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ハーメルンの音楽祭  作者: NiO
203号室:目前立札
33/46

ロンドン橋

 時刻は午前5時、場所は【203】号室の、緑色の(・・・)扉の前。


「……ひとまず、これをクリアすれば終了……に、なるんですかねえ……」


「……行……くぞ……」


 『かたりべ』の中年と、『ふえふき』の壮年が緑の扉を開こうとしていると。


「あ、ちょっと待って」


 『おとな』の少女が、待ったをかけました。


「先に言っておくよ。


 私、次のなぞなぞ、解かないから。

 2人で考えてね☆」


 きゃるん♪と擬音語が聞こえてきそうな少女の発言に。


「え?は?

 いやいやいや、そういうわけにはいかないでしょう!?」


「……おい……何を考えているん……だ……」


 男性陣は非難の声をあげますが。


「『かたりべ』のおじさん。

 まともに解けた問題、最初の1問だけ、だよねえ?」


「うぐっ!」


 『おとな』の少女のセリフに、『かたりべ』の中年は二の句が継げなくなりました。

 ……というか、少女はまともに解けた問題が無いのですが。


「『ふえふき』のオタクさんは論外。

 情報を隠すとか、ありえないでしょ」


「……っち」


 同じく『ふえふき』の壮年も言い返すことができません。

 ……というか、少女も最初は自分の情報を隠していたのですが。


「ほらほら、名誉挽回のチャンスなんだから、2人とも頑張ってキリキリ考えてよね」


「「……」」


 無言を肯定と取った少女は、満足そうに頷くと、緑色の扉を開いたのでした。


###########################################



 目の前には……川が、ありました。


「……相変わらず、唐突な場所に飛ばされますね」


「……」


 ♪ぴろり~ん♪



 そしていつものように、メールが届きます。


 今回は、画像も付いていました。



『ロンドン橋が落ちちゃったよ!

 急いで作り直そう!


 橋は川岸と垂直にしかかけられないよ。

 A地点から、B地点までの距離が最短になるように、橋をかけてみてね』



挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)



「……算数の問題、ですかね」


「……だったら簡単なん……だがな……」



 『かたりべ』の中年が、地面にさっと同じ図を記載して。

 B地点の川幅分だけ上に架空のC地点を作り、AとCを線で結びました。


 その線と川岸とが交わる点から垂直に橋を架けます。



挿絵(By みてみん)



「……算数なら、ここが正解、ですけどねぇ」


「……ただこれは、なぞなぞ……だからな……」


「まあ、そうですよね」


 2人は、後ろにいる少女を確認します。


「うーん……って言うことは、あの時の言葉の意味は……。

 ……なんであの時……」


 『おとな』の少女は2人を無視して何かしら思考に没頭しているようでした。

 もちろんなぞなぞなど全く見もしていません。


「『おとな』さん、本当に考えないつもりみたいですね」


「……っち……」


 『ふえふき』の壮年は、改めて地面に書かれた図を見ています。


「……駄目……だな……」


 そして、足でいったん書いていた絵を消しました。

 無駄に算数の図を書き込んでしまったせいで、答えから遠ざかっている気がしたのでしょうか。


「そう言えば、橋には『幅』も、あ……るな……」


 『ふえふき』の壮年は、橋の幅をLと設定すると、B地点より川幅分だけ上方、そしてL分だけA地点よりに、架空の点Dを書き込みます。

 同じくA地点とD地点を結んで、岸と接した点に橋を架けています。


挿絵(By みてみん)


「……なんだか、より、答えから遠くなっている気がしますが」


「……いや、違う……な。


 そう……か、これ……か。



 これが(・・・)正解(・・)……()



 『ふえふき』の言葉に、『かたりべ』の中年は、否定的な言葉を出します。


「え?

 ま、まさか。


 これが答えじゃあ、あまりにも算数じゃないですか。


 全然なぞなぞになっていませんよ」



「違……う。


 ……俺……が言いたいのは。



 『橋の幅(・・・)』……だ」



『ふえふき』の壮年はそう言うと。




 川いっぱいに(・・・・・・)超巨大な橋を(・・・・・・)架けました(・・・・・)



挿絵(By みてみん)



これが正解(・・・・・)


 問題では、『垂直に架けろ』とは書いてい……るが、『橋の幅(・・・)には(・・)言及してい(・・・・・)……ない(・・)


「……あっ!」






 ……ゴゴゴッゴゴゴゴ……






 突然、激しい地鳴りが起こります。



「……正解……みたいですね……!」


「……ああ……」



 2人が川のほうを見てみると。




 いつの間にか、超巨大な橋が架かっていました。




「B地点って、あそこ、でしょうか」



 『かたりべ』の中年が指さす先には、巨大な塔が立っています。



「……最短距離で進まなくてはいけない、ということ……だろうな……」



 『ふえふき』の壮年も、自分に言い聞かせるように頷いています。


「いやあ、凄いねえ!


 2人とも、ご苦労様!!」


 背後から、人をイラつかせるような声が聞こえました。

 そのままスタスタと背後の人影は2人の前に出ると、くるりと振り返ります。


「なん……だ、その笑顔は……気持ち悪い……」


「……もう、考え事は良いんですか?」


 若干ウンザリしたような男性陣の言葉に。



「……うん(・・)大体分かったよ(・・・・・・・)!」



 少女は、満面の笑みで(・・・・・・)返すのでした。

図が汚い。

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