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わたしの殺し屋  作者: 大里 トモキ
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 わたしは絶句してしまった。こいつ、今なんて言った? 何やらろくでもない単語を聞いたような気がしたのだけど……。

 唖然としたまま前を見据える。そこにはわたしに言葉を失わせた張本人が立っていた。男は相も変わらず愛想のいい笑みを浮かべている。自分の発言になんの疑問も抱いていないかのような素振りだ。

 なんだかいたたまれなくなり、男から目を逸らしてしまう。

 困惑のせいでまともに働きそうにない頭をなんとか動かし、この不可解な状況を理解しようと試みる。

 なんていうか……聞き間違い?

 だって、そうでしょ。殺伐とした裏社会みたいなところならいざ知らず、平穏この上ない表の世界においてそのような物騒な人種が生息しているとは思えない。ましてや、そいつがわたしのようなごく普通の女子高生に気安く話しかけてくるだなんて展開は絶対にあり得ないはずだ。そんなのは社会の摂理に反するというものだろう。

 そこから自ずと導き出される答えはただひとつ――目の前にいる男はそのような存在ではないということ。先の発言も、単にわたしが聞き間違えたにすぎないのだろう。うん、そうだ。きっとそうに決まっている。

 そうやって自分を納得させたところで、わたしは改めて男と向き合った。相手がにこやかに笑っているものだから、ついこちらも愛想笑いを返してしまう。頬のあたりに微妙な引きつりを感じるけどさ。

「あのー、今なんて? わたしにはあなたが、『自分は何々だ』と言ったように聞こえたんですけど」

 自分の憶測を確かなものとすべく、引きつった笑顔で確認を求める。

 わたしの問いかけに男はこれまでになくにっこり微笑むと、聞き間違えようのない、はっきりとした声で答えた。

「私は殺し屋です」

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