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久我山桔梗


久我山(くがやま)桔梗(ききょう)、男、魔法師。


 紫月(しづき)の兄だ。久我山流糸術は妹が継いでる。あちこちの訛りが酷いお袋に連れられて、各地を出歩いていた妹と違って、俺は一人で生活することが多かった。

 まあ、凪ノ宮(なぎのみや)の厄介になっていたのも事実だ。

 予兆、みたいなものはあった。

 確信が得られない曖昧なものとして、確実に俺の中に存在していたことは確かだ。であればこそ、俺は人を遠ざけ、できるだけ一人でいるようにしていた――けれど、まあ、察しの悪い風華(ふうか)なんかは、その限りじゃなかったってわけだ。

 咲真(さくま)は、どうだったんだろう。あいつのことだ、見えていなかったんじゃないかとも思う。

 はっきり言って、俺には鷺ノ宮事件発生直後から、俺という認識がもうなかった。どうなったのかもわからないくらいに、俺が俺じゃなくなっていた。

 だからまあ――なんというか。

 助かった。

 それで良かったんだろうと、その時に俺のままだったら、そう思っていたに違いない。



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