に、女性は艶やかな青のロングヘアに、茶色い目。スラリとした体系だ。


「マイク、ツェーネ。こっちの子供が異世界市場のオーナー。カッスィー君だ。そして、特別顧問のカミーラ司祭だ」


「カミーラだ。宜しく頼むよ」


「カッスィーです。よろしくお願いします」


僕達が挨拶をすると、二人も自己紹介をしてくれた。


「領主様が後見人をしていると聞いているよ。俺はマイク。23才。スキル【鑑定】持ちで、鑑定師をしている。荷物のチェックは任せてくれ」


「私はツェーネ。23才。経理を担当しています。異世界市場では接客も対応致します」


「僕は春になったら旅に出ちゃうんだけど、店にも顔を出すので宜しくです」


「ええ、聞いていますよ。沢山の顧客を獲得して来て下さいね」


そう言って、ツェーネさんもにこやかに笑ってくれた。


自己紹介が終わり、僕は納品だ。

マイクさんと一緒に倉庫まで歩く。


これは異世界市場の分なので、本来このタウンハウスの倉庫は使えないのだが、店は未だ建て替え中の為、カッペラード様が安値で貸し出してくれた。


まず米から出していく。マイクさんの鑑定もバッチリで、端から積み上げていく。

積んで積んで、お米が終わったら、次は醤油だ。

それを繰り返し、3時間程で全部出し終えた。


「オーナー、本当に虚空からものが出てくるんだな。目を疑ったぜ」


あっ。鞄から出す振りをするのを忘れてた。

気をつけなきゃいけないね。


「普段は鞄から出してるんだ。うっかりしちゃったよ」


「確かに目立つから外では気をつけた方がいいな。オーナーは転生者ではないんだろう?」


「うん。違うね。賢者様も関係ないよ」


「見たら、賢者様の再来かと思うものな。鞄のフェイクを入れて正解だと思うぜ」


「そっか。ありがとう。いつも間違われて大変なんだ」


そりゃあそうだろうとマイクさんは言う。

ただでさえレアスキル持ちは重宝されるのに、僕のスキルは唯一無二。出会えたら素晴らしいとされているスキル【物々交換】と並ぶだろう。何しろ見た目が似ている。

賢者様のスキルが虚空からものを出す事はかなり有名だ。

だから、目立ちたくないなら偽装するしかない。


「じゃあ、見つからないように頑張るよ」


「それがいいだろうな」


現実的には教会にあっさり見つかって、教会から転生者支援を頼まれている状態ではあるが、僕を狙う権力者は他にもたくさんいるのだそうだ。


さて、お昼の時間になり、マイクさんと別れて食堂へ行った。

上座にカッペラード様、シェリー様、カミーラ師匠。

こちら側に父さん、母さん、テッサ、僕だ。

テッサが復活していたので、大丈夫か聞く。

熱冷ましを飲んで寝ていたら治ったそうだ。顔色も良さそうだし、良かった。


「では、昼食にしよう」


カッペラード様の合図で、昼食が始まる。

今日のメニューは、メンチカツ定食。ご飯は炊き込みご飯で、味噌汁は豚汁だ。


具材たっぷりの豚汁をすすり、ご飯を食べる。

メンチカツを、箸で切り分け、一口ぱくり。

口いっぱいにお肉と美味しい油が広がり、濃い味付けのソースでご飯が進む。


あっと言う間に食べ終わり、次はデザートだ。

デザートは、みたらし団子。


串に3つずつ刺さったお団子を、頭から食べていく。お餅はモチモチで、甘じょっぱいタレがとても美味しい。


食後のお茶を頂いて、次の納品日を確認する。

次は3週間後に決まり、解散となった。


カミーラ師匠も王都へ向かう為、ここでお別れだ。


「今後とも、どうぞ宜しくお願いします」


そう言って、父さんと母さんが頭を下げた。


「ああ。任せてくれ。カッスィー、異世界市場の王都支店の準備を進めてくるからね。じゃあまた」


僕も頭を下げて見送った。


その後僕達はティティー村に帰り、平穏な日々を過ごしていた。

そんな僕達をびっくりさせたのは、やはり僕のスキルだった。

お読みいただき、ありがとうございました。


もし面白い! 応援してるよ! と思ったら、


↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