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将来はきっと

今日のお弁当は、なんとお寿司。

生の魚にびびってしまう僕にしては珍しいチョイスだ。

食堂の新メニューで忙しいミラノさんを慮った結果である。再現できるやつはミラノさん、作っちゃうからね。

勿論、テッサにしっかり鑑定して貰った。


テッサは昨夜、自分は魔具職人になりたいから鍛冶職人にはなれないって、ハッキリお父さんに伝えたんだって。

とは言っても伝手もないし王立学園で師匠を見つけて師事する。それまではしっかりスキル【鑑定】でお金を稼ぎながら、鍛冶職人の修行をする。

そう伝えたけれど、反応は芳しくなかったようだ。


「わかって貰えるまで話し合いを続けてみるよ。手始めにこないだダンジョンで手に入れた鉱石で、立派なナイフを作り上げて見せつけてやるんだ。俺の決意は固いんだってね」


「そっか……。頑張ってねテッサ。応援してるよ」


「ありがとう」


一筋縄じゃいかなそうだもんな、テッサのお父さん。

僕は祈ることしか出来ないけど、テッサの夢が叶いますように。



調理場から出てきたミラノさんは、緑茶を淹れてくれた。


「坊ちゃん達、寿司はどうですかい?」


「どれも美味しいよ。僕はソースがかかった魚と、卵が好き。生の魚もおいしかったけど、火が通してある方が安心する」


「穴子と玉子かぁ。俺はマグロが好き」


「魚の寿司は再現出来やせんが、どれも味は良かったですね。所でテッサ、卵の寿司なら作れるんじゃないか?」


「作れるよ。じゃあ材料を出して貰えるか? カッスィー」


僕は頷いてテッサの言う食材を並べていく。

でも、ミラノさんに休んで貰う為にお寿司にしたのに、意味なくない?


「気を使わなくていいぞ。うまいものを作ってるとな、元気がわいてくるんだ」


「ミラノさん、ありがとう。じゃあ、おいしい卵のお寿司を待ってるね」


「おう、それでいい」


食後のデザートは小さなシュークリームが円錐状に詰まれたスイーツだった。

ルビアが食べたいって言ってたやつだね。

もうすぐハイド男爵家に納品に行く時期だし、練習してるんだって。


クロカンブッシュっていうらしい。

メニュー決めの時、テッサ一押しのデザートだったけど、味はどうだろう。


「うーん、おいしいっ! クリームいっぱいのシュークリームがいっぱいで幸せぇ」


「うわーっ、見た目も華やかだし、シュークリームもうまい! さすがミラノさん」


「食堂のメニューには入らないが、必要な時にはうちで作れるからな。パーティーの時なんて良さそうだ」


「はーい。楽しみにしてます!」


食堂の新メニュー御披露目のときに作って貰おうかな?

ルビアが大喜びしそうだよね。



ガイに呼ばれて広場へ集合。

おやつの時間なので、みんなどことなくワクワクしてる。

ガイは自信ありげに宣言した。


「今日のおやつはガトーショコラだ!」


ホットケーキミックスでチョコケーキを作ってみるって言ってたものね。完成したんだなぁ。


「食堂の席、4つとってあるんだ。行こうぜ」


みんなで連れだって歩く。

新装開店してからは、ちゃんと訪れるのは初めてだ。


木目調の優しい雰囲気の入り口を抜けると、4人がけのテーブルが8つ並んでいる。

お客さんもそこそこ混んでいて、珈琲の良い香りがあたりに漂っていた。


「お店、広くなったねぇ」


「昼時が終わった後、喫茶もはじめたんだ。珈琲が今大ブレイク中」


僕たちは予約席のテーブルに腰掛けて、喫茶のメニューを広げた。

僕はせっかくなので珈琲にした。勿論、ミルクと砂糖ありで。

ルビアとテッサは紅茶で、ガイは珈琲。


ガイが店の中に引っ込むと、珈琲の心地良い香りが一際強く香った。

ルビアにクロカンブッシュの話をすると、試作が終わったらぜひ食べたいと願われた。

それを快諾していたら、ガイが飲み物とガトーショコラを持ってきた。


ガトーショコラの外観は真っ黒で、ちょっと驚いてしまったが、ホイップクリームが添えられており、とても美味しそうだ。


「甘くてしっとりしてる。チョコの味が濃くておいしいっ!」


「おいしい。ちょっとチョコの苦味があるけど、甘味が強いし、ホイップクリームと一緒に食べるとちょうどいいね。珈琲に合うよ」


「これ、ガイが焼いたんだろ? うまいよ。凄いなスキル【料理人】」


「ありがとな。だいたいのレシピを教えてくれたテッサと材料出してくれたカッスィーのおかげだよ。俺もチョコの味が濃くてうまいと思う」


「まだメニューにはなかったよね」


ちろりとメニューを見ても、ホットケーキの文字だけしか見えない。


「まだ試作中だからさ。だから代金はいらないんだ。気になるとこ、あるか?」


「チョコを知らないと、真っ黒な焼きすぎのケーキに見える」


「チョコチップを入れたらもっとチョコ味が強くならない?」


ルビアはもっと濃いチョコ味を求めているようだ。


「俺はこのままでも十分美味しいと思うぜ」


「テッサのお墨付きは自信がつくよ。ルビア、チョコチップはやってみる。見た目は最初タダで振る舞って様子見るからさ」


「色々考えてるんだな」


「ガイは料理人でテッサは魔具職人、カッスィーは商人だろう。ルビアは、将来何になりたいの?」


「私は、お父さんみたいな猟師になる」


「おおー」


「頑張ってな」


「応援してる」


「いま、スキル【火魔法】だけじゃなくて、カッスィーみたいに弓も訓練してるんだ。すぐお腹すいちゃうから、カッスィーから買った飴やお菓子を重宝してるよ」


ルビアは、薄い胸を張って弓を引くジェスチャーをしながらそう言った。


僕たちは未来に思いを馳せる。

掲げた夢は、叶っているだろうか。


将来のことはわからないけれど、みんな元気で今みたいに仲良しならいいな。


僕も自分のスキル【ネットスーパー】を好きになってきたし、これから頑張ろう! 



そんな意気込みをした矢先のことだった。


リリン、と音がして、スキル【ネットスーパー】が起動する。

画面はいつも通りなのに、見慣れない文字が並んでいた。


【レベルアップ!】

【スキル ネットスーパーは進化しました】

【テナントを選んで下さい】

【弁当屋 or ケーキ屋】


自室でハイド男爵家に卸す交易品のチェックをしている時だった。

つい珈琲のドリップバックを床に落としてしまう。


「は……え……何……レベルアップ?」


夜だというのにテッサを呼んでしまったカッスィーは悪くないと思う。


お読みいただき、ありがとうございました。


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