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美味しいものの力

【ログインボーナス・2日目】

【緑茶を手に入れました】


緑茶の文字に指を合わせると、昨日と同じく500mlの緑茶のペットボトルが虚空から現れた。

昨日レベルアップしたから何か変わってるのかと思ったけれど、特に何もなく一安心だ。


特に変わったところはないと、カッペラード様に報告し、朝食をいただいた。

ベーコンエッグとかぼちゃのパイを美味しくいただいていると、どうやら客人が来たらしく、ザワザワしている。

僕とテッサは、顔を見合わせて、デザートの苺のムースを食べた後、仕事場の倉庫に向かった。


倉庫での仕事は順調だった。

しかし、まだ半分しか出してないのに、いきなり入ってきた人が商品を掴み取り、パッケージを開けようとしたから途中で止めざるを得なかった。


その人物は、恰幅の良い体型で、見ただけで高級とわかる仕立ての洋服を着ていた。

そこに珈琲の粉がボロボロと落ちる。


「子供風情がこんな良いものを独占しているだと?!」


叫び声は倉庫中に響き渡った。


「おい、小僧。ほかにどんなものがある。そうだな、酒はあるか。良い酒を持っていたら買ってやろう」


「今はハイド男爵のご注文品を出している最中で……」


「おのれ、口答えするか!」


「ジャークス男爵、お待ちを。この子供達は私の命令を聞いているに過ぎません。お戯れはその程度にして貰いましょう」


「戯れ等ではない。私が買うと言ったのだ。そこの子供に酒を出させろ」


「この子供が出せる酒のリストはこちらにありますよ。奥様におすすめなスイーツの情報もあります。取引はハイド男爵家を通して貰いましょう」


「……チッ。仕方がない。それで手を打とう。良い酒はあるんだろうな?」


「勿論ですよ。しかし、前触れなくいらっしゃるのはやめにしていただきたいですね」


「ふん。こんな田舎まで足を運んでやったんだ。感謝して欲しいものだ」


言い捨てて、ジャークス男爵は倉庫から去っていった。


「二人とも、大丈夫かい?」


「びっくりしたけれど、大丈夫です。テッサは、大丈夫?」


「おう。平気」


「謝罪は後程改めて。珈琲はあと300程増やしてくれ。その破損した分も、入れてくれて良い」


「わかりました」


その後の采配を済ませると、カッペラード様も去っていった。


掃除に来た侍女の方曰わく、珈琲を大変気に入ってしまわれたんだとか。


それだけであんな騒ぎになるんだから、貴族って恐ろしい。


何はともあれ、全部出し終わったのはお昼近くで、ジャークス男爵とは違う食堂で、昼食を頂いてから帰ることになった。


昼食は、なんと贅沢プレートで、3段重ねのハンバーグがすっごく美味しかった。ソースが違うのかな? 食べる度に美味しくなってる気がする。

しかもご飯はピラフではなくオムライスだ!


「ソーセージがプリップリだ。オムライスもうめぇ」


「唐揚げとかぼちゃコロッケも揚げたてで美味しいね」


デザートは、りんごのシブースト。


「パリッとキャラメリゼされた表面が美味しい」


「キャラメルとりんごが合ってる」


はぁ、美味しかったぁー。

さっきの騒動、実は怖かったんだけど、今はもうどっか行っちゃったや。

美味しいものの力って偉大だね。


食後、カッペラード様の応接室に通された。

ジャークス男爵はお酒の飲みすぎで寝てるんだって。


「やあ。さっきは災難だったね。今、お茶を用意させよう」


「ありがとうございます。仕事は注文通り、終わりました」


お茶は緑茶だった。一口飲むと、芳醇な茶葉の香りがする。


「お疲れさま。そして、ジャークス男爵を止めれず悪かった。どうやら君の噂を聞いていて、探していたらしい」


「珈琲の仕入れもとであることはバレちゃったと思うんですが、大丈夫ですか?」


「元々カレールゥの仕入れ先はレアスキル持ちの商人だと公表しているんだよ。だから問題ない。君を欲しがっていたけれど諦めて貰ったよ。その分商品を卸す取引をしたんだ。ジャークス男爵は横暴な人ではあるが、金払いは悪くない。せいぜい上客になって貰うさ」


「それで危なくないならいいんですけど……」


「とにかく目立たないことが大事だよ、カッスィー君。今後は倉庫にも護衛をつける。それに王立学園に入ってしまえば、しっかりとした護衛もつく。それまでの我慢だ。今日はこのまま帰りなさい」


「はい。ありがとうございました」


丁寧に礼をして、ミラノさんと合流し、馬車に乗り込んだ。


ミラノさんはキジさんと思う存分腕をふるって来たから、満足そうにしていた。


僕のスキル【ネットスーパー】のテナントのケーキ屋さんから出した新しいチョコレートケーキ2種も、二人でレシピの再現をやってきたそうだ。

食感が軽い方を、ミラノさんが担当し、食感が重い方を、キジさんが担当したんだって。

すごく楽しかったらしく、ミラノさんはニコニコしていた。

僕は聞いているだけでお腹がすいてしまって、馬車の中でポッキーを一箱食べてしまった。ちょうどおやつの時間だったし、しょうがないよね。

ミラノさんとテッサにも、勿論渡したよ。


空が夕焼けに染まる頃、馬車はティティー村にたどり着いた。


父さんと母さんにただいまの挨拶をして、自室へ戻る。

結構疲れていたので、夕飯の時間まで寝てしまった。


今日の晩餐は、チキンのロースト。

かぶりつきたいのを我慢して、ナイフとフォークで頂く。


「皮がパリッとしてて、お肉はジューシーで美味しい」


「良い焼き加減ね」


「うまい。このピリッとしたソースが食欲をそそる」


父さんと母さんも大絶賛。本当に美味しい。

焼きたてのパンを頬張って、またお肉を食べていく。口の中は、美味しい鳥の油でいっぱいだ。皿に残ったソースをパンで拭って食べていく。あっと言う間に完食だ。


大満足なメインの後は、デザートの登場だ。ミラノさん特製のあんみつである。


「寒天で口の中がさっぱりしていいな」


「あんこの優しい甘さがたまらないわ」


「白玉がモチモチして美味しい」


やっぱり食べる度に美味しくなってる気がする。黒蜜の甘さが寒天とぴったりだ。


食後のお茶は緑茶。

独特の苦味が舌に心地良い。


「カッスィー。ハイド男爵家との取引はどうだったかい?」


「はい。帳簿通り無事に終わりました。今回前回の2倍程を納品しましたが、問題はありませんでした」


「カッペラード様から手紙を貰っているよ。よく頑張ったね。先方は次も数を増やしたいと仰せだ。来月も頼むよ」


「はいっ! 頑張ります、父さん」


「それでカッスィー、またレベルアップをしたとか?」


「はい、母さん。ケーキ屋と宝飾店が出たので、ケーキ屋を選びました」


「わかりました。また何かあったら呼んで頂戴」


宝飾店の方が良かった、って言われるかと思ったけれど、叱られなくて良かった。

聞いてみたら、カッスィーのスキルだから僕が決めて良いんだって。責任重大だね。

お読みいただき、ありがとうございました。


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