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わたしの殺し屋  作者: 大里 トモキ
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 怒り狂う母からほうほうの体で落ち延びたわたしは、再び居間に足を踏み入れた。そこでは父があいかわらず何が楽しいのかわからない様子でナイター中継を観ていた。

 手強い母は後回しにして、とりあえず父から懐柔することにしよう。

 父には肩を揉んであげようと考えている。仕事で疲れた体をいたわってくれる心優しい娘をアピールしようというわけだ。今度はしくじらないようにしないとね。

「お父さん、肩でもお揉みしましょうか?」

 わたしは以前やっていたファミレスのバイトで培った接客術を生かし(お尻を触ってきた客の頭をトレイでぶん殴り、三日でクビになったけど)、満面の笑みで尋ねる。

 父はこちらを振り向きもせず、一言、

「ん」

 ……それ、いいのか悪いのかどっちなのよ。まあいい。都合よく了承したものと受け取ってやる。

 わたしは父の背後に回り、肩に手をかけようとしたところ、

「げっ……」

 フケが積もってところどころ白くなっている父の肩を見て、思わず呻き声が出てしまった。この人、ちゃんと頭を洗っているのだろうか。

 正直、ばっちくてあまり触りたくはなかったけど、これも親孝行のためだと思って耐えることにした。意を決して父の肩に手をかける。

 思えば父の肩を揉むだなんて、小学生の時に父の日のプレゼントとして〈肩たたき券〉をあげて以来だ。あの券はたしか十回分あったはずだけど、その日に一回使用されたきりになっていたはずだ。残りはどうして使われなかったのだろう?

 そんなことを考えながら父の肩をわしゃわしゃ揉み出したところ、父が悲鳴を上げた。びっくりしてわたしは手を離してしまう。

 父は飼い主に理不尽な仕打ちを受けた犬のような悲しげな瞳をわたしへむける。これ以上ひどい仕打ちは勘弁してくださいと言わんばかりだ。

「……今日のところはこれくらいにしておくね」

 相手に拒絶されてしまった以上、親孝行を強要することはできず、わたしはすごすごと居間を後にした。

 肩たたき券が使われなかった理由が今頃になってわかった気がした。

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