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4話

 彼女は傷ついた馬に、文字通りムチをうち、城に向かって疾走していた。


 全くなんて酷い帰宅劇だろう、と誰に言うわけでもなくこぼしていた。


 彼女は学校が長期休日になったので、遠くにある別荘に数日間滞在していた。


 そして、もう十分堪能したと思うまで滞在した彼女は、そろそろ帰ることにし、もう一日滞在してから帰宅し始めた。


 だが何度かモンスターにエンカウントし、その上雨に見舞われてしまい、そのせいで行きの何倍も時間を消費してしまい、しまいにはこれだ。


 疲れきりストレスが溜まっていた兵士は、国付近の草原を目にして気が緩んでしまったのだろう。


 盗賊からの不意打ちで、酷く混乱していたのだから間違いない。


 結局全員殺されてしまい、絶体絶命。思わず物語のように勇者が助けに来てくれる妄想までしてしまったほどである。


 だが、やって来たのは勇者ではなく・・・・・


 そこまで思いだし、身を震わせる。


 やって来たのは地獄の猟犬だった。猟犬は賊を瞬く間に殺戮した。


 あの猟犬!


 身長は2メートルほど、狼なのに二本の足で大地をしっかり踏みしめており、青みがかった体毛を体に纏っていた。


 そんな人狼が賊を賊を・・・・・


 あの人狼が賊を皆殺しにしているシーンを何度も頭のなかで再生していたら、いつの間にか城の前まで着いていた。


 夜が明けていた。朝の日差しを浴びているとこのまま眠ってしまいそうなったが、なんとか堪え、王に自分に起きた災難について報告しに城内に入っていった。


 王がいる寝室に入っていき、彼女の有り様を見ていったい何があったのかと、血相を変えて聞いてきた。


 彼女は話した。


 別荘を出てから度々モンスターに襲われれたこと。天候が優れず、何日か途中の町で身動きできなかったこと。そして盗賊のグループに襲われたこと。


 襲われたときに出てきた人狼について話そうとしたが、何故だか話そうと思えず、なんとか隙を見て逃げ出した、と話をはぐらかした。


 とにかく無事で良かった。とにかく体をきれいにして休みなさいと言われ、部屋を出て身を綺麗にし、ベットに入った。


 いったい何故私はあの人狼について父に話さなかったのだろう、と微睡んだ思考で考えてみた。そういえばあの人狼の目、なんだか悲しそうな目をしていたなと思ったが、すぐに睡魔は襲いかかり、彼女は、王女スカーレッドは眠りに落ちていった。


 彼女は夢を見た。


 その夢にとても悲しそうな狼の遠吠えが響いたが、起きたときにはもう忘れていた。





 次の日、起床した幸男はベッドから起き上がる前に、まず耳を済ませた。


 何か変化がないか探るためである。


 変化なし、続いて彼は鼻をひくつかせた。


 変化あり。


 昨夜の助けを求めた女が城内にいるのだ


 これはいけない、と彼は思い、彼女に鉢合わせしないように自らに戒めた。


 今は大体朝の4時ほどだろう、まだ日が上がったばかりのようだ。


 だから彼は日課のトレーニングをするために、誰もいない訓練場へ足を運んだ。


 朝食が部屋に運ばれてくるのは7時半ほどだ。それまでに帰ってこなければならない。


 そう自らに言い聞かせ、早速彼はトレーニングを始めた。誰かに殺されないために。


 6時ほどになった時に、どうやら兵士達が起き始めたようだ。


 そろそろ切り上げるか、と思い部屋に向かって小走りで戻っていった。





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