おせんべ焼けたかな
※注・最初は全然別のなぞなぞだったんですが、意外にも歌に著作権が残っていたので急遽変更しますた
時刻は21時、場所は【102】号室の、緑色の扉の前。
ドアを潜ると、そこは……。
……真夜中の、市民プールでした。
「……スイムさん、でしょうね」
『かたりべ』の中年が呟きます。
そこに部屋がないことには、もはや誰も驚いていない様ですね。
「さて、今度はどんななぞなぞ、なんだろうねぇ」
『こども』の老女が言うか言わないかのうちに。
♪ぴろり~ん♪
……メールの音が、聞こえました。
皆さんがメールをのぞき込むと。
そこには、こんな文章が、ありました。
『おせんべ焼けたかな。
焼けたら8人で分けちゃおう。
包丁で何回切ったら、分けられるかな。
おせんべは変わった形はしていないし、包丁も変わった形はしていないよ。
切ったせんべいを重ねたりも、なしだよ』
「煎餅を、分ける……のか」
『ふえふき』の壮年が、考え込みながら言いました。
「せんべいって、食べ物なの?」
『ねずみ』の小児の言葉に、一同が驚きの声をあげました。
「『ねずみ』くんは、煎餅を見たこと、ないのかねえ」
「あ、ううん!
絵では見たことあるけど、食べ物って思わなかった。
あの、丸くて茶色いヤツだよね」
『ねずみ』の小児は手で球の様な形を作ります。
実際はもちろん、平べったいのですが……。
まだ3歳なので、本物の煎餅を見たことがないみたいです。
「あ、まあ、そんな感じ、そんな感じ」
面倒くさくなった猫の少女が、相槌を打ちました。
今、『ねずみ』の小児に割いている時間はないと判断したのでしょう。
「それで、答えのコースを泳げば良いんですかね?」
『かたりべ』の中年の声を聞いて。
「あ~あ。
わかったよ、答え。
3回だ」
『おとな』の少女、こと、猫の少女が声をあげました。
「お、おお。
早いですね。
それにしても、4回未満の答えなんてあるんですか?」
他の皆さんも、興味津々に『おとな』の少女を見ています。
少女は得意げに胸を張ると、声を大にして言いました。
「いや、正直、答え分からないよ?
でもね。
ここが市民プールで。
スイムさんが出るのが第3コースなら。
そりゃあもう、答えは『3』以外にありえないんだよ!」
「……なんだそりゃ……何を根拠に」
「私はこの前、同じようなデスゲームに巻き込まれたの」
周りの空気が、少しだけ変わります。
「デスゲームの首謀者は、完全な愉快犯で。
面白さで全てを語るようなヤツだった。
そう、面白ければ。
全員助かろうが……全滅しようが。
にこにこ笑ってるような、ヤツだった」
少女は、語ります。
大マジです。
「はぁ……。
いいですか、『おとな』のお姉さん。
平面を線で分割しようとしますよね」
『かたりべ』の中年が、その辺から棒を拾ってくると。
プールのはずれの土がむき出しになったところへ行き、線を1本書きました。
「1本の線で分割できる最大の個数は、当然2つまで、です。
同じように……」
再度がりがりと、地面に線を引きます。
「2本の線で分割できる最大の個数は、4つです。
そして、3本の線では……」
3角形を作るように線を3本引くと、中年は言いました。
「1,2,3,4,5,6,7。
最大でも、7つ。
これはつまり。
均等という条件を無視したとしても、3回で8つに切ることは出来ないんです!」
「おじさんが何と言おうと、答えは『3』だよ」
「あのねぇ」
「例えこの問題が『1たす1は、なんでしょう?』だったとしても。
……私は、3を、選ぶ」
「……馬鹿馬鹿しい。
これは、4以外にない……だろ」
『ふえふき』の壮年が、ぼそりと呟いて『かたりべ』の中年の肩を持ちました。
「私は、『おとな』のお嬢ちゃんに1票」
『こども』の老女は、『おとな』の少女に賛成します。
そして。
もちろん、多数決というわけではありませんが。
『ねずみ』の小児に視線が集まります。
小児は少しだけ戸惑ったあと。
「お、俺は、『3回』だと、思う」
小児は、猫の少女に1票入れたのでした。
「……『こども』のお婆さんが選んだ方、ということですか?
そんな事で、こんな大事な決断をしては……」
「ううん、違うよ!」
中年の言葉に、小児は否を唱えます。
「出来るんだもん、分かったんだもん。
おせんべいを、3回切って。
……8個に分ける、方法」




