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小波翔花
小波翔花、女、一般。
鷺ノ宮家の次女になって、散花は私の姉。
散る花に、飛ぶ花――少し、私はこの時に、自分の名前が嫌いになった。
小波という姓は、喫茶店に住んでいるあの性格の悪いヤツから貰った。かつては魂ノ宮が持っていたものだということも知っている。
姉さんが死んで、私は一人になった。いや、そういうわけではないけれど――生きて行けるようになった。
今までの私はずっと存在を秘匿されていて、それこそ、戸籍なんてものがあるのかどうかも、曖昧なくらい、屋敷の中でもあまり動き回ることができなかったくらい。だからつまり、母さん――苑花は、私が産まれた時点で、このことを決めていたのだろう。
私はこれから生きて行く。
どうやってとか、何をしてとか、――そんなことも、考えずに。




