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ハーメルンの音楽祭  作者: NiO
浦野ハイツ中庭:金属の笑顔
39/46

ニッケルさん

 時刻は午前7時、場所は浦野ハイツの中庭。


「……は?え?ニッケルさん?

 何を言っているのか、良く解らないのですが……」


『おとな』の少女は、困惑している『かたりべ』の中年に声をかけます。


「じゃあ、理由を挙げていこうかな……理由その1」


 少女は得意げに話し始めます。


「あんた以外全員、ブレーメンの屠殺場の生き残りってこと。


 ……あんただけが違うってのは、流石に無理があるよねえ」


「……そうは言っても」


「理由その2」


 中年の言葉を無視して、少女は続けます。


「『しりとり』について解らなかったとか言ってたけど。


 この空間では、みんなが解ってないと、正解を声に出せない。


 声に出せたってことは(・・・・・・・・・・)解ってたってこと(・・・・・・・・)



 ……しりとりの謎も(・・・・・・・)


 最初から(・・・・)全部解ってたんでしょ(・・・・・・・・・・)?」


「あ……う……」


 言葉もなく立ち尽くす中年に、少女は更に続けます。


「理由その3。


 この、7つ目の7不思議。


 『どこかの誰かの噂話 その7』。



 これが(・・・)答えになっている(・・・・・・・・)


「……一体、何を言って……」


「この文章、『()』、『()』、『()』、『()』、『()』、『()』が、一文字ずつしか(・・・・・・・)入ってないんだよね(・・・・・・・・・)


 少女は、中年の言葉が聞こえないかの様に、喋り続けます。


「『()』、『()』、『()』、『()』、『()』、『()』……母音だったり、助詞だったり、普通の文章には2つ以上使われてもおかしくないそれらが、それなりの長さの文章中に、狙ったように(・・・・・・)1つずつしか(・・・・・・)使われていない(・・・・・・・)……」


 少女は、メールを再度確認すると、言葉を続けます。


「そして、この文章にある、『浦野ハイツの、後ろの正面』。


 つまり、この文章の中で、『()』、『()』、『()』、『()』、『()』、『()』の、後ろの正面(・・・・・)を読み上げていけば、答えが出るわけだ」



 少女は、笑顔で、声を上げます。



「この文章の中で。


 『()』、『()』、『()』、『()』、『()』、『()』の、後ろの正面(・・・・・)


 それは、つまり」


 少女の言葉に、中年はメールを確認します。

 確かに、『うらのはいつ』は、文章の中に1つしか使われておらず。

 そして、その言葉の『うしろのしょうめん』……すなわち、すぐ後ろにあるのは。




 ……『()』、『()』、『()』、『()』、『()』、『()



 ニッケルさん(・・・・・・)に、なるのでした!



「……ま、そういうわけだよ」


 少女の言葉に、中年はしばし沈黙します。


 …そして。


「……それでも、私が『ニッケルさん』という理由にはならないでしょう?」


 『おとな』の少女の言葉に、『かたりべ』の中年が異議を唱えました。

 しかし、少女は……『おとな』の少女は、相変わらず確信したかの様に、言葉を続けます。


「そして、理由その4。


 ……まあ。


 『かたりべ』が、唯一、物語の登場人物じゃない、とか。


 『騙りべ(・・・)』って言う、言葉遊びであるとか、あるけれど、何より」


 少女は、笑いながら、言いました。


あんたの(・・・・)その(・・)敬語(・・)


 どこかで(・・・・)聞いたことがある(・・・・・・・・)その(・・)敬語(・・)


 最初っから(・・・・・)気持ち悪いと(・・・・・・)思ってたんだ(・・・・・・)


 全部を理解したような(・・・・・・・・・・)ガリベン君とは違う(・・・・・・・・・)その(・・)気持ち悪い敬語が(・・・・・・・・)



 場を、静寂が、支配しました。




「……つまり、勘、だと?」


「そそ。


 女の勘的に(・・・・・)……というか、私の勘的に(・・・・・)



 あんたは(・・・・)絶対に(・・・)、『ニッケルさん(・・・・・・)()



 少女が、根拠もなく断言します。



 なんというか、もう、めちゃくちゃな言葉です。



 そんな、めちゃくちゃな彼女の言葉に、『かたりべ』の中年は。



 ……いえ(・・)私は(・・)



「……なるほど(・・・・)……バレましたか(・・・・・・)



 満足そうに(・・・・・)声を上げるのでした(・・・・・・・・・)

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