『ふえふき』の壮年
「おっかえりなっさ~い!」
やたらテンションの高い声に、『ふえふき』の壮年は「ただいま」と、静かに返しました。
「ワタシにする?
ワタシにする?
それとも。
ワ・タ・シ?」
「ご飯にしましょうかね」
「てめえ!
結構恥ずかしいんだから突っ込めや!」
自分の言った台詞で真っ赤になる奥さんに、壮年は笑いながら答えます。
「裏野ハイツに、行ってきたんですよ……ていうか、なんで色々先に教えてくれなかったんですか?」
奥さんは、「ああ」と手を打つと、「教えなくてもなんとかなるし、むしろ教えて変に勘ぐっちゃうとダメだろうなあ、と思って」と答えています。
「なるほど。
……取り敢えず……もう少し痩せた方が良さそうですので。
食事を取ったら、ランニング、してきます」
「むふふふふ~」
「……どうしたんですか?」
気持ちの悪い笑顔をする奥さんに、壮年は口元をひくつかせて問います。
「ねェ、どんな気持ち?
若かった頃の私に引きニート扱いされて。
ねェ、今、どんな気持ち?」
「ははは……惚れ直しましたよ」
「ひえ!?」
奥さんは驚いています。
自分が言った「太ってもニートでも、ガリ勉君はガリ勉君」発言は、すっかり忘れていたようです。
壮年は、なんだか、意地悪がしたい気持ちになったようです。
「……やっぱり、ご飯の前に、西に、しますかね」
「ひえ!?」
少年の言葉に。
少女は辛うじて、そう返すのでした。




