ボリューム満点! 贅沢プレート
ティティー村に到着し、エドさんとランダさんに改めてお礼を伝えた。
僕たちの冒険は楽しいことばかりではなかったけれど、エドさんがいてこそ、無事に帰ってこれた。あと、言葉少なに御者をしてくれたランダさんにも、皆でお礼を言った。
「それで? カッスィーはどんなデザートの案を出したの?」
今は村長宅にて晩餐の真っ最中。
母さんが水を向けたのは、ダンジョンの話が終わって、おいしいデザートメニューの話になったところだった。
「あんみつっていう、あんこを使ったスイーツです。寒天とみつ豆に、あんこと白玉団子を乗っけて黒蜜をかけて食べます。元はテッサの案だけど、凄く美味しそうだったから」
「まあ。聞いてるだけで美味しそうね。ミラノはどう思うかしら?」
「俺はそりゃあもう、試作したくてたまりませんね。坊ちゃんたちが考え抜いた贅沢プレートも一つ一つがうまそうで楽しみです」
「チョコレートパフェでひとつ思ったのだけれど。バニラアイスだけじゃなく、チョコレートアイスを乗せてもいいんじゃないかしら」
「それは良い考えですね。頂きましょう」
「母さん、凄いね。僕たちはアイスを使うことしか思いつかなかったよ」
「ミラノの腕前なら作れると思っただけよ。ほとんどは4人で考えたんでしょう? 自信を持ちなさい」
「はい。ありがとう母さん」
「今日のデザートのアマイモの蒸しパンもおいしいわ。生地がもっちりしていて、素敵な食感ね」
「ありがとうございます。明日は坊ちゃんのあんみつをお出ししますよ」
「楽しみね、カッスィー」
「はい。とっても! 蒸しパンもスッゴく美味しいです」
晩餐が終わり、部屋に戻る。
冒険で手に入れた魔石を換金して、4人で分けたところ、一人銀貨1枚になった。
お弁当2つぶん。たったそれだけだけれど、何より大事な宝物になった。
翌日、父さんが「今日の昼食は例の贅沢プレートでいいぞ」なんて言うから、ミラノさんは朝から忙しそうだった。
ハンバーグ弁当を出して、出来上がりのイメージを絵に描いた。ピラフも乗っかったフルバージョン! パスタの山がちょっと小さくなるけど、概ね希望通り出来上がるとのことだった。
テッサも材料を鑑定しながら、楽しみなのを押さえきれない様子だった。
ミラノさん不在の時に出した新しいお弁当とデザートを出し終えて、一段落。
テッサの仕事が終わったので、カッスィーはテッサと一緒に自室へ引き上げてきた。
今日は、ハイド男爵に商品を納品する時にテッサは面接をする為、打ち合わせをするのだ。
テッサは魔具職人になりたい。
でも、親父さんは鍛冶職人になれって言ってるんだよね。王立学園も進学希望を出してあるし、どうしようか。
「王立学園はスキル【鑑定】を授かったせいでほぼ強制だから、問題ないと思う。ただ、魔具職人希望の事は……師匠を見つけたら師匠の工房に弟子入りする事になるし、誤魔化せないだろうな」
「鑑定師の修行って事にすれば?」
「それも考えたけど、やっぱり正直に話しておきたくてさ。親父とはまた今夜話してみるよ」
「うん、わかった。了承して貰えるといいね」
「ダメ元で直談判してみるよ。ありがとな、カッスィー」
テッサはさっぱりとした顔で微笑んだ。
どうしてもダメだったら家出してくる、なんて物騒な事を言うから驚いちゃった。
穏便に話が進むといいね。
昼食の時間になり、食堂へ。
今日は父さんと母さんと一緒。テッサは控え室で食べて帰るって言ってた。喧嘩するかもしれないんだもの。スタミナつけないとね。
「贅沢プレートです。内容は3段重ねのハンバーグに、ナポリタンスパゲティ、唐揚げにコロッケ、ウィンナーにベーコン、えびピラフとなっております。どうぞご賞味下さい」
「なんとも贅沢なメニューだな。どれから食べようか悩んでしまう」
「えびがプリプリで美味しいピラフね。オムライスと迷ったのではない?」
「うん、迷ったよ。でもオムライスは単品でメニューに加わりそうだから、却下されたんだ」
「どれを食べてもうまい。ミラノ、このコロッケはジャガイモなんだろう。熱々ホクホクだ。カボチャでも出来そうだな」
「カボチャコロッケですね。お任せください」
「ウィンナーのプチッとはじける肉汁がおいしい! 何より3段重ねのハンバーグが最高においしい!」
