つい押してしまった
翌日、厨房の控え室にて。
「今日のお弁当はチーズハンバーグ弁当だよ」
「わかりました、坊ちゃん。今日のもうまそうですね」
ミラノさんはチーズハンバーグを食べると、満足そうに胸を叩いた。
僕は応えるように頷きを返し、スキル【ネットスーパー】で材料を購入し、並べていく。
「うん、宜しく。材料はこれね」
「じゃあ、昼食に出します。おやつの時間は、昨日聞いたとおり4人分用意します」
「3時にみんなが来るから、お願いね」
「お任せ下さい」
これで昼食のオーダーは終わり。
カッスィーはテッサを呼んで自室に引きこもる。
実は、結構落ち込んでいた。
なぜなら、朝のメッセージをよく検分しないまま、Yesを押してしまったからだ。
目が覚めた後、スキル【ネットスーパー】を起動すると、こんなメッセージが浮かんでいた。
【ログインボーナス・8日目】
【緑茶を手に入れました】
【ガチャ回数券が5枚あります】
【1回ガチャを回しますか? Yes or No】
【砂時計を獲得しました】
【砂時計を倒しますか? Yes or No】
ここで新しい内容は砂時計だ。
倒しますか? と書かれていて、YesかNoかを選べるようになっている。
僕はテッサが来るのを待って、どうするかを相談するつもりだったのに、うっかりYesを押して砂時計を倒してしまった。ちなみに、砂時計に指を合わせても無反応だった。
砂時計が倒れて、砂が落ちきるまで待った後、絵が消えて【ガチャ回数券を3枚手に入れました】というメッセージが出て、最終的にこんな表示に落ち着いた。
【ログインボーナス・8日目】
【緑茶を手に入れました】
【ガチャ回数券が8枚あります】
【1回ガチャを回しますか? Yes or No】
緑茶を受け取り、Noを押してメッセージを消した僕は、砂時計を倒さない方が良かったんじゃないかとひとしきり悶絶することになった。
もしかしたらガチャ回数券のように、貯めておいた方が良いものである可能性を考えたからだ。
テッサにその旨をよくよく説明すると、砂時計は倒して良かったんじゃないか、という話になった。
どちらにせよやってみなければわからないのだからその行動は正解だ、と言っていた。
ただ砂時計が消えるまで30秒ほどかかったため、急いでいるときは不向きだろうとのことだった。
そして、もし毎日砂時計が出ても、時間が許す限り砂時計を倒すべきだろう、というのがテッサの案だった。
僕はそこそこ復活し、次はNoを押してみて良い? と聞くと、やってみるのも良いと思う、とのことだった。
僕はメモしておいたメッセージをかき集めて、父さんに報告に行った。
「今日は事後報告になってごめんなさい。ついYesを押してしまいました」
「危険がないならいいんだよ。ただ、せっかくスキル【鑑定】のテッサがいるんだ。初めてのメッセージの時はテッサにも相談しなさい」
「はい、そうします」
テッサは砂時計というアイテムを、時間経過によるボーナスアイテムだと思っている。それはスキル【鑑定】ではなく、前世知識によるものだったが、あえて誤解をそのままにしていた。
「テッサ、宜しく頼んだよ」
「はい。出来る限り力になります」
退室の礼をして自室に戻る。
テッサは家に帰るそうだ。
「テッサ、あのナイフ出来た?」
あのナイフとは、ダンジョンで手に入れた鉱石でナイフを作ると意気込んでいた一件である。
それと魔具職人になりたいテッサの意思表示に使う為、生半可な出来では納得しなそうな雰囲気だった。
「まだ。親父を唸らせるって思うとどうしても欲張っちゃってさ。今日も帰ってから打つつもり」
「テッサらしさが出てれば良いんじゃないかな。無茶しないようにね」
「朝、無茶して落ち込んでた奴が何か言ってやがる。まぁ、ありがとよ。無茶はしねぇよ。じゃあ、また3時に集まろうぜ」
テッサはそう言うと、颯爽と帰って行った。
もし材料が足りなくなるようなら、またダンジョンへ行っても良い。
そう言おうと思ってたんだけど、やる気を削いでしまいそうだから言わなくて良かったと思う。
「じゃあ、次はガチャ回数券が10枚集まるのが楽しみね」
母さんがそう声をかけてくれたのは、昼食のチーズハンバーグ定食を食べている時だった。
焼きたてパンにコーンスープ。チーズハンバーグとサラダ。
どれも美味しくって、パクパクと食べてしまう。
「はい。10枚集めてもどうなるのかわからないんですけど、テッサが言う事には、良いものが出る確率があがるそうなので、楽しみです」
「それにしても、スキル【物々交換】に似てきたな」
「あなた?」
「父さん?」
「ガチャや砂時計云々ではなく、魔具の素材が出るところはそっくりだ。カッスィー、出来るだけ人のいないところで出した方がいい」
「心配しすぎではなくて?」
「賢者様の再来だと大騒ぎになってみろ。カッスィーはこの村にいられなくなるかもしれない。出来るだけ対策はしておきたいんだ」
「はい。そんなの嫌だから、毎日自室でメッセージの処理をします」
「それでいい」
厳しいお話があって恐縮しちゃったけれど、ミラノさんがデザートのチョコレートケーキを配膳してくれたので、お茶と共に頂いた。
うーん。今日もすっごく美味しいや。
「ガチャで、いいものが手にはいるといいわね、カッスィー」
「はい、母さん」
美味しいケーキを堪能しつつ、僕と母さんはガチャで何が出るのかを予想しあった。
ファウト鋼や魔導コイル以外だと予想がつかず、宝石の名前を出し合って楽しんだ。
昼食後お昼寝をしていると、みんなが集まってきた。
まだ3時には早いので僕の部屋に集合。
ルビアは今日もツインテールが似合っている。
緑のワンピースが可憐だけど、きっと弓の練習をして来たんだろう。早くも「おなかすいた……」とこぼしている。
ガイは青地のシャツに茶色いズボン。
藍色の髪から覗く大きな黄色の目は好奇心を押さえきれず輝いている。
「早く来すぎちまったか?」
「ううん。もうすぐ3時だからね」
「お待たせーっ」
テッサが来た。いつもの灰色のツナギに、ショートカットの茶色い髪。
「じゃあ、みんな揃ったね。食堂に行こう」
ぞろぞろと歩いて移動する。
食堂に着くと、ミラノさんが待っていてくれた。
「坊ちゃん達、おやつの時間にようこそ。まず、クロカンブッシュからお持ちします」
皆席に着き、おやつを待つ。
運ばれてきたのは、円錐状にシュークリームが積まれたスイーツで、クロカンブッシュ。
「クリームが2種類ある! やっぱり美味しいっ」
「シュークリームとキャラメルが合ってる」
「シュークリームがいっぱいで贅沢だな」
「いくつでも食える。うめぇ」
ミラノさんは皆にお茶を入れてくれる。
僕とガイが珈琲、ルビアとテッサが紅茶だ。
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