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見ていてくれていた者

「今更だけど、どうして俺が紡ぎ人に選ばれたんですか?」

「どうしてなのか、か」

 エイデナは顎に手を付け目を閉じた。

 どうやら考えているようだ。

 さてはその理由を考えていなかったな。

 この神様ならあり得そうだ。

 しばらくの間無言になる。

「そうだな・・・、君の現世・・・、いや」

「君の元いた世界での行いをずっと観ていたから、かな」

「なんですかそのテキトーな感じ」

「いやー、だって仕方ないだろ、ほんとにそういう理由なんだから」

「それじゃ、俺のその行いって具体的に何のことですか?」

「それは・・・、その」

彼女はどこか照れくさそうに話し始める。

「君が人から愛されていたこと」

「そして何よりも君が人を思いやり、愛していたことだ」

「ん・・・!」

俺はエイデナのその言葉に身体が熱くなってくるのを感じた。

「いやまぁ、確かに俺は人と話したり関わるのとか好きだったけど」

「なんか、改めてそう言われると恥ずかしいな」

「いや、何も恥ずかしいことじゃないよ」

「そりゃあ、まあ、君はよくも悪くも普通だし、というかどちらかと言えば地味な方だ」

「おい!」

「それに彼女が欲しいと思っていたようだが、こうして死ぬまで恋愛出来なかったようだし」

「ちょっ!?」

「それでも、君は自分の人生に満足していた」

「えっ・・・」

「君は自覚していないようだが」

「君は自分の人生にそれほど多くのことを望まずに」

「何も変わらない平和な日常に」

「ほんの些細な日常の喜びに」

「そんな日々の毎日に感謝をし、そんな人生を愛していた」

「そして、君のそんな人柄を愛していた人達」

「それほど多くはないのかもしれない。でも君は真に愛されていた」

「何よりも君が、人を愛する気持ちを持っていた」

「現に君は、自分のことを顧みようともせずに誰かの命を助けた」

「これは誰にでも出来ることじゃない」

「だからこそ君は紡ぎ人に選ばれた」

「だから、恥ずかしがらなくて良いんだよ」

「むしろ誇るべきだ」

「だから、どうかそんな顔をしないでおくれ」

「えっ・・・!?」

気付けば俺は涙を流していた。

エイデナの温かい言葉。

俺の心に、温かい気持ちが届いてくる。

「エイデナ・・・、いやエイデナ様。ありがとうございます」

「エイデナ様なんて水臭いじゃないか」

「私のことは親しくエイデナと呼んでくれて良いよ」

「それじゃ改めてエイデナ。これからよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしくお願いするよ」

少しの間を置いてエイデナが口を開いた。

「じゃあ、そろそろ行こうか」

「異世界へ!」

「はい!」

すると突然、目の前に巨大な鉄の扉らしきものが現れた。

「この扉を通れば、君は晴れて異世界人への仲間入りだ」

そういうと、彼女はまるでバスガイドのように腕を扉の方へ向けて俺を促す。

「あ、そうそう君の元いた世界での記憶、つまり前世の記憶はそのまま忘れずに転生することになるから」

「あと、君がどの家の子に転生するかは、私が予め決めておいたから」

「はい、ありがとうございます!」

「それじゃ俺、行きますね!」

鉄の扉が開く。

俺はその扉を潜る。

その間際にエイデナが小さく呟いたのが聞こえた。

「君ならきっと役目を果たせるよ・・・」

ガターン。

扉が閉まる音と共に静けさが訪れる。

その静寂の空間にエイデナが一人呟く。

「ふふふ、きっと向こうで驚くだろうな」

「あなたにとってとても大事な人に会えるのだから・・・」

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