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運命はこれから始まっていく

「では改めて”選ばれし者”と、君の転生先の世界についても説明しよう」

「はい、お願いします」

やっと本題の話が聞けそうだ。そう思うと、なんだかこれからワクワクドキドキの冒険が始まる予感がして、胸が高鳴ってくる。

「まず先に君が転生する世界がどんなところか教えよう」

「そこは発展度合でいうならば、君の世界でいうところの、中世ヨーロッパくらいな発展度合といったところだ」

「文化的にもヨーロッパに近いとも言えるな」

おおー、中世ヨーロッパ! なんか良い響きだな。これはますます胸が踊るな。

「それと、君のいた世界とは決定的に違うところがあるとするなら、それは魔法が使える世界ということかな」

「魔法が使える! つまりゲームや漫画みたいなファンタジーの世界ってことかー!」

これは俄然燃えてくるぞ。

「そんなに単純なことでもないんだがな。まぁ、実際にどんな世界かは、転生してからのお楽しみということで」

エイデナは、意味ありげにそう呟く。

「俺としてはもう少し詳しく知りたいところではあるけど・・・」

「まあ、ここで色々と詳しく説明されるより、実際にどんな世界かは、この目で見てくる方が楽しそうだしな」

「だからここでは敢えて深くは聞かないよ」

「ふふ、良い心構えだ」エイデナは俺のその返答にどこか満足げなように見えた。

「それで、ここからが”選ばれし者”とは何なのかの話だが・・・」そう言いながら、エイデナの表情が少し暗くなっていったように感じられた。

「これから君が行く世界では、そう遠くない未来に”災い”がやってくる」

「”災い”?」

「ああ。その”災い”とは人々が互いを恐れ合い、憎しみ合い、疑い合いうようないわば疑心暗鬼のような状態のこと」

「それを食い止める役目を担った者が選ばれし者の為すべきことだ」

「はあー、なるほど・・・?」

「そして、君がこれから為すべきこととは”紡ぎ人”のこと」

「紡ぎ人? とは一体何をするのですか?」

「それは、人と人とを分かち合い、人と人との心の懸け橋となり、人々を導き照らしていく」

「そして人々の平和と安寧を願い、人々の平穏な暮らしを紡いでいく。それが紡ぎ人の役目」

なるほど、分かったような分からないような、俺は釈然としないままエイデナが先に口を開く。

「だが、本来この役目は、とても一人の人間が為せるものじゃないんだ。だから君が望めば拒むことだって出来る」

「それに危険も伴うし、なにより君が紡ぎ人として、本当にその災いを止められる保障は何処にも無いんだ」

「だから、その・・・」エイデナはどこか気まずそうに顔が俯いていて、まるで俺が断るのを待っているかのようであった。

「俺やるよ」

「えっ・・・」

「本当に?」

「ああ、本当さ」

「でも、どうして?」

「ん? さあ、どうしてかなあ」

「正直いうと災いがどうとか紡ぎ人の役目がどうとか、まだあんまりよく分かってないけど」

「それでも多分、きっとそれを誰かがやらなきゃいけない事だろうから・・・」

「かな」

「本当にいいの?」

「ああ、男に二言はないさ」

「ありがとう」

 そういうとエイデナは俺に抱きついてきた。

「ちょ、えっ!」

俺は急に抱きつかれて戸惑う。それも束の間、俺は気が付く。

エイデナが泣いている。

「泣くほど嬉しかったんですか?」

俺のその質問には答えず、エイデナはただ黙ったまま泣いている。

俺は、まだその涙の真意に気付けなかった。

これから待ち受けている運命に、翻弄されていくだなんて、つゆも知らずに。

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