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おもてウラ

作者: 上手苦言N

前書きを20,000文字も書く能力が僕にはない。

せめて前書きっぽく、はじめにだけ書いてみよう。


はじめに







上手苦言N

僕の名前は悟。僕にはやりたいことがいっぱいあるけれど、みんな僕を「変なことばかりしてるやつだ」といつも笑う。宇宙一の嫌われ者とでも呼んでくれ。でもそんな僕にだってたった一人お友だちがいる。僕より五歳上のお兄ちゃんで、名前は僕と同じサトルって言うんだけど、何があっても僕のそばにいてくれていつも励ましてくれるんだ。でもサトルには不思議なところがたくさん。


例えば僕がサトルに「どこから来たの?」と聞いても「どこだと思う?」とごまかしてばかりで教えてくれない。ほかにも僕の知らないことをいっぱい知っていたり、僕の知らないものをいっぱい持っていたりしている。気になることはいっぱいあるけれど僕のかけがいのない友達であることに変わりはない。






ある日サトルがこんなことを言っていた。

「インターネットっていう途轍もないものが作られているんだ」「インターネット?」

「そう。簡単に言うと線が繋がってないのに遠くにいる人とおしゃべりできるもの。」

「へぇ!おもしろそう!」

「使ってみる?」

僕はサトルから借りた「ケイタイ」の使い方を教えてもらって、さっそくインターネットを使ってみた。「ちょっと待っててね」そう言うとサトルは遠くのほうへ走っていった。

「もしもし〇〇?」

「うん、僕だよ!」

ぼくはびっくりした。つながっていないのにまるで目の前にいるかのようにしゃべっている。



これは不思議だらけのお友達サトルと笑われ者の僕のお話。

僕はインターネットの良さを考えた。一番はやっぱり遠くの人とつながるところ。僕は中学生だけど職場を持たない会社を作った。インターネットで全ての仕事を行うことができて、サトルに聞くと「テレワーク」と呼ぶらしい。中学生が起業したということでニュースになった。ドキドキしながらそのニュースの反応を見るとまぁひどい。

「学校にいって勉強しろ」

「ガキに何ができる」

「仕事は職場に行ってやるもんだ」

一生懸命考えて、いっぱい勉強して、みんなに広めようと会社を作った。それなのにみんなはどうだ。誰も僕に味方してくれないじゃないか。僕は泣きながらサトルのもとに向かった。

「きみならできる、きっと」

そういって僕をぎゅっと抱きしめてくれた。

僕は一歩、前に進んだ。




またある日、僕のクラスメイトがいじめられているのをみた。

「おい豚鼻。」 


ひどい。バシッと言ってやろうと思ったけれど、喧嘩になったんじゃあ、僕もあいつらと同じだと思いやめた。

帰り道、たまたま彼女と会った。

「大丈夫?」大丈夫なわけない。

「相談のるよ」「何かできることある?」いろいろ考えたけれど結局「大丈夫?」としか言えなかった。

「ありがと。大丈夫だから。」彼女はただ笑っていた。

目は涙でいっぱいだった。


それからしばらく彼女は学校に来なかった。「もしかして…」最悪の事態を考えて一週間、授業に遅れて一人の学生が教室にやって来た。「転校生?」そう思ったけど、その学生は彼女の席に座った。休み時間。あの時「豚鼻」と言っていた人たちがすぐに彼女の元へ行き、いかにも大好きアピールをしていた。

「可愛いね。転校生?」いじめっ子が聞いた。

「ううん、あの時の豚鼻です。整形したの」

「整形」という言葉を聞いたその時、空気が変わった。もう「豚鼻」ではない。でも整形に対する抵抗感から、彼女は距離を置かれるようになってしまった。放課後サトルに今日の出来事を話した。

「整形かぁ。まぁそう思うのも無理はないかもね。僕の周りではもうそんな空気は流れていないけど。お化粧はいいのに整形はだめ。なんでなんだろうね」

言われてみればそうだ。僕のクラスメイトの女の子はみんなお化粧をしている。その証拠に顔を洗ったら顔が変わるし、顔を洗うとすぐにどこかへいってしまう。お化粧直しにトイレにでも行っているのだろう。