「坊ちゃんに喜んで貰えて良かった。メニューを頑張って考えた功労者ですからね」
「今度、ガイやルビアも連れてきて良い?」
「勿論ですよ。贅沢プレートはテッサも大喜びしてましたよ。チョコレートパフェはおやつの時間に出しますから、みんな連れてきたらどうです? どうですか、旦那様」
「うむ。それで良かろう」
「わーい、ありがとう、ミラノさん、父さん」
僕は大満足な贅沢プレートだったんだけど、食堂のニネさん達が来たらまだまだ試作をするんだって。もっと美味しくなるのかな? すごいよね。
おやつの時間になり、呼んできたルビアとガイ、テッサと一緒にチョコレートパフェを頂いた。
「おいしい……!クリームとチョコとアイスが一緒に食べれちゃう。コーンフレークがサクサクしてるのも良いね~」
ルビアの小さな口にどんどんアイスが消えていく。おっとそうだ、これを聞かなくっちゃ。
「ルビア、アイスはチョコレートアイスも増えてるんだけど、どう?」
「最高においしい! いくらでも食べれちゃう。チョコレートアイスには、ナッツが合いそう。砕いて上からかけるとかどう?」
「いいね、やってみよう」
調理場に行き、ミラノさんに説明をしてローストしたナッツを砕いて貰った。
これをぱらりとかける。うん、いい味だ。
「うまーい。これで完成でいいんじゃね? 甘くて冷たくて、何度でも食べたくなる」
「同感。ガイ、珈琲はどうだった?」
「父ちゃんも母ちゃんも大騒ぎだったよ。少し常連さんに振る舞ってみたんだけどさ、好評だったよ。メニューの相談ついでに買いに来るって言ってたよ」
「そっか。じゃあ準備しておくね」
「カッスィー、あんみつは?」
「あんみつは晩餐のときに試作を出すって言ってたよ。ルビアもお腹いっぱいでしょ」
「……また呼んでくれる?」
「ミラノさんの試作が終わったらね。また改めて贅沢プレートとあんみつを出して貰うからさ」
「わかった、それでいい」
ルビアが納得してくれたので、お開きになった。
みんなが帰ったので、自室で勉強する事にした。
ラグナスティール王国の歴史の本を読む。
歴史書にも出てくる賢者様は、スキル【物々交換】を女神様より授かった。
当時、希少な素材を魔具職人に捧げて出来たものが魔導コンロ。
これは爆発的に普及し、平民でも重宝している。
賢者様は素材だけでなく、たくさんの叡智をラグナスティール王国にもたらした。
追放は悪であるという概念はこの頃に生まれた。
へえー。魔導コンロって賢者様が素材を渡していたんだね。
僕もテッサに魔具の素材を渡せたらいいんだけど、料理の材料しか出せないんだよね。
でも、よく考えたらこの料理の材料も珍しいものばっかりだし、十分すごいんじゃないかな。
流石だね、僕!
……ニネさん夫婦がやってきたのはこの夜で、贅沢プレートとチョコレートパフェ、あんみつの3つを試食して貰ったんだ。
僕たちは案②のメンチカツ定食を食べていたから、メンチカツもちょこっと食べて貰った。
ふたりが一番気に入ったのは、贅沢プレートだった。
「うまい! 何より贅沢だから値段も張る。数は出せないが数量限定でどうだろう」
「いいわね。ボリュームが凄いし、数は抑えましょう。この3段重ねのハンバーグは本当においしいわ。肉汁が溢れてくるし、ソースも飽きが来ない味付けで最高よ」
「早速家でも試作したいんだが、メンチカツ定食も覚えたいんで、まずは一緒に作って良いか?」
「ええ、勿論良いですよ」
「チョコレートパフェとあんみつも良いかしら。両方甲乙付けがたい美味しさだったわ」
「両方うまいが、俺はあんみつの方が好きだな」
「ええ。両方メニューに入れましょう。さぁ、忙しくなるわよ」
ニネさん夫婦は調理場へ入っていった。
僕は珈琲を頼まれたので、金貨のぶん珈琲を出している。特にドリップ珈琲を多めに頼まれた。ミラノさんが珈琲を淹れてくれたけど、ブラックじゃ苦くて飲めないんだ。
ミルクと砂糖をタップリ入れてかき混ぜる。あ~いい匂いだね。ゴクリ。うん、おいしい。
食堂で新しいメニューの御披露目をする際に、僕たち4人も招いて貰える事になったんだ。
今からすっごく楽しみ。
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