名無しの少女
女、例外。
僕には名前がない。だから好き勝手に呼ばせている。
2026年に終わった僕だけれど、果たしてこの時期だとわかっていたのかと問われれば、僕は肯定しよう。僕は世界における小さな亀裂を、上手い具合に修理するよう動いていて、その動きそのものが、僕の消失に繋がったのだから、大局を見ればこれは自殺にも似たようなものだ。
二十年には、至らなかったね。
まあとにかく動いたよ。僕は、僕が持っているものを誰かに渡し続けて、ずっと動き続けていたようなものだ。
ん? どうして約束に拘っていたのか?
拘っていたんじゃあないさ。約束ってものがあれば、僕の〝自由〟に楔が打てる。つまり、約束があれば、それを果たそうと動けるってだけのことだ。僕にとってはね。
だから僕の出番はここで終わりだ。これ自体は間違いがない。あとは彼ら次第ってところか。無数の手を打ってきたけれど、それがどうなのかも、わからないままだ。
僕は、厳密には魔法師じゃない。
魔術師であることも、放棄した。
けれど、人間と呼ばれるには歪である。
であればだ、世界法則がそれを許すわけもないと、結局はそこに尽きる。
いい人生だったよ、過不足なくね。
間違いなく、この時期は楽しかった。それだけで、なんというか満足だ。