レベルアップとマグロ
まず、カッペラード様のモンブランケーキが運ばれてきた。
次に、シェリー様の特大パフェ。やはりアイスは5段重ねで、色とりどりのアイスクリームが細長い器にこんもりと盛られたモンブランパフェだった。
僕たちにもモンブランケーキが配膳され、フォークで一口。
「マロンクリームが甘くて美味しい」
「中のスポンジがホイップクリームと合ってる」
「絶妙な甘さだね。美味しいよ」
「本当は10段でもいいのだけれど、仕方ないわね。どのアイスクリームも美味しいわ」
シェリー様を見ているとちょっと寒くなっちゃう。
温かな紅茶を飲みつつ、暖を取る僕でした。
昼食後、母さんから預かった宝石を渡す。
カッペラード様は明細を作ってくれるとのことで、僕とテッサは納品に倉庫に来ていた。
「アイスの納品は今日と明日に分けていいって。良かったな」
「そうだね。この間はおやつを食べ損ねて寝ちゃったし、考慮してくれたんだろうね」
「まずはカレールゥからだ。頑張って行こうぜ」
「おう!」
カレールゥを出し終わった後あたりだろうか。
聞いたことのある音が聞こえた。
リリン♪
【レベルアップ!】
【スキル ネットスーパーは進化しました】
【テナントを選んで下さい】
【宝飾店 or 生鮮食品店】
「テッサ、レベルアップしちゃったみたい」
「今度は何が出た?」
「宝飾店か生鮮食品店」
「そりゃあいい。魚が手に入るじゃねぇか」
「やっぱりそう思う? じゃあ生鮮食品店にするね」
僕は生鮮食品店に指を合わせて押した。
そうすると、ケーキ屋のように肉、魚、野菜と、いろんなものが選べるようになっていた。
どうしよう、豚丸ごと一頭っていうのもあったよ。ミラノさんならおいしく料理してくれそうだよね。
レベルアップの報告がてら、休憩をしに客室に戻ると、ノックの音がした。
「はい」
「カッペラード様がお呼びです」
「今行きます」
僕は返事をして、テッサと共に応接室へ向かった。
ノックをして、中に入る。
「お呼びでしょうか、カッペラード様」
「仕事中すまないね、何かあったのかい?」
「実は、レベルアップしたんです。新しいテナントは生鮮食品店です」
「そうかい。では今まで入手出来なかった食材が手に入るようになったということかな?」
「主に魚類になると思いますが、新しく購入出来るようになった食材が増えました」
「それは良かった。このあたりで魚はなかなか手に入らないからね。早速、キジとミラノのいる厨房へ魚を届けてくれるかい?」
「かしこまりました」
「よろしく頼むよ。ではまた後で」
僕はカッペラード様のお願いを快諾し、テッサとふたりで厨房へ向かった。
「ミラノさん、キジさん、お魚が手に入りました」
「そりゃあいい。例のスキルだろう? 生で食べられる魚は入荷してるか?」
「テッサ、なんていう魚?」
「マグロ。でかい魚だと思うけど、あるか?」
「あるよー。一匹まるごとで。しかも値段が……金貨200枚!? どうしよう」
「それでいいですよ。買ってみなければわかりませんから。お金は従僕から受け取ってください」
「キジさん。わかりました。じゃあ、ここに出しますね」
ドーン。
僕の3倍くらいありそうなお魚が虚空より現れて、厨房の控え室へ落ちた。
「こりゃあ捌き甲斐のありそうな魚だな。テッサ、解説頼む」
「これは海にいるマグロって魚で、生食出来る。品質も良い」
「わかった。やってみる!」
「カッスィー。マグロ丼を出してくれ。参考になると思う」
「わかった。ここに置きますね。僕は納品に戻ります」
「ああ。ありがとう」
大きな魚に圧倒されたけれど、ミラノさんとキジさんならば、美味しい料理にしてくれる。そう信じられるんだ。
テッサと一緒に戻ってきて、納品の続き。
ホットケーキミックスから始まって、珈琲、お酒、各種食材。
それらは2時間程で出し終わる事が出来た。
次はアイスクリームだ、と思った矢先に3の鐘が鳴った。
おやつの時間なので、食堂へ移動する。
中に入ると、カッペラード様とシェリー様が待っていた。
「お疲れ様、アイスクリームちゃん達」
「お疲れ様、休憩にしよう」
席に着くと、あんころ餅が配膳された。
ころんとしたお餅をこしあんが包んでいてとっても美味しそうだ。
「これはミラノから買い取ったレシピのおやつなんだ。お餅の普及を頑張っているそうだね」
「はい。まだ食堂のメニューに入ってないんですけど、とっても美味しいです」
「うちとしてももち米の買い付けは勿論させて貰う。うちの喫茶店でメニューに入れたいんだが、おすすめはあるかい?」
僕は少し考えて、この間みんなで考えたお餅普及の為のメニューを言う事にした。
「じゃあ、ぜんざいはどうでしょう。煮た小豆の上に焼いたお餅が乗ったスイーツです」
「俺は磯部巻きがおすすめだ。餅を焼いて醤油をつけて海苔で巻いた食事だ」
「両方美味しそうだね。ありがとう、買わせて貰うよ」
それまで自分の5段盛りチョコレートパフェを食べていたシェリー様は、一息ついたのか、僕たちへ向き直った。
「アイスクリームの新しい話はない?」
「カキ氷という、氷を削ってシロップをかけて食べるスイーツを最近食べました」
「なぁにそれ。気になるわ。私もレシピを買わせて貰うわね」
「ありがとうございます」
「それは私も気になるね。それは勿論デコレーションも出来るんだろう?」
「はい。ただ冬は寒いので身体が冷えてしまうかもしれません。後、急いで食べると頭がキーンとして驚くと思います」
「わかっていればやりようはあるよ。ありがとう。レシピを買わせて貰うね」
「カキ氷に必要な機械はどうしますか? うちは親父が作ったけど、設計図はレシピにつけたって聞いてます」
「設計図を買わせて貰うよ。親父さんに宜しくね」
お餅の普及はカッペラード様の領主館でも行うそうだ。
僕とテッサはつきたてのお餅の美味しさをアピールしながら、餅つき大会の事も勧めておいた。
領主様がしている事なら、ティティー村でも実現しやすいだろうと思ったからだ。
もち米の追加注文を受けながら、カッスィーはティティー村にお祭りが増えることを楽しみにしていた。
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