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act-17

 ここ最近、逝聖者(サンタクロース)に出会うものが増えている。

 学園の中にも願いを叶えて貰ったかわりに何かしらの代償を支払った生徒がいる。


 * * *


 今日も月明かりが照らす中、雪がハラハラと舞っている。

 イヴは赤い革張りの本をベッドの上に置くと、その隣に腰掛けた。

 目の前にはバルコニー。いつもターシャが閉めてくれるカーテンを開けてベッドから空を見る。

 眩しいほどに明るい月が正面にあった。


「……この世から消してほしい」


 あれは、夢だったのだろうか。

 いつ叶えてくれるか分からない願いを小さく呟くと、イヴはベッドに倒れる。


「なんで叶えに来ないのよ」



 あの人が居ない世界なんてつまらない。


 だから消えてしまいたいの。


 死んだらあの人に会えなくなってしまいそうだから、


 死ぬのではなくて、消えたい。



「早く、」


 じゃないと、あの人に会えなくなるかもしれない


 でも『あの人』は誰?


「まだ起きてたの? イヴ・フェイル」


 イヴ以外、誰も居ないはずの部屋に、ここ最近で少しだけ耳慣れた声が響いた。


「……シヴァ、さま」

「ふふ。シヴァでいーよ。こんな遅くまで起きてるなんてどうしたの?」


 上体を起こし声のした方へと視線を向けると、そこには薄紫の髪の男がいた。

 へにゃりと力の抜けた表情で、イヴに手を振って。


「シヴァ。今日ノースは?」

「誰かの願いを叶えてるはずだよ」

「本当に貴方はお目付け役なの?」

「……好きでやってるわけじゃないし、今日はいーの」


 面倒そうにそう答えたシヴァの足元は黒いブーツで包まれていて、なんだかそれが、とても不思議に思えてじっと見つめてしまう。


「あいつを待っていたの?」

「……これを、知っているかと思って」


 シヴァのその問いにイヴは頷くと、隣に置いた本を手に取る。

 ノースを待っていたその理由は、この『逝聖者(サンタクロース)の始まり』を知っているか、この話が本当かを聞きたかったからだ。


 聞いたところで何がどう変わるわけでは無い。

 ただの自己満足だ。

 でも、それでも、聞かなければいけない気がした。


「……ふーん」


 シヴァはイヴが差し出して来た本を受けとると、ペラペラと中を捲る。

 月明かりがあるとは言え、暗い部屋の中で良く見えるなとイヴはぼんやりそんな事を考えた。


「あなたはこの話を知っている?」

「……作り話とは思わないの?」

「どちらだろうとは思った」


 シヴァの黒い瞳がイヴをじっと見つめる。

 黒曜石のような深い黒に見つめられるのに居心地の悪さを感じ、とっさに視線を外した。


「本当の話だよって言ったらどうする?」

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