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黒竜王の娘は旅に出る  作者: 海・海
第二章:人間との暮らし
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第一話:就職活動

ー魔の山付近ー カルガ街


「着いた~!!!」


魔の山を下って数時間。ついにマリーは人間の街の到着した。

途中で魔物との戦闘があったがその部分は割愛する。


「お父さんに拾われたのが四歳のころだったから、十一年ぶりに人間が見れるんだ!やった~!!!」


やっぱり人間が恋しい。そもそもお父さん以外の竜はたまにしか来ないから人がたくさんいるって結構新鮮なのだ。


「よし!さっそく街に入ろ……」



****



「身分証は?」

「……持ってません」


門番につかまってしまった。そういわれても身分証なんて持ってないです。どうやったら手に入るの?


「身分証がないなら、仮のものを銀貨一枚で借りれるぞ。そうするか?」

「はい!そうします!」


確かお金はプレゼントの後にお父さんが持たせてくれた。そこに銀貨一枚ある。


「これでいいですか?」

「よし、通っていいぞ。早く街で本物の身分証を発行して、それが終わったらその身分証は返せよ」

「は~い」


ふう、お金があってよかった。山の中じゃお金なんて必要なかったけど、街じゃあたくさんいるってお父さんが言ってたし、何とかして稼がないとな~。



****



人 人 人


周りを見渡せば人だらけ。こんなにたくさんの人を見たのは初めてだ!すごい光景だ!!!



……まあ、久しぶり人間への感動はこれくらいにして、そろそろ重要なことを決めなければ……


「街に入ったあと、どうしよう」


長い間山で暮らしていた私でも、職業の種類くらいは分かる。そんな職業をどれにするか迷っているのだ。



今のところ候補はこれだ


鍛冶師:武器、防具などを作る

錬金術師:薬や毒、様々な効果のある薬品を作る。ほかにも魔道具などを作る。

料理人:料理をふるまう

ハンター:魔物や盗賊を倒すことを生業とする



(鍛治は女だからってなめられそうだし、錬金術は苦手だし、料理は…悪くないかな?でもなんかちょっとな~。ハンターは、これが一番簡単そうだけど、それこそ女だからってなめられる)



余談だが、確かにマリーは他の技術に比べて錬金術はいまいちだが、それでもそこらのプロより腕はいい。



(お父さんからは鎧をもらったからハンターになるのが一番いいんだろうけど、好きなことやっていいんだったらハンター以外もいいな~。よし!片っ端から声をかけてみよう)


結果


鍛冶師


「あん?女なんかに鍛冶が務まるわけねえだろ!帰れ!」


こっちから願い下げだ!


錬金術師


「あなたも私と同じ道を歩むのですね?ではまずこの薬の開発を……そして……フフフフフフ……」


却下!具体的に言えないけど、なんかヤバい!


料理人


「ごめんね。もう人手は足りてるんだ」


これが第一希望だったのに~



****



マリーが就活に悩む大学卒業生のごとくとぼとぼ路を歩いていると、視界にある紙が目に入る。


(ん?何これ?宿屋 銀狼の巣 新人募集中?う~ん、宿屋か。考えてなかったけど、悪くはないかな)


書類に目を付けたマリーは、早速紙に書いてある場所へ向かうのだった。



****



「いらっしゃいませ~。銀狼の巣へようこそ。お泊りですか?」


出てきたのは私と同じくらいの女の子。茶髪青眼のショートヘアー。ちなみに私の容姿は銀髪に紅眼だ。あ父さんはかなり美人の部類に入るっていうけど、私はそうとは思えない。



余談だが、幼いころからドラゴンロードの美しい容姿を見ているマリーはちょっと美的感覚がずれている。マリーが美人なのは本当だ。



「違います。ちょっとこの募集用紙を見て雇ってほしいな~って」

「あ!新人希望ですか?ちょっとお母さん呼んできます。おかあさ~ん」


あとで聞いた話だが、この宿はこの親子二人で切り盛りしているらしい。それで人手が足りないそうだ。


「あんたが新人希望かい?」


どうやら来たみたいだ。さっきのこと同じ髪と眼をしている。が、何やら値踏みするような視線を向けてくる。


「なかなか美人じゃないか。これなら接客とかできそうだね」


うっ、人里離れた山の中で暮らしていた私に接客業は向いていない気がする。ここは断らないと。


「すみません。接客業は苦手で、ほかに何かありませんか?」

「なんだい?ほかにやることって言ったら、客に料理を出すか、部屋の掃除くらいだよ」

「料理ですか!それでお願いします」

「料理に自信があるのかい?だったら厨房貸してやるから、何か一品作って見せな」


よし、これで料理もできる。新しい仕事ができて、料理もできて、一石二鳥だ。



ー厨房ー



タタタタタタタタタタタタ


野菜や肉の繊維が切れないように丁寧に、そして早く切る。


パッパ


素材の味が消えないように、素材の味を生かせる最適な配合で調味料をかける。


ボッ


最適な火加減で焼く時間は秒単位で最適な時間、全方向から均等に火が入るように。


サッ


見た目も見苦しくないように盛り付ける。


「できました~」


(さて、お父さんに鍛えられたこの料理、反応はどうかな?)


ごくり


唾をのんだ二人の思考は一致していた。


((おいしそう))


料理の手際はよかったし、香りだけでもおいしさがわかる。ついつい期待してしまう。


パクリ


「!!!!!」


「どうですか?お味は?」

「おいしい!おいしいよ」

「…新人、名前は?」

「マリーです」

「よし!マリーは今日からうちの料理人だ」

「やった~!」



こうして、マリーの就職活動はひとまず成功に終わったのだった。

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