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魔法の星  作者: メーティス
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転入生

魔法とか使えたら良いですよね~。

リコリスは朝の日差しをベッドの上で感じとり、のそりと体を動かした。

もうすぐナタリーが起こしに来るまではこのままベッドの中にいよう。

そう思った瞬間.....、


「リコリス、そろそろ朝だから起きてちょうだい。」


まるで歳を感じさせない甲高い声が聞こえてくる。

この声がいつもリコリスを起こしてくれる優しい叔母の物だ。

リコリスはこの西洋風の館で、叔母のナタリーを2人暮らしをしているのだ。

いつまでも寝ている訳にもいかず、ベッドからおり、軋む木製の階段を下りていく。

明るい日差しが降り注ぐリビングには美味しそうな匂いを漂わせたカリカリのベーコンと半熟の卵の目玉焼きが、オレンジジュースと共にテーブルに並べられている。


「わぁっ!今日の朝食もとっても美味しそうね!」


「ふふ、ありがとう、リコリス。」


嬉しいそうにキッチンから体を乗り出した銀髪がまるで本物の銀の糸のような美しく優しいそうな翡翠色の瞳の30代位の女性。

これが私の叔母のナタリーだ。

どうしたら、こんな若さを保っていられるのか全く理解はできないが、とっても優しい叔母であることだけは確かな女性だった。


「それにしても、どうして今日はそんなにはしゃいでいるの?」


「ふふっ!実は今日は誕生日以外にも特別な事があるのよ!」


そう、今日はリコリスの誕生日なのだ。だが、いつも慎ましやかに誕生日を行うナタリーがこのはしゃいぎようだと必ず何かがあるのは歴然だった。

ナタリーったら、一体何を考えているのかしら?

若干の不安と期待を覚えつつも、朝食をかきこみ、

学校の準備をする。

リコリスは中学一年生で、イタリアの中学校に通っている。

実はこうみえてリコリスは最近流行りの日本人とイタリア人のハーフなのだ。

だが、見た目はチョコレートを溶かしたような茶髪に、澄んだ湖のような水色の瞳で、日本人的な特徴は全く受け継いではいないのだが。

父と母は自分が小さい頃に亡くなったそうで、今ではナタリーがすっかり親がわりだ。


「リコリス、先に車で待っているわね?」


「.....うん。」


ナタリーに返事をしつつ、学校の準備を終わらせる。

なかなか気に入っている可愛い制服を着ると、腰元まで流れている茶髪をピンクのリボンでポニーテールに結び、急いでナタリーのラフな黄緑色の車に乗り込む。


「シートベルトちゃんと閉めた?」


「うん!大丈夫だよ!」


いつも登校時はナタリーに車で学校まで車で送って貰っているのだ。

最近はひまわり畑に囲まれた茶色西洋風な自分達の住んでいる屋敷を見送るのが自分の中でのマイブームでもある。

やっぱりとっても綺麗だわ!


