村の見回りとカツサンド
色々あったけれど、カッスィーの毎日は変わらない。
今日のお弁当は、ロースカツサンド。
パンはバケットじゃなくて、食パンっていう四角いパン。
いつものように材料を買って渡すと、ミラノさんはいい笑顔を浮かべていた。
なんでも、食パンを焼けるようにテッサのお父さんに型を作って貰うんだって。
今日は村の見回りに来ている。
勿論、僕はスキル【弓術】持ちの父さんのオマケで、みんなの分のお昼をたっぷり籠に詰めてきている。
スキル【火魔法】を授かったルギアも一緒だ。
冬の山は獲物に乏しく、たまに食料を求めて下山してくる獣がいるのだ。
熊だったり、大型の獣や魔獣だと自力で討伐が困難な場合もあるため、定期的に間引きを行っている。
山間部にある休憩用の小屋まで到着した。
父さんと同じくスキル【弓術】持ちのギネーさんはルギアの父親で、ホーンラビットをしとめている。
「午前だけでホーンラビット2匹か。獲物が少ないが、大型がいなそうなのも良かったな」
「平和が一番ですよ、村長」
「ああ、そうだな」
「お茶どうぞ」
「ああ、ルギア。ありがとう。火魔法はどうだい?」
「火をつけるのがうまくなりました」
「それは良かった。ただ、森の中で火を扱うのは要注意だ。気を付けてくれ」
「はい。お父さんに聞いてます」
「エドさん、薬草はどうだい?」
「ぼちぼちですよ」
「じゃあ、皆昼食にしよう。カッスィー、配ってくれるか」
「はい!」
籠に詰めてきたカツサンドを、一包みずつ渡す。
「おお、こりゃうめえ」
「外側がサクッとして、中の肉が柔らかくてうまい。ソースが染みたパンもうまい。こりゃあ何だ? カッスィー」
「ミラノさんが作ったカツサンドです。豚のロース肉を油で揚げてパンにはさんだものです」
「キャベツが敷いてあるのもスッキリしていいね。おいしいよ。見回りの時はカツサンドを常食にしようか」
「そりゃあいい」
「賛成!」
大人たちは大喜びだ。持ってきて良かったよ。
「今日は銅貨いらないの?」
「うん。うちの料理人が作ったものだからね」
「美味しかった……銅貨も持ってきてるけど、何かない?」
「どんなのがいいの?」
「食堂のホットケーキみたいに、甘いやつ!」
「うーん…ケーキは外で食べづらいから、飴はどう?銅貨3枚だよ」
「いいよ、はい!」
「蜂蜜味の飴ね。こうやってあけて、この中の丸いのを口にいれてみて」
「あまーい、おいしい!カッスィーにも一個あげる!お父さーんっ」
「ありがとう」
「お父さんにもくれるのか?……こりゃうまいな。甘くて疲れが取れる」
「はいっ。村長さんとエドさんにも1個ずつどうぞーっ」
「ありがとうな、ルギアちゃん」
「ありがとう」
「どういたしましてっ。おいしいものはみんなで食べた方が美味しいってお母さんが言ってたもの」
飴を頬張りながらニコニコと笑うルギアをギネーさんが頭を撫でる。
「じゃあ、見回り続けるぞー」
父さんのかけ声で、皆で見回りにもどる。
日が落ちる前に村に戻ったところ、戦果のホーンラビット4匹は山分けとなった。
今夜はホーンラビットのシチューだと、皆ほくほく顔だ。
カッスィーは戦力になれないが、補給係としてなら頑張れるのではないか。
そんな実感とともに帰宅すると、緊急時に必要なものは何だろうと、明日テッサに尋ねようとメモするのであった。
ちなみに、ミラノさん特製ホーンラビットのシチューはほっぺが落ちるほど美味しかった。何度もおかわりしちゃったよ。
お読みいただき、ありがとうございました。
もし面白い! 応援してるよ! と思ったら、
↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!




