食堂のお披露目会
「ルビアは決まった?」
「うん。お父さんと同じで、贅沢プレートとチョコレートパフェにする」
「僕はオムライスとガトーショコラにするよ」
「俺は天丼とあんみつで頼む」
「ガイ、宜しく」
「任せとけ!」
ガイは注文を取って厨房へ消えていった。
「ルビアはデザートをいっぱい食べるのかと思ってたよ」
「……食べるよ?」
「贅沢プレートじゃお腹いっぱいになっちゃいそう。無理はしないでね?」
「無理はしないけど……後もう一個くらいは食べれると思う」
ルビアはどう見ても諦めていない。
嬉しそうなのは見ていてわかるけれど、食べすぎは体に毒だ。どうにかできないかな……。
あっ、そうだ。ミラノさんがいるじゃないか。
「ねぇ、食べられなかったおやつは、明日僕の家で食べようよ」
「おっ。カッスィー、良い考えじゃん」
「おやつの時間に集合ね。食べたいメニューはある?」
「じゃあ、私はあんみつとドーナツと珈琲ゼリー。特にチョコレートドーナツが気になってる」
「俺も珈琲ゼリーと、チョコレートパフェ。バナナ多めで」
「わかった。メモしとくね。あっ、ガイー! ちょっといい?」
「どうした?」
「今日食べれなかったデザートを、明日村長宅で食べようって話してたんだ。ガイも来る?」
「行く! 全部デザート一気食いは難しいもんな。おっ、オーダー取ってんのか。じゃあ、俺も珈琲ゼリーと、チョコレートパフェと、チョコレートドーナツ」
「了解。明日3時に集合ね。忙しいところ呼んじゃってごめん」
「いいってことよ。そろそろ料理出来るから持ってくる」
まずはじめに届いたのは、贅沢プレートだった。
3段重ねのハンバーグに、ナポリタンの山があり、唐揚げとカボチャコロッケが乗っている。ベーコンとソーセージの横には、えびピラフがこんもりと盛られていた。
「美味しそう~っ! お先に頂くね」
「どうぞどうぞ」
僕とテッサでハモってしまった。
ルビアはピラフを食べ、ナポリタンを食べ、ハンバーグを食べてにっこりと微笑んだ。
「ハンバーグが一番美味しいっ」
見ているとドンドンお腹が減ってくる。
次はカッスィーのオムライス、次にテッサの天丼が届いた。
「卵がトロトロで美味しい。バターの香りがたまんない」
「えび天がプリプリしてる。うめぇ」
どれも文句なしの出来映えだった。
他の卓でも評判は上々で、早くもチョコレートパフェを完食している人もいた。
というか、ギネーさんだった。さすが親子。二人とも食べるのが早い。
ルビアもあっと言う間に贅沢プレートを完食してしまっていた。
「所でルビア。クロカンブッシュっていう、シュークリームを積み重ねたスイーツなんだけど、完成したんだ。食堂のメニューには入らなかったけど、シュークリームを積み重ねる案を出したのはルビアだったでしょ。明日食べる?」
「食べるー! 試作終わったんだね。楽しみっ」
「俺も楽しみ。試作品は食べたけど、もっとうまくなってそう」
そうこういってるうちにデザートが届いた。
ルビアはチョコレートパフェ、カッスィーはガトーショコラ、テッサはあんみつだ。
「バナナとアイスクリームとチョコレートソースが混じり合ってほんと美味しい」
「ガトーショコラはガイが焼いたって言ってたな。チョコチップが混ざっててチョコの味が濃くて美味しい。さすがだな」
「あんこと黒蜜が甘くてうまーい」
デザートに舌鼓を打っていると、ガイが食後のお茶を持ってきた。
「新メニュー、どうだった?」
「どれもすっごく美味しかった」
「僕はオムライスがメニュー入りしてて嬉しかったよ」
「俺はおにぎり定食がメニュー入りしなくて残念だった」
テッサ一押しのおにぎり定食は、梅と鮭のおむすびと味噌汁っていうシンプルな内容だった。
以前食べたのを思い出すけれど、梅は酸っぱかったなぁ。
「おにぎりは米をもっと普及させてからにするって言ってたよ。カラトリーの箸を導入したから、定食ものに力を入れていきたいんだって」
「箸、何人か使ってる人いたね。このまま普及しそう」
「そしたら親父が注文取るって言ってたぜ」
「米料理もお箸もティティー村発祥の地として、もっと有名にしたいなぁ」
「そのためには、やっぱりおにぎり定食をメニュー入りさせた方がいいと思ったんだけどなぁ」
「しょうがないよ、テッサ。私のクロカンブッシュもメニュー入り出来なかったし」
「そうだな。また会議してミラノさんに作って貰おうぜ」
「賛成っ!」
明日はおやつだけでなく、会議に燃える日になりそうだ。
「後がつかえてるからそろそろ出るね。ガイ、また明日」
「おうっ! じゃあな」
僕たちはお会計をしてお店を出ると、広場のベンチに集まった。
もうずいぶん風が冷たい。
本格的な冬がすぐそこに来ていた。
「明日のおやつ、楽しみだね」
「ああ。クロカンブッシュもチョコレートかけたらうまくなるんじゃね?」
「うーん、それも良いけど、だったら中のクリームをチョコ味にしたらどう?」
「まず見た目が豪華だからさ。フルーツを多めに飾り切りして飾ったらどう? もっと豪華になりそう」
「……はっ! 会議はガイがいる時にしよっか。つい熱くなっちゃう」
「そうだね。外は寒いし、解散しよう」
「また明日ねー」
「ああ。また明日。……俺はいつも通り早朝に村長宅に行くからさ、何かあったら呼んでくれよ」
「いつもありがとうね、テッサ。でもさすがに明日は何もないんじゃないかな。あっ、でも毎日ガチャ回数券が手に入ったらいいね」
「ああ、そうだな。じゃあ、また明日」
家に帰り、自室でくつろぐ。
明日のクロカンブッシュはクリーム2種にして貰えるようにミラノさんに聞いてみなくっちゃ。
明日の会議に出すおやつは何にしよう。
お腹がいっぱいだから、眠気がきちゃう。
部屋は暖房が効いてて暖かいのだ。
クリームいっぱいの夢を見ながら、まずはお昼寝する僕でした。
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