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ハーメルンの音楽祭  作者: NiO
101号室:紅鴉
10/46

7不思議その1:紅鴉

 最初に言い訳しますが。

 カラスに○○○○○音は出せません、多分。

 この話はフィクションなので、ご了承ください。


 時刻は19時過ぎ、場所は線路の上。


 踏切がけたたましく鳴り始め。

 遠く遠く、ええ、まだまだ遠いところからですが、電車の音が聞こえてきました。



「この文章では、カラスの数え方として『羽』と『匹』を使っています。

 ならば当然、7『つ』というのはおかしい。


 なので答えは、親のカラスが7羽と、子供の……7歳になるカラスが7羽。


 全部で、14羽、です」



 全員が、納得しました。

 確かに、これで正解であろう、と。


 ……しかし。


「……答えたのに、何も起きませんね」


「何か、答えを入力するものがあるかもしれないね」


 猫の少女はそう言いながら、きょろきょろと辺りを見渡して。


「あった、多分これだ!」


 ……何か、見つけたようです。


「緊急停止ボタン、かねえ」


「ううん……多分違う」


 そこにあったのは、まるで公衆電話のような、数字をプッシュ式で押すタイプのボタン。

 何故ここに?


 いえ、考えている場合はないでしょう。

 猫の少女は素早く『14』の数字を打ち込みました。


「あ……ドアだ!!」

 

 【103】号室の小児が、声をあげます。

 踏切には、先ほど入ってきた時と同じような、緑色の扉が(・・・・・)現れていたのです(・・・・・・・・)

 まるでどこ○もドアのようにそこに佇む扉は、若干気持ち悪いものがありますが。


「取り合えず、1問目クリア……か」


「ほ、ほらほら、早く入りましょう!」


 【102】号室の壮年が、安堵の声をあげ。

 【101】号室の中年が、戒めるように先を促します。


 電車の姿はまだ見えませんが、音から察するにかなり近いところまで来ているでしょう。


 5人は大急ぎで、ドアの中へと戻っていきます。


########################################


 扉の先は、また、浦野ハイツの中、でした。


「た、助かったね~」


 【102】号室の壮年が最後に扉を閉めたのを確認して、【201】号室の老女が笑いかけます。


「やるじゃない、おじさん!」


「お、おじ……ハハハ……」


 猫の少女が【101】号室の中年に労りの声をかけます。


 何となく、弛緩した空気が流れる中。



 ……何故か【103】号室の小児が、とことこと、今出てきた、緑色の扉に近づいていき。






 がちゃり(・・・・)






 ドアを開けました。





「「「 !!?? 」」」 





 開けた先にあったのは、先ほどの線路。


 ……というより(・・・・・)轟音とともに(・・・・・・)通過する列車(・・・・・・)、でした。



 開けた扉は粉々に砕け散り。



 列車という質量の中に(・・・・・・・・・・)飲み込まれていきます(・・・・・・・・・・)




 ギャー(・・・)! ギャー(・・・)! ギャー(・・・)


 バッサ(・・・)! バッサ(・・・)! バッサ(・・・)



 まるで大喜びする様な(・・・・・・・・・・)

 輪唱して響き渡る様な(・・・・・・・・・・)カラス達の鳴声の中(・・・・・・・・・)





 電車が通り過ぎた先には……。





 無残にもミンチになった【103】号室の小児の姿が……。





「ふ、ふ、ふええええええええ!!」




 ……ありませんでした(・・・・・・・・)



「く、そ。

 あんまりふざけたこと……するなよ……」


「え、え、え!?」


 小児は、無事でした。

 なんと、【102】号室の壮年が、小児を助けていたのです!

 どうやら小児がドアとともに電車に引き込まれる前に。

 体当たりで小児を浦野ハイツ側に吹き飛ばしてくれていたようなのです!!


 ……それにしても、まるで。


 小児が扉を開ける事を(・・・・・・・・・・)分かっていたような(・・・・・・・・・)タイミングですね(・・・・・・・・)


 壮年は倒れていた自身の体を起こすと、ゆっくりと扉を確認し始めました。

 【101】号室には、先ほどバラバラに破壊された緑色の扉は無くなっており。

 ……いつの間にか、変化前の銀色の扉が、知らん顔でついています。


 ドアを開けると、そこに線路はなく。

 いつも通りの、浦野ハイツの、普通の部屋、です。 


 ここで壮年は一息つくと、【103】号室の小児に向けて、歩き出しました。



「おい、小僧……なんで扉を開け……た……」


「ひ……ひく……だ、だって!


 『アケテ(・・・)タスケテ(・・・・)オネガイ(・・・・)!』って!!


 とっても高い声が(・・・・・・・・)

 ドアの向こうから、き、聞こえた、から……う、う、うううう」


「……声帯模写……だろうな……」


「え、え、え!?

 カラスって、そんなことも出来るの?

 ていうか、そ、そんな声、聞こえなかったよ!?


 ね、ねえ、みんな?」


「……モスキート音……だろう……」


「も、モスキート……!? 」


 【102】号室の壮年は、素早く推理をしています。

 確かに、それなら、一応辻褄は合います。


 合います、が。



「声帯模写?

 モスキート音??

 なんで、そんな事を、カラスがする意味があるのさ!?」


 猫の少女の最もな意見に、【102】号室の壮年は、溜息をつきます。


「……紅鴉の都市伝説は、……俺……も、読んだことが、あ……る。


 分からない……か?

 都市伝説で書かれていた、『バタバタと憐れみを誘う演技』は。



 何をターゲットにして(・・・・・・・・・・)獲得していった物(・・・・・・・・)なのか(・・・)



 ……奴らの主食は(・・・・・・)一体なんなのか(・・・・・・・)



 ここに来て、やっと。


 そこにいる(・・・・・)全員が気が付きました(・・・・・・・・・・)


 憐れみを誘う演技。

 声帯模写。

 モスキート音。


 ……それらが指し示す先は、1つしかありません。



「そう……だ。

 奴らの主食。


 それは(・・・)



 ……人間の(・・・)子供(・・)……()

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