ぼくは整形についてもっと知ってもらおうと動画を2つ作った。一つは実際に自分が整形してみて、心の変化や周りの反応を紹介する動画。もう一つは、整形したことのある人に顔と声をかくすから、と許可をとって周りの反応や、整形して良かったこと、悪かったことを話してもらう動画。結果はどちらも僕が起業したときと同じで反対の嵐だった。

「顔を変えるとかありえない」

「なんで広めようとするの」

「なんか嫌い」

お化粧して外を歩く。みんなが見ているのは「嘘の自分」だ。自分に合う仮面を作ることに精一杯で、本当の自分を見せることは隠れたままだ。

整形をして外を歩く。みんなが見ているのは内側から変化した自分だ。もう仮面なんてありゃしない。僕はサトルに動画を作ったことは正解だったのか聞いてみた。

「どうだろうね、世間の流れを変えるのは簡単じゃないよ」

「でもね、きみならできる、きっと。」

そういって僕をぎゅっと抱きしめてくれた。

ぼくはまた一歩前に進んだ。



五年後。

「明日遊ばない?」「おっけー、何する?」もう誰も電話なんてしない。自分の周りはほぼみんなスマホを持っている。SNSで当たり前のように会話をしている。インターネットも今や当たり前に使われている。五年前あれだけ罵られていたインターネットを今みんな使っている。


もう一つ変わったことがある。インターネットが広まった影響で時・場所問わず何でもできるようになった。電話やメールはもちろん音楽も聴ける。ネットサーフィンもすぐにできる。動画を快適に見られるようになり面白い動画を投稿する人が増えてきた。誰もが発信できる時代が来たため個人の意見で世間の風向きが変わるようになった。整形もまた当たり前になりつつある。ネットはいまや時代を変える力を持っている。五年前に僕が作った動画も再評価されてきて「整形=悪」のイメージは薄れていった。人々はネットに囲まれた生活となっている。

何をやろうと「意味わからない」と言われ、何もやっていなかったとしても、なんか嫌いという理由でなんとなく嫌われていた自分に世間は手のひらを返し始めていた。

「〇〇やばい最高。」「意外といいことやってんだな。」と、何となく好きになる人が増えてきた。ちなみに俺は腕時計のように身につけることで信用が寿命の代わりとなってしまう(信用がゼロになると同時に死を迎える)「信用時計」の制作最中だが、もう批判する人はほぼいない。世間に認められ始めたのはインターネットのおかげだ。いや、どんなときも支えてくれたサトルのおかげの方が大きい。彼とは滅多に会わなくなったけれど、いつかお礼を言おう。

 

そう思って五年が過ぎていった。




ある日、私は久しぶりにサトルと食事の約束をした。


しばらく食事をした後、サトルは突然重い口調で話し始めた。

「これ以上私がいたら、君の人生がおかしくなる」

「どういうことです?」私はすぐに聞き返した。

「あぁ、ごめんごめん。わけのわからないことを言ったね。そんなことよりさ、ずっと思っていたけど、俺ら似てない?」

「ほんとですね!」

言われてみれば彼と私は似ている。日焼けした肌、痩せこけた体、イライラしがちな性格を除いてはかなり似ている。

「整形して似せてくれたんですか?」

「まさか。わはははは」

彼の笑いは愛想笑いだった。





翌日、サトルが溺死したというニュースを見た。麻薬密売人であり、薬物常習犯で指名手配を受けていたサトルは、遠くの南国の島へ仲間と逃げていた。その仲間とサーフィンしていた時、海に溺れ死亡。のちに警察が発見したそうだ。これは大きな話題を呼び、「時代の波に飲まれない男、荒波に飲まれる」と連日報道されていた。


五年後、悟が溺死したというニュースが世間を賑わせた。麻薬密売人であり、薬物常習犯で指名手配を受けていた彼は、遠くの南国の島へ仲間と逃げていた。その仲間とサーフィンしていた時、海に溺れ死亡。のちに警察が発見したそうだ。これは大きな話題を呼び、「時代の波に飲まれない男、荒波に飲まれる」と連日報道されていた。


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