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わたしの殺し屋  作者: 大里 トモキ
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 そんなこんなで、母のお料理教室は一段落した。あとは鍋の中が〝いい感じになるまで〟しばらく待つことになった。その空き時間に、わたしはさっきから気になっていたことを尋ねてみる。

「いったいどうしたの? これまで料理を教えてくれたことなんてなかったのにさ」

「まるで、これまでせがんでも教えてくれなかったかのような言い草ね。あんた、一度だって頼んだことがある?」

「そりゃないけどさ……」

 だって面倒臭いし、必要だとも思っていないし、何より将来自分が家事をしている姿なんてまったく想像ができないし。

「まあ、なんていうかね――」ふと母は、普段はめったに見せないような穏やかな表情を浮かべて言った。「代々付け継がれてきた我が家の味ってやつを娘にも伝えておきたいなって、そんなことを思ったわけよ」

「ふーん」

 そういうものなのかねぇ。よくわからないけど、とりあえずうなずいておいた。

「それに女たるもの、煮物のひとつも作れなくちゃね。これで男を籠絡するのよ。やつらはこういう家庭料理ってやつにめっぽう弱いんだからさ」

「……もしかして、お父さんもそれで籠絡したわけ?」

 わたしが尋ねると、母は「さーて、どうだったかしらね」としらばっくれたように答えた。

 そのとき、玄関のドアが開けられる音がした。続いてドアが閉められるやけに重々しい音がし、やがて足音が廊下を渡って近づいてくる。どうやら父が帰ってきたようだ。

「おかえりなさい」

 母が玉のれん越しに言うと、「ん」という声が返ってきた。「ただいま」も、玉のれんをかき分けて顔を覗かせることもなかったけど、母は別に気を悪くするでもなく続けて言う。

「今日の晩ご飯は肉じゃがですからね」

「お」

 父は同じように一文字で答えたけれど、心なしか声の調子が跳ね上がったように感じられた。

 なるほど、たしかに効果はてきめんのようだ。

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