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黒竜王の娘は旅に出る  作者: 海・海
第一章:竜の娘の旅立ち
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第二話:黒竜王の娘の旅立ち

今回は少し長めです。

「なあ、黒斗。お前、あの娘についてどう思う?」

「また女の話か?あきないなお前」

「じゃあ黒斗は何の話がしたいんだよ?」

「この間買ったラノベで主人公がな……」



****



「夢……か?ハッ、懐かしいものだな」



俺……いや、我の名は竜崎黒斗リュウザキクロト。察しの通り、異世界転生者だ。


歩いているところをトラックに轢かれるというありがちなパターンで転生した。

第二の人生(竜生?)があることを喜んだ俺は、まず人化の能力を手に入れた。

なんとなく人の姿をイメージしたらできた。

自分で言うのもあれだが、俺は前世の時は天才だった。

周りからは神童なんて呼ばれていたし、やることなすこと簡単にこなせた。それに期待した両親は英才教育も軽く上回るほどのスパルタ教育を施した。勉強、 武術、料理、裁縫etc…。

様々なことを叩き込まれた。

そんな俺が数少ない自由時間で得た趣味は読書だった。

だが、学校で天才のレッテルを張られている俺はみんなの前でラノベなんて読むわけにもいかず、隠れて読んでいたが……。


あいつはそんなこと気にせず俺の友達でいてくれたな。

ちょっとスケベだけど、ノリのいい奴で、まったく興味ないだろう俺の話も真剣に聞いてくれて、俺が勉強を教えたりもしたっけな。


「いかん、涙がこぼれてきた」


もうかれこれ1000年以上前の話だ。

この1000年で前世で学んでなかった鍛冶技術とかも習ってすっかり何でもできるようになってしまった。

前世なんて昔のこと、俺はほとんど忘れてる。

せいぜい今みたいに夢で思い出すくらいだ。知識はちゃんと頭の中にあるし、紙にも記してあるがな。


「もうあいつは死んでいるだろうし、いつまでも昔のことを考えてもしょうがないな」


さて、マリーにあの話をしないとな。



ーマリーSideー



「ふぁ~あ」


今日は私の15歳の誕生日だ。お父さんは毎年私にプレゼントをくれる。

それに、この日はお父さんの友達も来る。私はその人たちも大好きだ。

だからとっても楽しみ。


そう思っていたら、突然お父さんが……


「マリー、話がある」


と、とても真剣な顔で言うので、私も真剣になって聞くことにした。



****



「さて、では唐突だが、お前には旅に出てもらう」


一瞬、言われた意味が分からなかった。


「どういう事?」

「お前も15歳だ。人間の中では成人しているし、我が生きるすべを叩き込んだ。何も心配はいるまい。それに、お前は我やほかの竜と友達でも、人間の友達はいないではないか。だから、旅に出てこの広い世界を見て回り、人と出会い、我の下では学べぬことを学んでほしい。それに、お前も人には会いたがっていただろう」

「うっ……」


確かにここでの日々は充実しているが、それでも人が恋しくなる時がある。

まさかばれてたなんて……


「ここに連れてくることも考えたが、我はあまり人間が好きではないし、知り合いもおらん。それに、案外旅はいいものだぞ。ここにはない色々なものが見える」


元人間なのに何言ってんだと思うかもしれないが、我だって最初から人間が嫌いだったわけではない。

それに人間すべてが嫌いなわけではないが、それでも仲良くするのはためらわれる。

昔仲が良かった人間はもう死んでしまったしな。


「だから、行って来い」

「……分かった!私、旅に出ます。また会えるよね?お父さん」

「ああ、これを今生の別れにするつもりはない。生きていればまた会えるさ」


じゃあ早速準備を……


「準備が終わったら外に出ろ。我の友全員に招集をかけた。そろそろ来る頃だ」


確か、お父さんの友達は4人くらいいて、その子供も来たりするのかな?



****



「よ~ぅ。きてやったぜ~」


そう言ってやってきた男性は、当時マリーは知らなかったが、赤竜王レッドドラゴンロード バーンである。


「お久しぶりです。クロト」


そう言って優雅に一礼した女性は。当時マリーは知らなかったが、青竜王ブルードラゴンロード ティアラである。


「遠路遥々やってきましたぞ」


そう言って跪く男性は、当時マリー以下略、緑竜王グリーンドラゴンロード ギュンターである。


「久しぶり~♡ クロちゃん」


そう言ってほほ笑む女性は、当時以下略、茶竜王ブラウンドラゴンロード カーラである。



「久しいな、みなよ。息災であったか?」

「お父さん、もう準備終わったよ~。あっ!みんな来てる。珍しい」


そう、この竜たちが同じ場所にそろうことはほとんどない。珍しい光景である。それに加えて……


「マリーちゃん」「姉ちゃん」


最初に言ったの女の子の名はリリア。ギュンターとカーラの間に生まれた子供だ。次に言った男の子はギュナス。同じくギュンターとカーラの間に生まれた子供だ。


竜の成長はものすごく遅い。赤ん坊から大人になるのに何百年もかかる。この二人はマリーより長く生きているのだが、精神年齢はマリーのほうが高いので姉ちゃんと呼んでいる。


