桃太郎さん
お久しぶりです~。
覚えてる?
時刻は午前1時前。
場所は201号室の前。
「次は、どの7不思議なんですかあ~?」
『おとな』の少女が、馬鹿にしたかのように『ふえふき』の壮年に声をかけます。
少女は壮年に、何かしら怪しい匂いを感じているみたいです。
壮年が面倒臭そうに頭を掻いていると、全然違う方向から、答えが飛んできました。
「『きんじろうぶね』!」
その質問に答えたのは……『ねずみ』の小児でした。
「……だろ?」
「……まあ、そう……だな」
得意そうな小児の頭をポンポンと叩きながら。
何故か壮年も得意そうに頷いています。
「……え?
な、なんでわかるの?」
「自分で考え……ろ」
壮年はそういったきり、扉が緑色に変化するのを待っています。
『おとな』の少女は、どうして小児が次の怪異を予想できたのか、考えようとします。
が。
どうしても、次にくる化け物が頭をよぎってしまい、考えがまとまりません。
次に来る化け物。
金次郎舟。
なんというか、7不思議の中では、地味です。
無差別に人間を殺すだけの存在ですからね。
「……あれ?
よく考えたら、『金次郎舟』って、結構ヤバい奴じゃね?」
少女は、今更気が付いたかのように呟きます。
無差別に殺すだけの存在。
それって、キャラは立っていませんが。
圧倒的に、危ない奴だと、今更気が付いたようです。
そう。
ブレーメンの屠殺場で例えて言えば。
その、モナリザの様な……。
「分かれば良い……行……くぞ」
扉が緑色に変化し。
壮年が、扉を開きます。
扉の先には……。
公園が、ありました。
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公園の真ん中には、水の出ていない噴水があり。
そして、その中央に鎮座するのは、勿論。
我らが、二宮金次郎像、なのでした。
「……あれが、金次郎舟……」
『かたりべ』の中年が、ごくりと唾をのみます。
「あれ、だいぶ、ヤバいねえ」
『こども』の老女が、苦笑いしています。
「うう」
『ねずみ』の小児が、怖気づいたような声を出しています。
そして、いつものように。
♪ぴろり~ん♪
メールが、届きました。
『「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、1つ私達に下さいな」
黍団子は4つ。
仲間は、桃太郎さんと、犬さんと、猿さんと、雉さんと、お姫様の5人。
さて、5人で4個のきびだんごを均等に分けるには、包丁を最低何回使えばいいでしょうか』
ふと、気が付くと。
噴水の脇に、4つの泥団子がおいてあります。
これで、団子を分けろと言うのでしょう。
「4つの団子を、5等分……か」
「普通に考えると。
等分するならば、かなりの回数切らないといけませんが」
「多分、前の、煎餅の時みたいに抜け道的な物があるんだろうねえ」
各々が、そんな言葉をぽつりぽつりと呟いていると。
ごぼごぼ、ごぼぉぉぉおお。
「「「「「 ……は? 」」」」」
噴水の池から。
何やら、不穏な音が、聞こえ始めました。
「噴水池の水が、抜けている?」
「う、うそ?」
そうです。
金次郎を留めて置くための防波堤。
池の水が、恐ろしい早さで減っているのです!
「みなさん、うろたえないでください!
大体、予想はついていたでしょう!」
『かたりべ』の中年が声をあげます。
確かにそうです。
ここまで来て、『金次郎舟』が動き出さない、わけがない!
「そうだよ、さっさと答えを見つけないとねえ」
『こども』の老女の声かけに、皆は取り敢えず落ち着きました。
各々は、取り敢えずなぞなぞに取り掛かることにしたようです。
「4個を、5等分?」
「ちょっと……コレ、無理じゃない?」
じりじりと、時間だけが過ぎていきます。
池の水面が、どんどん下がる中。
ごぎぎぎぎぎぎいいい。
金属が鈍く捻じれる様な音が、しました。
……さあて、ここで問題です。
池から水がなくなると。
どうなると思います?
答えは、ええっと、そうですねぇ。
まあ、誰かの言葉を貸して頂くと。
……リア充、爆発、です。




