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プロローグ

「はい、銅貨5枚」


受け取った銅貨をスキル【ネットスーパー】に入れ、選んだ親子丼を受け取る。出来立てなのか、アツアツのそれをキリは大事そうに抱えていった。


学食も悪くないけれど、せっかくのレアスキルを体験してみたいと、クラスの数名は毎日カッスィーから弁当を購入していた。


鑑定持ちのテッサがいうには、寿司のような、なかなか食べられないもののほうが価値が高いそうだが、刺身の生食は好まれない。


キリは寿司を好まないが、丼物が大好きだ。


今日も銅貨5枚で親子丼を美味しそうに頬張っている。


カッスィーは自分の鮭いくら弁当を食べていた。


こうして自らのスキルで買い物をし、昼食とするのは慣れていたが、今日は隣のクラスのグロリア・カーライズが買いに来たので焦ってしまった。


「スキルでお弁当を出すのはあなたかしら?」


「はい、僕です」


「そう。スキル【物々交換】はSSレアといわれているものね。会えて嬉しいわ」


グロリアは美しい深紅の髪をかきあげながら、後ろについてきている侍女に支払いをするように促した。


スキル【物々交換】はお金ではなくモノでないと正しく換金されないことが有名であったためか、侍女は小さめな宝石を手にしていた。


またか。


カッスィーのスキル【ネットスーパー】は、お金が必要である。そしてスキル【物々交換】のように、宝石と何かを交換して出すような真似は出来ない。


どうしても説明時にスキル【物々交換】のような説明をするけれど、虚空から物が出て来る事だけが似ているのであって、他は全然違う。


しかしこれをうまく説明できず、今日もまた淡々と、


「銅貨5枚です」


簡潔に必要そうな金額を述べた。


「あら、お金で良いのね」


「僕のスキル【ネットスーパー】は、お金じゃないと使えないんです。それでもいいですか?」


「勿論いいわ。サラ、いいわね?」


「勿論です、グロリア様。カッスィー様と同じものをひとつお願いします」


サラと呼ばれた侍女は金髪のロングが美しいキツめの美人だったけれど、銅貨5枚で鮭いくら弁当を出して渡すと、無表情で去っていった。


カーライズ嬢のぶんは明日買うかもしれない。


なんせ怪しいスキルで入手したお弁当なのだ。


侍女がまず試すのはおかしくはないと言えよう。


「なぁ、おやつ買って良い?ポッキーで探して」


こういう馴れ馴れしくも詳しいことを言ってくるのは、幼なじみのテッサしかいない。


「はい、銅貨3枚」


探すときは虫眼鏡のマークの所にポッキーと入力すればいい。


これも過日にテッサに教わったことだった。


テッサはスキル【鑑定】所持者なので、本人にしか見えないこのスキル【ネットスーパー】の取り扱い方法についても、少しならと教えてくれる。


「これでいい?」


「お、よろしく」


「毎度あり」


テッサに鍛えられたおかげで、神官に匙を投げられたスキル【ネットスーパー】でも、王立学園に入学できたのは良かった。


だけど、よく勘違いされることがある。


スキル【物々交換】の所持者は、転生者だったそうだ。


転生というのは、生まれ変わりを意味するらしく、ここラグナスティール王国では転生者が見つかったら保護するらしい。


なんでも、前世の記憶を持っていたり、ここではない異世界で暮らしていたりするため、ふつうの生活では生きていけない場合が多い。


この王立学園も、転生者保護を掲げているだけあって、積極的だ。


スキル【ネットスーパー】が擬似スキルだという説明なので、なぜかカッスィーは転生者扱いされている。


それはなぜか。


転生者疑いのあるBクラスで、普通に暮らしているからである。


そう、みんな転生者、らしい。


なぜ曖昧なのかというと、個人情報保護の為であり、転生者であっても現在は14才の若人たちである。区別は付けるが、学生であることを忘れるべからず、だとか。


「へー、ポッキーじゃん。どっかの家で作らせたの?」


「いや、これはカッスィー産。ピリオネさんちでどうにかなんない?」


「うちかー。こんだけ転生者いるとみんな作ってそうだから、一周回って作ってない」


「あーわかるわー」


アギト・ピリオネが感慨深そうにしていたので、クラスのみんなも似たような感想を漏らしていた。


「カッスィーいれば買えるしな」


「ほんとそれ」


やっぱりうまい、とアギトがポッキーを食べていると、テッサが買っていったぶんじゃ足りなかったらしく、アギトが銅貨3枚を持ってきた。


みんなポッキーのことを知っているっぽいけれど、カッスィーは昔テッサに頼まれて初めて知ったお菓子である。


細長いビスケットに甘いチョコレートがかかっている軽いお菓子。


一度食べるとまた食べたくなるおいしさで、こんなおいしいものを常食していた転生者たちは、確かに浮いてしまうだろうな、と思った。


だってカッスィーの村にはチョコレートすらなかったから。


今は買い置きのおやつが村長宅の倉庫にあるとはいえ、転生者だったらおやつが花の蜜というのは我慢できないかもしれない。


カッスィーはテッサを転生者だと思ってる。


何故なら、カッスィーから米と調味料を一定量買っているからである。


転生者達はだいたい米が好きで、醤油や味噌を求めている。このあたりでもカッスィーは救世主扱いを受けたが、それは置いておいて。


カッスィーからお米を初めて購入しようとしたのは僅か5才の時のテッサだった。


転生者についてはナーバスな質問になるらしく、あまり面と向かって聞かれた事はない。


僕は転生者ではないけれど、皆が嬉しそうなことも含めて、このBクラスが好きだな、と思う。

お読みいただき、ありがとうございました。


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