「みんな来てくれたんだ」


「そりゃあ友の娘の門出祝いだ。来ないわけにはいかないだろ」


バーンさんは明るい性格で、人型の時は赤髪赤眼のイケメンだ。

それに私の誕生日には毎年来てくれるいい人だ。


「成人おめでとう」


ティアラさんは清楚系美人で、あと胸が大きい。多分私と同じくらい。

クールで冷たいイメージだけど、とても優しくて頼りになる。

青髪青眼がとてもきれいだ。


「大きくなられましたなあ~」


ギュンターさんはめったに来ないけど、来た時はとても優しくしてるから、何か事情があるんだと思う。今回も忙しいのに来てくれたと思うと、感謝してもしきれない。

緑髪緑眼のイケメンで、ティアラさんの青い眼も好きだけど、こっちの眼も私は好きだ。


「久しぶり~♡」


カーラさんはほんわか系美人で、ギュンターさんと同じくめったに来ないけどとても優しい人だ。

あと、母性があるのかな?一番接する機会がないのになぜか好きになる。

胸がものすごく大きい。私も大きいほうだと思うけどこの人に比べたらスイカとメロンくらいの差がある。

茶髪茶眼だ。


リリアとギュナスは私の立った二人の友達だ。精神年齢だって一番近いし、二人とも大好きだ。



「そういえば、あ奴は来んのか?ちゃんと呼んでおいたのだが」

「えっ、まだ来るの?」

「ああ、一人だけな。お前にも紹介していなかったな。まあ、扱いが難しいやつでな」


お父さんがそう言ったら大人の竜たちも心底同意するような顔をした。どんな人だろう?


「ゲッ、来た見たいだぜ」

「ゲッて……」


あのめったなことでは気にしないようなバーンさんがゲッて……どんな人だろう?


