表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/105

5段はちょっと

5段盛りのアイスクリームをパクパク平らげていくシェリー様を見ながら、一応僕は他の人たちを見てみた。メニューはプリンアラモードで、僕と同じでアイスも一個。芸術的なフルーツの飾り切りが美しい一品である。


やっぱり、5段盛りのアイスクリームのプリンパフェは、シェリー様だけの特別メニューみたい。


「5段はちょっと、食べすぎだよね」


僕は紅茶を飲みつつ、プリンアラモードを頂いた。

プリンと生クリームがマッチしていて、震える程美味しい。それと、りんごの果肉の混ざったアイスクリームが乗っている。りんごの酸味とアイスの甘さが合わさって、すっきり爽やかな美味しさが広がった。


「りんごアイス美味しい」


「紅茶と合ってるな」


ああ美味しかった。完食して食後のお茶を飲んでいると、シェリー様と目が合った。どうやらとっくに食べ終えていたようだ。


「時にあなた。お弁当をスキルで出すそうね。何かスタミナが付くようなお弁当を出してくれない? 私のアイスを運ばせる部下達に、差し入れをしておきたいの。出来れば珍しくて暖かいものが良いわ」


「僕の鑑定師に相談してもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


「どう思う? テッサ」


「じゃあ、うな重弁当が良いんじゃねぇかな。値段は高くても構わないですか?」


「ええ。カッスィー、おいくら?」


「カッスィー、国産のほうだ。そっちのが高いが美味い」


「では一つ銀貨4枚です」


「買うわ。とりあえず50個程出してくれる? それで、どんなお弁当なの?」


シェリー様は金貨の詰まった袋をドンと出しつつ、身を乗り出して聞いてくる。


「うなぎという魚を蒲焼きにして、特製のソースで味付けした料理です。うなぎはスタミナが付くと言われているから、選びました」


「そう。運んで頂戴」


シェリー様の合図で、従僕がうな重弁当を運び出していく。

別室にいるシェリー様の部下の方達に届けるのだそうだ。

テッサがお茶は緑茶が合うと思う、と助言している。


「ふうん。カッスィーは出てくるものがいまいちわからないんじゃなくて?」


「はい。僕は鑑定師のテッサ頼りです」


「じゃあ、せっかくのお弁当を出すスキルも魅力が半減してしまうわね」


「その通りなんです。出したことがあるものはある程度わかるようになるので、日々勉強しています」


そう。ミラノさんに毎日1個づつ出してるのも、自分のスキル【ネットスーパー】の勉強の為でもあるんだよね。

するとテッサが、席を立って言い募った。


「俺は少なくとも王立学園を卒業するまでは、ずっとカッスィーの専属鑑定師をやります。それまでにはカッスィーも独り立ち出来るくらいに知識を覚えるだろうから、問題ありません。俺も一生懸命教えます!」


「……そう。ならいいわ。卒業後はハイド家とアフガンズ家で働いて貰うんだから、しっかりしてよね」


「はい。精進します」


「今、いいだろうか? カッスィー君、商人の師匠だけれど、君には必要がない。なぜならスキルで仕入れが出来てしまうからなんだ。そんな商人は聞いたことも見たこともない。君以外はね。だから、必要なことは王立学園で学びなさい。勿論、良い人材がいたら師匠につく事も考える。あとはテッサと勉強しなさい」


「はい、わかりました。ありがとうございます、カッペラード様」


「ベンさんとフアラさんも、それで宜しいですか?」


「はい。息子を、宜しくお願い致します」


「私からも、どうぞよろしくお願い致します」


父さんと母さんが頭を下げたので、慌てて僕とテッサも倣って頭を下げた。


コンコン


「どうぞ」


入ってきたのは先程お弁当を運んでいった従僕だった。


「テリア、どうだった?」


「はい。うな重弁当は大変皆に好評でございます。魚の身はふわりと厚く、特製のソースが甘やかで大変おいしゅうございました。出来立てで暖かく、見たことのない料理と言うことで、部下達は大変喜んでおりましたよ」


「それは良かったわ。うちの人間は珍しいものに目がないの。よくやったわね、カッスィー、テッサ。次も宜しくね」


「はい。頑張ります」


「お任せ下さい」


「じゃあ、次はまたひと月後だね。今日はゆっくり休んでくれ」


カッペラード様の号令で解散となった。


カッスィー達が客室で寛いでいる頃、警備室へ招かざる客がまたひとり、到着した。


ドサリ。

意識を失っている男の風貌は、どこにでもいるような平凡な顔つきで、特徴がない。

持ち物も特になく、泥棒にしては小綺麗な格好をしている。


「また、商人か」


捕まえてきた騎士はそうひとりごちた。


しかし誰であれ、城壁をよじり登り、私有地に不法侵入を果たす輩は賊である。

いずれ罰金を支払って釈放されるとしても、それまでは牢屋行きだ。


カッペラードは報告を聞き、またか、と思った。

このタウンハウスは取引用の別邸だが、本邸にもこの手の輩は入り込んでくる。

無論捕まえて牢屋行きなのだが、ただの泥棒ではなく、最近は商人が多い。しかも、大抵が貴族の次男か三男だ。

後に取り調べを行うと、供述自体は速やかに得られる。

彼らはカレールゥや珈琲、または質の良い酒の仕入先を探りに来ているのだ。


仕入れ元の独占を咎める手紙が届いたこともある。

それもあって、アフガンズ家と手を組んだ。

今まではハイド家からお伺いを立てた際、捕まった子息の解放を望んで金貨の山で手打ちにしてきた。

しかし公爵家にも縁持つアフガンズ家と連名であったなら、息子を切り捨てる家も出てくるだろう。


「しかし、また数が増えそうだな」


アフガンズ家が大々的なパーティーでアイスクリームを御披露目したから、アイスクリーム目当ての泥棒も増えそうだ。


カッペラードは警備の増員を視野に入れながら、ため息をついた。


「本当は、良さそうな商人がいたらカッスィー君の師匠になってあげて欲しかったんだ。しかし見つからないばかりか、泥棒の商人ばっかりだ。これでは悪影響を与えてしまいかねない。カッスィー君には、秘密だね」


まだ幼い子供であるという噂は消してある。

後はどんな手が打てるだろうかと、カッペラードはペンを手に取った。



翌日、少し霧雨が降る中、カッスィー達は帰路についた。

ティティー村に到着したのは、お昼時だった為、みんなの分のお弁当を出すことになった。


僕が出したお弁当は、幕の内弁当。

唐揚げと海老フライと煮物。それと天ぷらが入っている。ご飯は俵型に小さく丸められているものが並んでおり、上からごま塩がかけられていた。


「天ぷらのアマイモがうまい」


「海老フライも海老がプリプリしてて美味しいわ」


「唐揚げも揚げたてで美味しい」


「煮物も味がじっくり染みててうまい」


父さんと母さんも気に入ってくれて良かった。

テッサは煮物をしみじみと食べている。

煮物のレンコンや人参って美味しいよね。僕も好き。

ミラノさんは……。


「出汁巻き卵もうまいな」


と言って、ご飯をかっこんで食べていた。

彩りが綺麗なのが気に入ったんだって。

さて、次はデザートだ。


お読みいただき、ありがとうございました。


もし面白い! 応援してるよ! と思ったら、


↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