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ハーメルンの音楽祭  作者: NiO
101号室:紅鴉
9/46

7つの子

 時刻は(・・・)19時の(・・・)


 浦野ハイツ(・・・・・)101号室(・・・・)




 そこに広がっているの(・・・・・・・・・・)()



 線路(・・)でした(・・・)



「え、え、え?」



 どこまでも続く線路を見て、驚く面々。

 部屋の中と思ったそこは。


 どう考えても、屋外、でした。




「ちょ、ちょ?

 わ、私がいる、ついさっきまでは、ふ、普通の部屋だったんですよ?」


 【101】号室の中年が、驚きと言い訳の声をあげました。


 まあ、でも、誰も責めないでしょう。

 如何に彼が悪意を持っていたとしても。

 部屋の中に線路を(・・・・・・・・)引くことなんて(・・・・・・・)流石にできないの(・・・・・・・・)ですから(・・・・)!!


 ふりかえると、先ほど通ってきた扉は無くなっていました。

 そして横を見ると。

 ……踏切があります。


 あります、が。


 なぜか、閉まったままになっています。


 電車はまだ来ないけど、閉じ込められている。

 そういう、シチュエーションなんでしょう。



 そして、ふと、顔をあげると。




 電線に止まる(・・・・・・)夥しい量の(・・・・・)



 紅色の(・・・)カラスたち(・・・・・)!!


 まるで、夕焼けに染まって真っ赤な彼らは。


 実は、動物達の血液で(・・・・・・・)まっかっかに(・・・・・・)染まっているのです(・・・・・・・・・)



()……紅烏(・・)……」



 猫の少女が、辛うじて、声を上げました。


 7不思議の中だけの存在。

 実際にはいないはずの、動物を上手に殺して食べる、カラス。


 それが、まさに、びっしりと。

 ……視界いっぱい(・・・・・・)どこまでもいるのです(・・・・・・・・・・)


「う、う、うわああああああああん!」


 【103】号室の小児が、恐怖のあまり泣き始めました。

 仕方ありません、あまりにも、あまりにも異様、なのですから。


 それだけの量がいながら。


 奴等は、鳴き声も(・・・・)羽音すら立てずに(・・・・・・・・)


 人間たちを(・・・・・)じっと見ているのです(・・・・・・・・・・)

 まるで、何か、順番を待っているかの(・・・・・・・・・・)ように(・・・)!!


 何の順番を待っているのか。


 そんなの、決まっています。


 お食事の(・・・・)順番です(・・・・)



「な、な、なんなんだ、これは……」



 【101】号室の中年が小さく声をあげた次の瞬間。



 ♪ぴろり~ん♪



 唐突に、メールが、届きます。


 それがつまり、今回の……。

 ハーメルンの音楽祭の、最初の音楽(なぞなぞ)に、なりました。







『各々がつがいではないカラスが、7羽いました。


 それぞれに、7つの子がいました。


 カラスは全部で、何匹でしょう?』







「え、な、なんだこれ?」


「7つの子⁉

 し、7×7=49(しちしちしじゅうく)で、親がそれぞれ2人ずつで……」


「えーと、えーと……」


 あ、やばい。

 浦野ハイツの面々の慌てふためきようを見て。

 猫の少女は思いました。

 浦野ハイツの皆さんは、ニッケルさんになぞなぞを出される経験なんて、多分無いでしょう(・・・・・・・・)

 全員が、パニックになっている。

 これは、自分がなんとかしなければならない。

 猫の少女は、そう思ったのです。



「それにしても、7×7=49(しちしちしじゅうく)の中ボス感って、すごいよね!」


 そして。

 猫の少女の、頑張りに頑張った、周りを気遣う発言。

 これが、限界でした。


「……えーっと……。

 ……あ、ああ、わかります、わかります!

 あと、9の段の、今まで倒した強敵達が、最後の戦いを前に出てくる感も異常ですよね!」


 何故か、【101】号室の中年と話が合いました。

 いえ、多分話が合ったのではなく。

 話を合わせたのでしょ(・・・・・・・・・・)()


 【101】号室の中年さんも、このイヤな空気を払拭したかったのかもしれません。

 流石に、1問目で終わるのはイヤですからね。


「でしょでしょ?

 逆に1の段の、物語が始まる前のチュートリアル感も半端じゃないよね!」


 何故か九九で盛り上がる2名。

 完全に空気が読めていません。

 しかし。

 それを見てほかの面子は落ち着きを取り戻したみたいです。


(なんだろう、この敬語。

 なんだか、ちょっとアレだよね。

 懐かしいというか……心揺さぶられるというか……)


 大人の対応をする【101】号室の中年さんと、彼のその敬語。

 猫の少女が、彼の評価を改めていると。



 カーン、カーン、カーン!



 踏切が、電車の到来を知らせました。


「うわ、やばい、全然考えてなかった」


 どうしようもない空気をどうにかすることに精いっぱいで。

 猫の少女は、なぞなぞの答えを全く考えていなかったのです!


 ……しかし(・・・)



「……成程、ね。

 答え、分かりましたよ」



 そう言ったのは。

 ……例の、【101】号室の中年さん、でした。


「考えてみれば簡単です。

 要は、カラスの数え方、ですね」


 カラスの数え方。

 中年さんは、続けます。


「カラスの数え方にはいくつかあります。


 一番一般的な、羽。

 一応認められている、匹。

 詩的な表現でいえば、翼。

 獲物としてみれば、隻、なんてのもあるでしょう」


 つらつらと並べられる単位。

 ……そして、そこに、アレはありませんでした。


「……そう。

 カラスの数え方に、『ひとつ、ふたつ』はありません。



 ……つまり、この『7つ』というのは。



 年齢(・・)ですね(・・・)

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