そして、降りてきたのは美しい純白の竜。

そして……人化を使った。



美しい。最初に思ったのがそれだった。

純白の髪、薄い銀色の目、色気のある四肢、水晶のように透き通った肌、まるで女神を思わせるような姿だった。


だが……次の一言で…………


「ク、クロトさん。ああ~、私なんかが来ちゃってごめんなさい。でも、あなたが呼んだんですからね。でも、え~っと、え~と」


ああ、残念な人だ。


……そう思ったと同時に、みんなの態度の理由がなんとなくわかった。


「ハクア、お主はまだそんな態度を……あの時のことは水に流すといったではないか」

「で、でも、そんなこと割り切れるわけないじゃないですか~」


どうやらあの白竜……ハクアさんかな?は、お父さんに負い目を感じているみたいだな。


「あの~」

「ヒッ!人間」

「えっ!?」

「ハクア、この子が前に話した我の娘だ。危険はない」

「そ、そうなんですか~?よ、よろしくお願いしますぅ~」

「ハクアは人間が苦手でな。多少の無礼は許してやってくれ」


お父さんの言葉に私はびっくりした

。竜はそのどれもが強大な力を持っている。

しかも、あの竜から感じる力は態度からは信じられないけどお父さんと同格だ。

それが人間を怖がるなんて……


「昔、色々あったのだよ。あまり深くは聞いてやるな」

「…………」

「お~い、何しんみりしてんだ~。早く飯食おうぜ~!」

「青竜の巣の周辺に住む極上の魚を持ってきました。早く食べましょう!クロト」

「おお、海の魚は久しく食べてないな。マリー、海の魚はうまいぞ!ハクアもこっちにこい!一緒に食べるぞ」

「待って、お父さん」

「ああ、クロトさ~ん」



その後、私たちの食事会は続いた。

海の魚はおいしくて、旅に出たらまず海を目指そうと決めた。

ほかにもいろいろな地域の食材があって、とても幸せだった。



ー午前1時ー



「さて、食事会も住んだことだし、そろそろマリーを見送らねばな」

「もうお別れなんですか!寂しいです」


この数時間でハクアさんとはものすごく仲良くなった。

意外と話が合ったし、あと、お父さんの話になるとものすごくがっついてきて、私のハクアさんに対する好感度は上昇した。


「マリー、成人祝いだ。受け取れ」


そう言ってバーンさんが渡したのは赤い宝石が入った指輪だ。


「俺の魔力を結晶化した石を指輪にはめたんだ。火魔法が使いやすくなるぜ」

「私からはこれをやろう。私の魔力の結晶をネックレスにしたものだ。水と氷の魔法が使いやすくなる」

「ふむ、では私からはこの靴を差し上げましょう。私の魔力が込められてますから風魔法が使いやすくなるし、空も飛べますぞ」

「私からはこれを送るわ~。この花飾りの中央は私の魔力の結晶でできてるから、土と植物の魔法が使いやすくなるわよ~」

「あ、ありがとうございます!」


嬉しい、私のためにこんなものを用意していたなんて!


「えぇ!?な、なら私からは、これをあげます!えいっ!はい、これで一回だけですが、雷魔法を使うことができますよ。使い方は『発動!』と念じるだけです」


ハクアさん、今創ったな。

ていうか魔力の結晶なんて一瞬で創れるほど簡単なものじゃないはずだけど。

ていうか雷魔法って何!?


おっと、そんなことより、お父さんは何をくれるんだろう?


「マリー、我からはこれを送ろう。我が昔脱皮した時の鱗を加工した鎧と刀だ。だが、これは人間の間では目立つだろうから異空間に入れて、もしもの時に使え。そして、普段はこの鉄の鎧と刀を使え」


お父さんの鱗で作った装備!?そんなすごいものを……


「わかりました。私、絶対この装備にふさわしいくらいに強くなります」

「そして、もうひとつ」


ん?まだ何かあるのだろうか?




「われの家名をやろう。お前には言ってなかったが、我の名はクロト・リュウザキ。これがフルネームだ。そしてお前はたった今からマリー・リュウザキを名乗るがいい」


お父さんに家名が!?それに私もそれを名乗っていいなんて……ああ、最高のプレゼントだ。


「分かりました。私はこの名に恥じぬよう、立派な人間になることを誓います」

「うむ」



そして私は旅立とうとしたが……やり残したことがあって歩みを止める。


「そういえばティアラさんはいつお父さんと結婚するんですか?」

「「んな!」」

「ティアラさん時々お父さんのことを顔を赤らめながら見ているし、好きなんですよね?お父さんも、ティアラさんは綺麗で頼りになって結婚するなら理想の人だって言ってましたよ?」

「ええ!?」

「ま、マリー、そ……それは言わない約束では」

「い、今の話は本当ですか!?クロトが、私を理想の女だと!?」

「ええ、両想いなのにいつ結婚するんだろうってずっと疑問に思ってました」

「…………クロト」

「……好きだ、ティアラ……結婚してくれ」

「っ~はいっっっ!」

「おめでとう二人とも!」

「二人が両思いだとわかっているのに黙っているこっちは歯がゆかったですぞ」

「いや~、めでたいわねぇ~」

「「知っていたのか!?」」

「「「「知らないのは二人だけだ」」」」

「わ~、大人の世界です~」

「結婚ってなんだ?」


さて、二人もくっついたことだし帰ろうと思っていたら……



「ず、ずるいですティアラさんだけ。わ、私だってクロトさんのことが好きなのに!!」

「「「「「「!!!???」」」」」」


ハクアさんがとんでもないことを言い出した!?


「ど、どういうことだ?ハクアが……我のことを?」

「好きです!!あの時あなたに助けられた時から……私はずっとあなたのことを……」


う~ん、ハクアさんとはずいぶん仲良くなったし、ここは助け船を出してあげよう。


「じゃあハクアさんも一緒に結婚すればどうですか?法律では一夫多妻はありですし、そもそも竜に法律は関係ないですし」

「え!?」

「マ、マリー何を……」

「私は別にいいですよ」

「ティアラ!?」

「妻が増えても、クロトは私を愛してくれるでしょう?」

「お父さん、結婚すればどうですか?ハクアさんは美人ですし、胸も大きいし、別に結婚しない理由がないじゃないですか」

「…………わかった。ハクア、結婚してくれ」

「はいっ、喜んで!!!」


よし!何とか結婚できた。でも、本番はこれからです。

頑張ってください!3人とも。



「ウォッホン!では、色々あって遅れたが、改めて、わが娘、マリーを見送るとするか」


そうだった!危うく目的を忘れかけてた!


「行ってきます、お父さん。次に会う時は3人とも新婚旅行中だね?私も連れていってほしいけど、それは遠慮しとくね」

「早く行け!!!」

「あはははは」



こうして、私はついに旅立った。



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