「じゃ、行って来ます!」


「行ってらっしゃい!」


軽く挨拶をし、校門えと歩いていく。

すると後ろからタッタッタッと急いで歩いてくる音がして振り返る。


「おはよう!リコリス。」


まるで熟したリンゴのような赤毛の髪を横に一つに纏めている可愛いらしい理知的な緑色の瞳の小柄な少女だった。


「リンダ、おはよう!」


彼女はリンダと言って私の数少ない親友の一人だ。

彼女の親も亡くなっていて、私と少し通じる所がある。

だが、私よりはずっと元気でクラスのムードメーカー的存在だ。


「そしてリコリス、お誕生日ぃ、おめでとうお!」


ヒラヒラと私の周りを花びらが舞う。

手の中に貯めていた花びらをリンダがばら撒いたのだ。

わざわざ花びらをかき集めてくれたのだろう。

そんな些細なきずかいに胸が熱くなる。

私には勿体無さすぎる友達ね。


「あ、ヤバい、そろそろいかないと予鈴なっちゃうよ!!」


「うん、急ごう!」


リンダの手をとって走りながら教室へと向かった。





「今日は転入生を紹介します。」


少し痩せた感じの担任の先生がドアの方に向かって手で合図をすると、ドアがゆっくりと開く。

入ってきたのは太陽に照らされたような金髪の髪の毛を短く整えていて、薄い海のようなマリンブルーの瞳の整った顔立ちの男の子だった。

でもあまり私のタイプではないわね....。


「はじめまして!これからこの学校でお世話になりますファンドと申します。よろしくね!」


ファンドがウインクするとクラス中から歓声が上がった。

どことなく軽い感じがするがクラスの皆は彼に好意的なようだ。

私はあまり軽い感じの男の子は好きじゃないのだけど....。


「それじゃあ、丁度そこの席が開いているから、そこに座ってね。」


なんと担任が指差した席はリコリスの隣の席だった。

冗談じゃないわ!どうして隣の席なのよ....!?


「よろしくね!.....リコリス。」


「よろしく...。」


わざと彼の名前を呼ばなかったのだが、映画スター並みの爽やかな笑顔で返されてしまった。

まったく、嫌みが通じないのかしら.....?








「リコリスの家に行きたいな!」


そう言ったのは、図々しくも今日合ったばかりのファンド君だった。

なんて図々しいのかしら!

一応これでもリコリスは花の中学生なのだから、少し位遠慮をしてほしい。


「じゃあ、私も行くよ! 行ってもいいよね?」


唐突に横から声が入ってきた。

リコリスの机に肩肘を立てて聞いてくる。

まさかリンダまで私の家に来たいと言うのは思ってもみなかったが、リンダなら私の家に連れて来てもいいだろう。


「じゃあ、今日は2人で行こうか。」


「お菓子持って行くね!」


結局いつの間にか私の家に集まる事になってしまった。

だが、もうこうなってしまえば断る事などリコリスにはできないも当然だった。





***********************





「いらっしゃい! ゆっくりしていってね。」


ナタリーが焼いたチョコチップの乗ったクッキーとミルクを三人分を机の上に用意する。


「「ありがとうございます!」」


私の隣で、緑色のソファーに腰掛けているのはリンダとファンド君だ。

2人の格好は、リンダが薄いピンクのワンピース。

ファンド君は青い紺色の薄着を着ていて、なかなか絵になる。


「私はちょっと用事があるから、これで失礼するわね?」


そう言い残すと、ナタリーはさっさと部屋を出て行った。

ナタリーったら、プレゼントの準備でもこっそりしてるのかしら?

そうだとしたら、この前テレビで見た花のブローチなんか良かったわよね....。


「ところで、どうして君達は地球に来たんだい?」


リコリスが誕生日のプレゼントについて考えていると、その思考を遮るように変な質問が飛んできた。

隣に座っているファンド君を見るが、彼は至って普通(普段からにこやかな顔だ。)な顔をしている。


「いったい何を言っているの?」


リンダも同じ事を思ったようで、微かに形の良い眉をひそめている。


「何って、そりゃあ地球に来たのはどうしてだって聞いて..「それは聞いたわ! そうじゃなくて、ファンド君の言い方だと、まるで地球以外の惑星でもある....、つまり私達が宇宙人のような言い方だわ!」


「アハハ、僕達が宇宙人な訳ないじゃないか、僕が言っているのは君達2人の魔女がどうしてこの地球に来たのかって事だよ。」


ファンド君の言葉を聞いて、思わずリンダと顔を見合わせる。

リンダは首をすくめて頭を横にふりふりとして、

まるでコイツの頭は大丈夫なのかと言いたげだ。


「ファンド君、頭打ったんじゃないの?

 私とリンダが童話や神話に登場する魔女ですって?どう見たら私達がお婆さんに見えるのよ!」


「───?まさか自分達が魔女だという事を知らないのかい?」


「知るもなにも、魔女なんかじゃないって言っるでしょう?」


ファンド君はそっと下を向き、何かブツブツと呟いている。

本当に大丈夫だろうか? もしも危ない宗教などに浸っているのだとしたら、なるべく近寄らないようにしなければ.....。

しばらくブツブツとファンド君が呟いた後、(その間リンダと私は不気味な物を見る目でファンド君を見ていた。)


「....ごめん、ちょっと急用を思い出したから帰るね!」


ファンド君は持って来た自分のカバンを乱暴に掴むと、急いでドアを開けて帰っていった。



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